魔王城ゴーレムが、わたしたちの前に止まった。

「キャルー。クレアちゃーん。まいどー」

 ゴーレムから出てきてそうそう、フワルー先輩がわたしたちに飛びつく。

「相変わらずですね、フワルー先輩」

「さみしかってんもん」

「あんたらは見ない顔やね。あんたらも、キャルのお友だちなん?」

「はい。ゼゼリィです。魔剣作り見習いの、サイクロプスです」

 ゼゼリィの隣で、プリンちゃんが「プリンテスよ」と先輩に手を振った。

「あ、久しいな、リンタロー」

 ついでとばかりに、フワルー先輩はリンタローに手を振る。

「お酒臭いでヤンスよ、フワルー。錬金術の手が鈍っちまうでヤンスよ?」

「酔ったくらいで、ウチの錬金が鈍るかっちゅうねん。祝い酒や」

「お祝い?」

「ウチとシューくんな、結婚してん!」

 フワルー先輩が、左手の薬指にリングをはめていた。
 ここぞとばかりに、先輩がわたしたちに指輪を見せびらかす。「ウリウリ」と。

 もうええ、っちゅうねん。 
 
「新婚旅行がてら、ツヴァンツィガーも見てきたで。ほんで、あんたらが魔剣の聖地ダクフィにおるって聞いて、飛んできてんよ」

 ホントに楽しそうに、フワルー先輩はワインのボトルをラッパ飲みした。
  
「なにを言ってるんですか、フワルーさんっ! 新婚旅行は本当ですが、大事なお話があってきたんです!」

 シューくんが、シリアスな顔になってわたしたちに詰め寄ってくる。手にはグルグルに巻かれた用紙が。何かの図式のようだが。
 
「大事な話?」

「これを見てください!」

 シューくんが、わたしたちの前に用紙を広げた。
 
 用紙には、丸がたくさん描かれている。

「これは?」

「天体図です」

「てんたいず?」

 わたしが聞くと、フワルー先輩が空を指さした。

「お空の上の、星のことや」

「あの星が、なにか関係しているんですか」

「せやねん。くわしくは、シューくんに聞き」

 また、フワルー先輩はワインを飲む作業に戻る。

「ボクの夢は、天体を観測して、この世界以外にも生命体が住んでいる星を探すことだったんです」

「ふんふん」

「それで、我が財団はつい最近、天体観測が可能な研究所を建てまして」

「すごいじゃん。おめでとうございます」

「ありがとうございます、と言いたいところだったのですが……」

 なにか、問題が発生したらしい。

「実はですね。ここ数ヶ月の間で、以上な速度でこちらに迫っている彗星を見つけてしまったんです」

「すいせい?」

「『ほうき星』とも呼ばれています」

「ああ、流れ星のこと?」

「だったらよかったんですが、どうも違うようでして」

 なんでも近い将来、この大陸にその彗星が落ちてくる可能性があるというのだ。

「ヤバいじゃん」

「はい。で、成分を調べた結果、恐ろしい事実が判明しました」

 なんでもシューくんは、フワルー先輩と協力して、星に詰まっている魔力量を測定できる装置を開発したらしい。天体を測定できる装置ができただけでもすごいのに、そんなヤバい装置まで完成させるとは。
 完成した勢いで、二人は結婚したそうだが。

「その隕石の成分なんですが、どうも魔剣レベッカさんと同じ質量のようでして……」

 まさか……その隕石こそスルトってわけ!?