「その、隕石の直径ってどれくらやねん?」

「だいたい、一〇キロくらいでしょうか?」

 フワルー先輩の質問に、シューくんが答えた。多分、先輩は知っているんだろうけど、わたしたちにわかりやすいように、問いかけてくれている。
 
「一〇キロとはたしか、この地を治めていた魔物たちが絶滅したときの隕石の大きさ……って言われているでヤンス」

 リンタローが、答えてくれた。

 この世界って、昔は魔物が統治していたんだ。

「リンタローさんのいうとおりです。もしこのクラスの小惑星がこの地に振ってきたら、誰も生きては帰れません」

 星を相手にするとは思っていなかったから、みんな沈黙している。

『なにを不安がっているのさ? キャルに不可能はないさね』

「レベッカちゃん」

『あんたはクレアの魔剣を作ってやれば、いいんだよ』
 
「その自信は、どこからくるの?」

 相手は隕石、それも小惑星サイズだ。勝てるわけがない。自然現象を相手に、どうやって戦えというのか。

『スルトが黙って、こちらの全滅を目的として向かってきていると思うかい? このあたし様、レベッカをこの地に突き刺した張本人が、ただ破滅をもたらすために振ってくるとは、思えないんだよ』

「なんらかのアプローチがあるってこと?」

『そうとしか、考えられないのさ。だって、都合がよすぎないかい?』

 ヤトが、「たしかに」とつぶやく。

「どういうこと、ヤト?」

「スルトが顕現したのは突然。でも、レベッカが本物の魔剣として覚醒したタイミングだった」

 ホントだ。レベッカちゃんが魔剣として完全に成長した姿になった途端、スルトがこちらに向かってきている。

「そんな絶妙なこと、ただの小惑星ができるとは思えない」

「うん。たしかに、ヤトのいうとおりだよ」

「だから、自分たちがやれる最低限のことをやっておけばいいんじゃないかな?」

 だよね。ここで黙って人類絶滅を待っていても、仕方がない。

「やるよ。クレアさん。最後の大仕事、見事にこなしてみせますからね」
 
「心強いですわ。わたくしがあなただったら、最後まで抗うつもりですが、無謀な挑戦に固執していたことでしょう。あなたのような冷静さこそ、この地を救うのです」

 わたし、冷静かなあ? けっこうハラワタは煮えくり返ってるんだぜぇ? 「コンチクショー」って。
 
 
 とにかく、魔剣に必要な物資はある。あとは、クレアさんにふさわしい魔剣を作るだけだ。




 その日、レベッカは夢を見た。
 魔剣である自分が夢を見るとは、と考えたが、キャルと融合しすぎているために、人間に近づきつつあるのだろう。

 そう思っていたが、違うようだ。

『聞こえるか、魔剣レーヴァテイン。【レーヴァテイン・レプリカ ECA 六四七二】よ』

 魔王スルトが、こちらに語りかけてきているのである。