わたしが宣言すると、レーヴァテインはわたしたち二人を嘲笑う。
 
『僕を殺すとか、まさか。冗談も、休み休み言えよ』

「冗談じゃない。本当にお前を倒せる」

『ムダだよ。僕はむしろ、自然災害だ。この隕石スルトを大地に落とすことだって、造作もないことさ』

「この隕石は、落ちない。わたしたちが止める」 

『じゃあやってもらおうか』
 
 隕石が、速度を上げた。

『キャル、アタシ様は動くよ!』

 レベッカちゃんが、再度わたしの身体を借りる。魔王スルトに向かって、殴りかかった。

 魔剣レーヴァテインの力を込めた渾身のパンチは、スルトの手で簡単に止められてしまう。

「ムダだよ、レベッカちゃん。さっきからコイツ、隕石から力をもらって、無限の魔力を体内に含んでる」

 魔力の流れを読んで、魔王と隕石が連動しているとわかった。
 

『お察しのとおりだ。この隕石は、僕の魔力と連動している。僕を倒さない限り、スルトも止められないよ』

「いいえ。止めてみせますわ。この【聖剣殺し】、クレアが!」

 クレアさんが、高く舞い上がる。

 足に巻き付いた鉄板が、ヘビのようにうごめく。
 魔剣・【地獄極楽右衛門(ヘルアンドヘブン)憤怒(レイジ)】は、クレアさんの意思によって形を変えるのだ。
 
 クレアさんの怒りを吸収して、より最適な形へと変化を遂げていく。

 王国を狙う隕石に対する怒りを、クレアさんは増幅させているようだ。

「魔王といえど、しょせんは隕石。これまで、我が地にも多数の隕石が落ちてきた過去がございます。ですが、この隕石は取るに足りません。高位の邪教使いが隕石を降らせたことがありましたが、その程度ですわね」

『なにを!?』

「【雷霆蹴り(トニトルス)】」
 
 雷と化したクレアさんが、真下にある隕石に向けて蹴り込んだ。

 隕石は、粉々に砕け散る。

『なぜだ!? この隕石は無敵のはず!?』

「クレアさんは、聖剣・魔剣そのものが通じない! レーヴァテインも、例外じゃない!」

 調べた結果、クレアさんの一族はいわゆる【聖剣殺し】という特性があるとわかった。
 どれだけ求めても、クレアさんは聖なる属性の剣を扱えず、魔剣も装備できない。

 クレアさんの持っている魔剣も、魔剣というより金属自体を装備しているようなものだ。素材そのままを、剣の形にしたにすぎない。そのため、魔剣とは言い難かった。

『見事だよ。だが、粉々に砕けた隕石は、なおも勢いは死なない! そのまま落下して、大地を破壊し尽くす! そこに、もう半分の隕石が落下すれば、黒い太陽の完成だ!』

 スルトは、この大地を太陽に変えて、自分が太陽に成り代わることを目的としている。

「それは、不可能でヤンスよ」

 どうにか、リンタローが間に合ったようだ。

 リンタローが、魔球状の魔剣【TORAHUGU《トラフグ》】蹴り飛ばす。

 隕石は次々と、破壊されていった。

「【氷壁】!」

 落ちてきた黒い炎は、ヤトが氷属性の魔法障壁で抑え込む。

 フワルー先輩たちが、魔力を提供してくれるおかげで、ヤト一人でも膨大なエリアを防いでいた。

 地表には、まったく被害が出ていない。
 
『どうだい、レーヴァテイン? これが、お前が散々バカにしてきたニンゲンの底力だ』