わたしはクレアさんたちと、ダクフィの街から森へ出た。レベッカちゃんの最終形態を振るう。
 クレアさんの魔剣を打つ前に、自分の魔剣の出来を見ておかないと。

「普段は、ロングソード並のサイズになったんですね?」

「そうなんだよ。スマートになっちゃって」

 以前のレベッカちゃんは大剣サイズで、存在感が大きかった。
 今は、その三分の一くらいしかない。
 鞘の形状も、羊かヤギの太い角を伸ばしたような形だ。魔物の本性を現して、より動物的になった。手触りも、どこか生物を思わせる。

『重量も、減らしたよ』

 第三の腕クンも、【抹消砲(ディスインテグレイト・レイ)】も、全部取り込んだ。
 なのに、こんな形になって。

「でも、威力が落ちたわけではないようですね」
 
「それを、これから試す」

 わたしは、レベッカちゃんを抜いた。

 ブオン、と、炎の刃がレベッカちゃんを包んだ。オレンジ色の炎が、レベッカちゃんの周りで揺らめいている。

「フン!」

 剣を横に凪ぐ。

「おっと」

 離れたところにいたクレアさんに、剣から出たオーラの先端が当たりそうになった。
 すぐに避けてもらえたが。

「おお。すごいですわね」
 
 遠くにあった岩山が、チーズのように切断された。

「キャル。とんでもない威力になって、帰ってきてる」

「それだけじゃないでヤンス」

「うん」

 ヤト、リンタローコンビが、なんか「後方腕組みおじさん」みたいな状態になっている。

「どうしたの? 岩を斬ったくらいでは、特に珍しくないって思うけど?」

 これまで、わたしとレベッカちゃんは、無機物という無機物を斬り捨ててきた。
 同族の魔剣レーヴァテインさえ、剣のサビにしてやったこともある。

「違うよ。キャルちゃん」

 ゼゼリィが、わたしたちに歩み寄ってきた。

「ワタシの目で、森の中を見てみたんだけどね」

 前髪を上げて、ゼゼリィが隠れている目をわたしたちに向ける。
 万華鏡みたいに、目の中に光がグリングリン回っていた。

「悪意のある魔物たちが、ワタシたちに襲いかかろうとしていたんだよ。でもレベッカさんが、全部正気に戻しちゃった」

『はあ? アタシ様は、なにもしていないさ』

「したよ。発動した時点で、瘴気を焼き払っちゃったんだ」

 マジですか。

「なんかね。スルトが迫ってきている瘴気に当てられて、魔物が凶暴化していたんだ。そいつらが、この森にまで集まっていたんだよ」

 でも、レベッカちゃんの【原始の炎(げんしのほのお)】効果が、魔物の心にまで反映したみたい。
 元々邪悪な魔物はそのまま焼き払い、瘴気にあてられただけの魔物に対して、悪の心だけを斬り捨てたという。

『そこまで、原始の炎がパワーアップしていたとはねえ。おったまげたよ』 
 
「うえええ。もはやレベッカちゃんは、悪の心まで断ち切る存在に」

『無自覚だったけど、アタシ様ってとんでもなく強くなってね?』

 そこは、自覚しようね。 

「これは、本気で戦いたくなってきたでヤンスよ」

 ヤトとリンタローが、戦闘態勢に入る。

「お手合わせ、願うでヤンス」