「元に戻られへんやって!?」
フワルー先輩が、わたしの肩をブンブンとゆする。
「痛いですよ、先輩。元に戻れなくなったのは事実ですが、死んじゃったわけじゃないので」
「せやけど、あんた! 女の子としての人生とか、どないすんねんな!? 結婚したり、子どもを産んだりできへんやん!」
結婚したばかりのフワルー先輩は、涙と鼻水でまみれながらわたしを慰めてくれた。
「実際、本当にあなたはムチャをする」
「でヤンスねぇ。マネできないでヤンスよ」
ヤトとリンタローも、呆れ返っている。
「けど、その切り札を惜しげもなく使うところが、キャル殿らしいでヤンス」
「たしかに。私では、そこまで考えられない。バカの極みとも、天才的発想とも言える」
それって、褒めてるの? けなしてるの?
「でも、問題はないと思うわよ」
サイクロプスのプリンちゃん師匠が、わたしをベタベタ触りながら語る。
「ホンマか?」
「本当よ。言ったわよね? 魔剣の形は様々だ、って。人間の形をした魔剣なんて、別に珍しくないんだから」
プリンちゃん師匠のいうとおり、師匠の工房には複雑な形の魔剣がたくさんあった。人間の形をした魔剣があっても、おかしくない。
「レベッカちゃんだって、キャルちゃんと一時的に融合するんでしょ? それに慣れきっているなら、レベッカちゃんと一心同体になったところで、支障はないわよ」
「プリンちゃん師匠は、わたしがレベッカちゃんに、魂を乗っ取られるってわけではないといいたいんですか?」
「それどころか、二人の絆はさらに深まったんじゃないの?」
たしかに、プリンちゃん師匠の言うとおりかも。
「ワタシも、そう思いたいよ。キャルちゃん! レベッカちゃんが、キャルちゃんを悲しませることなんてするはず、ないもん!」
同じくゼゼリィが、わたしを応援してくれた。
「そのつもりだよ。わたしとレベッカちゃんは、唯一無二の存在だから」
「ならば、解決じゃない? 魔剣として生きなさい」
「はい。そうします」
わたしは、納得する。
『いいのかい、キャル? アタシ様とずっといるってことは、ほぼ多重人格に近い生活なんだぜ?』
「構わないよ。ずっとレベッカちゃんを感じ取れるし」
それから数年後、わたしとクレアさんは小さい国家を作った。
今は亡きフルーレンツさんの故郷、新生コーラッセンを、新たな国家として独立したのである。
国家設立の許可をもらいに、わたしたちは一度クレアさんの故郷である魔術都市モアンドヴィルへ戻った。
クレアさんが凱旋したとき、そばにいたわたしを見て、民衆は「クレアさんのお供」という認識しかなかったみたい。
それでいいのだ。わたしの価値は、クレアさんが知っている。
「わたしがクレアさんの魔剣だ」と聞いて、クレアさんのお父さんであるモアンドヴィルの王様は、ビックリしていたけど。
教頭先生である、クレアさんのお母さんは、わたしたちを祝福してくれた。建国の許可も、出してくれたのである。
フワルー先輩は、夫であるシューくんと共に研究職に就いた。たくさんの子どもに囲まれて、幸せそうである。
ヤトとリンタローは、故郷に帰った。
我が国と国交を結び、栄えているという。
ゼゼリィは、相変わらずプリンちゃん師匠の元で修行の身だ。もう立派な鍛冶屋なのに。
「キャルさん。近くの古代遺跡に、珍しい素材が見つかったそうですわ。参りましょう」
冒険者姿で、クレアさんがわたしの研究棟に入ってきた。とても、領主の姿とは思えない。
「はい。クレアさん! 魔物の処理は、わたし様に任せな!」
完全に、わたしとレベッカちゃんの魂は融合していた。
「いくよレベッカちゃん」
魔剣レベッカちゃんを担ぎ、わたしはクレアさんと手を繋ぐ。
わたしは魔剣レベッカちゃんであり、魔剣キャラメ・F・ルージュだ。
(おしまい)
フワルー先輩が、わたしの肩をブンブンとゆする。
「痛いですよ、先輩。元に戻れなくなったのは事実ですが、死んじゃったわけじゃないので」
「せやけど、あんた! 女の子としての人生とか、どないすんねんな!? 結婚したり、子どもを産んだりできへんやん!」
結婚したばかりのフワルー先輩は、涙と鼻水でまみれながらわたしを慰めてくれた。
「実際、本当にあなたはムチャをする」
「でヤンスねぇ。マネできないでヤンスよ」
ヤトとリンタローも、呆れ返っている。
「けど、その切り札を惜しげもなく使うところが、キャル殿らしいでヤンス」
「たしかに。私では、そこまで考えられない。バカの極みとも、天才的発想とも言える」
それって、褒めてるの? けなしてるの?
「でも、問題はないと思うわよ」
サイクロプスのプリンちゃん師匠が、わたしをベタベタ触りながら語る。
「ホンマか?」
「本当よ。言ったわよね? 魔剣の形は様々だ、って。人間の形をした魔剣なんて、別に珍しくないんだから」
プリンちゃん師匠のいうとおり、師匠の工房には複雑な形の魔剣がたくさんあった。人間の形をした魔剣があっても、おかしくない。
「レベッカちゃんだって、キャルちゃんと一時的に融合するんでしょ? それに慣れきっているなら、レベッカちゃんと一心同体になったところで、支障はないわよ」
「プリンちゃん師匠は、わたしがレベッカちゃんに、魂を乗っ取られるってわけではないといいたいんですか?」
「それどころか、二人の絆はさらに深まったんじゃないの?」
たしかに、プリンちゃん師匠の言うとおりかも。
「ワタシも、そう思いたいよ。キャルちゃん! レベッカちゃんが、キャルちゃんを悲しませることなんてするはず、ないもん!」
同じくゼゼリィが、わたしを応援してくれた。
「そのつもりだよ。わたしとレベッカちゃんは、唯一無二の存在だから」
「ならば、解決じゃない? 魔剣として生きなさい」
「はい。そうします」
わたしは、納得する。
『いいのかい、キャル? アタシ様とずっといるってことは、ほぼ多重人格に近い生活なんだぜ?』
「構わないよ。ずっとレベッカちゃんを感じ取れるし」
それから数年後、わたしとクレアさんは小さい国家を作った。
今は亡きフルーレンツさんの故郷、新生コーラッセンを、新たな国家として独立したのである。
国家設立の許可をもらいに、わたしたちは一度クレアさんの故郷である魔術都市モアンドヴィルへ戻った。
クレアさんが凱旋したとき、そばにいたわたしを見て、民衆は「クレアさんのお供」という認識しかなかったみたい。
それでいいのだ。わたしの価値は、クレアさんが知っている。
「わたしがクレアさんの魔剣だ」と聞いて、クレアさんのお父さんであるモアンドヴィルの王様は、ビックリしていたけど。
教頭先生である、クレアさんのお母さんは、わたしたちを祝福してくれた。建国の許可も、出してくれたのである。
フワルー先輩は、夫であるシューくんと共に研究職に就いた。たくさんの子どもに囲まれて、幸せそうである。
ヤトとリンタローは、故郷に帰った。
我が国と国交を結び、栄えているという。
ゼゼリィは、相変わらずプリンちゃん師匠の元で修行の身だ。もう立派な鍛冶屋なのに。
「キャルさん。近くの古代遺跡に、珍しい素材が見つかったそうですわ。参りましょう」
冒険者姿で、クレアさんがわたしの研究棟に入ってきた。とても、領主の姿とは思えない。
「はい。クレアさん! 魔物の処理は、わたし様に任せな!」
完全に、わたしとレベッカちゃんの魂は融合していた。
「いくよレベッカちゃん」
魔剣レベッカちゃんを担ぎ、わたしはクレアさんと手を繋ぐ。
わたしは魔剣レベッカちゃんであり、魔剣キャラメ・F・ルージュだ。
(おしまい)