俺の毎日は、暗く荒んでいた。
物心ついた頃から、変なのが見えるせいで周りから気持ち悪がられていた。
実の両親でさえも俺を気味悪がっていた。俺って何のために生きてるだろうそんな事ばかりが頭を巡った。
そんな時、山中小春と名乗る女の子が声をかけてきた。
始めは、女だからという理由で分かり合えないと思っていたが、理解してくれようと努力する彼女に次第に惹かれていった。
でも、楽しかった時間は残酷にも一瞬で終わりを告げた。
「奏、危ない!」
急に誰かに背中を押され、気づいたら倒れ込んでいた小さいながらでも俺は何が起きたのか薄々察した。
後々話を聞くと、トラックに轢かれそうになった俺を母さんが助けてくれたらしい。あんなに、化け物と言って嫌ってた癖になんで助けたんだよと、怒りの気持ちしか湧いてこなかった。
「安置所の方へ」
看護師さんに案内されるがまま連れて行かれた俺と父さんは変わり果てた母を見て愕然とした。そんな時にでも俺は自分のことしか考えてなかった。
『お前が助けなければ、楽になれてたかもしれない』
母さんの葬式の日父さんが俺に言った言葉が正しいと思った。
「お前が、轢かれていれば母さんは死ななくて済んだのに。お前が変な能力を持ってるせいで」
返す言葉見つからなかった。俺が普通の人間だったら、周りが傷つくことも無かったのかもしれない。
そして、小学校を卒業すると同時に引っ越すことになった俺は仲の良かった小春に最後の挨拶をしに家まで行った。
「小春、俺もう一緒には遊べない」
不思議そうな顔で俺の顔を覗き込む彼女に説明をした。
「引っ越すことになったんだ。だから、もうここには居られない。」
「嫌だ。行かないでよ!奏ちゃんと離れたくないよ」
「俺もだよ。でも仕方ないんだ」
泣きながら俺の腕を掴む彼女の手を振りほどき、後ろを振り向かずに真っ直ぐ走った。
振り向いたら最後、彼女の方に戻ってしまう気がして。
背後から聞こえる小春の泣き声が俺の心臓を力強く締め付けた。
中学校を卒業した俺は、彼女のいた街へ戻ってきた。
奇跡でも起こらない限り無理だと思っていたし、もう諦めかけていた。
あの時君が話しかけてくれるまでは。
「あの、隣の席の山中小春です。これから、一年間よろしくお願いします」
やっと君とまた出会えた。