ドロドロのブヨブヨになったレベッカちゃんに、ゼゼリィが手を突っ込む。
『冥界竜アラレイム遺跡の魔工具』
『邪竜カトブレパスの瞳』
『低級ドラゴンゾンビの骨一式』
これらのアイテムは、すべて揃った。
レベッカちゃんが最強の魔剣になるかどうかは、最高の鍛冶屋であるゼゼリィに委ねられている。
魔剣って、ああやって作られるのか。
鍛冶や錬成とは、一線を画している。
やはりわたしも、鍛冶師としての常識に囚われすぎていた。
ヘルムースさんが、「魔剣だけは鍛えられない」と言ったわけだ。
こんなのを最初の頃に見せられていたら、自信をなくしていただろう。
『おおう。あおうぅ! キャル、こいつは、やばすぎる!』
レベッカちゃんは、これまで聞いたこともない嗚咽を漏らす。
泣いているような、感じているような。
わたしは女だけど、オンナの快感とかはよくわかっていない。
くすぐったそうにしているようにしか、見えなかった。
「大丈夫ですの、レベッカさんは?」
クレアさんも、不思議そうにレベッカちゃんが鍛えられていく様子を見ている。
「あのー。ゼゼリィに話しかけても大丈夫? もしくは、レベッカちゃんに」
わたしは恐る恐る、アラレイムに問いかけた。
「ゼゼリィにはやめときな。お楽しみ中だ」
完全にトランス状態なため、わたしの声は耳にも入らないとのこと。
「レベッカになら、いいぜ。まともに受け答えできるか、わかったもんじゃねえが」
できることなら、レベッカちゃんの不安を取り除いてあげたい。
わたしは、出産中の妊婦に声を掛けるような、面持ちになった。
「どう、レベッカちゃん? 痛い?」
思い切って、わたしはレベッカちゃんに語りかける。
『痛くはありませんわ。ただ、少々柄の辺りが凝ってまして。もう少し、下のあたりを揉んでいただけると、練度が上がりそうですわ』
なんか、キャラ変わってるー!
『ああ。脳が混乱していて、意識が混濁しているんだよ。製造が完了すれば、もとに戻るから安心しな』
魔剣作りでは、よくあるパターンらしい。
「で、できたあああ!」
ゼゼリィが、手を引っ込める。
そこには、一回り大きくなったレベッカちゃんが。
手に持ってみた。
いつものように鋭い目のようなオーラが、刀身から湧き出てくる。
まばたきをしながら、オーラがこちらを見た。
「レ、レベッカちゃん?」
再度、声を掛ける。
また別人になってなかったらいいけど。
『いやあ、生まれ変わった気分だったよ! 魔剣としてのアイデンティティが、戻ってきたみたいだ!』
よかった。元のレベッカちゃんだ。
「なんだか、スッキリした感じだけど?」
『たしかにね。溜め込んでいた魔力もうまい具合に圧縮できて。自己強化能力も、復元できたようさね』
「自己強化?」
『魔剣ってのは本来、自分で進化していけるもんなのさ。だけどアタシ様は、実験体だったためにその部分がオミットされていた。あえて機能を止めていたっていうかさ』
つまり、もっと強くなるはずだったのに、そうならなかったと。
その部分を復元したことで、本来強化されるはずだった切れ味がアップしたと。
「これまででも、十分強くなったと思っていたけど?」
『あんなの、誤差レベルさね。今のアタシ様なら、一二〇%は強化されているよ』
その証拠に、わたしに大量の力が流れ込んできた。
今までの戦闘経験が、魔力となってわたしに吸収されていく。
レベッカちゃんをどう扱っていいのかも、頭に刻み込まれた。
あと、これから何が起きるのかも。
何をすべきかさえも、わかってしまった。
『想像以上に、ヤバイ事態が起きているようさね。だから、プリンテスはあんたに剣を打たせたんだ』
「なにが起きるの?」
まだゼゼリィは、コトの事態がわかっていないようだ。
「スルトが、動き出した。この世界に、向かってくる」
「キャルさん。スルトとは、まさか」
「レベッカちゃんの本来の持ち主である、魔王です」
『冥界竜アラレイム遺跡の魔工具』
『邪竜カトブレパスの瞳』
『低級ドラゴンゾンビの骨一式』
これらのアイテムは、すべて揃った。
レベッカちゃんが最強の魔剣になるかどうかは、最高の鍛冶屋であるゼゼリィに委ねられている。
魔剣って、ああやって作られるのか。
鍛冶や錬成とは、一線を画している。
やはりわたしも、鍛冶師としての常識に囚われすぎていた。
ヘルムースさんが、「魔剣だけは鍛えられない」と言ったわけだ。
こんなのを最初の頃に見せられていたら、自信をなくしていただろう。
『おおう。あおうぅ! キャル、こいつは、やばすぎる!』
レベッカちゃんは、これまで聞いたこともない嗚咽を漏らす。
泣いているような、感じているような。
わたしは女だけど、オンナの快感とかはよくわかっていない。
くすぐったそうにしているようにしか、見えなかった。
「大丈夫ですの、レベッカさんは?」
クレアさんも、不思議そうにレベッカちゃんが鍛えられていく様子を見ている。
「あのー。ゼゼリィに話しかけても大丈夫? もしくは、レベッカちゃんに」
わたしは恐る恐る、アラレイムに問いかけた。
「ゼゼリィにはやめときな。お楽しみ中だ」
完全にトランス状態なため、わたしの声は耳にも入らないとのこと。
「レベッカになら、いいぜ。まともに受け答えできるか、わかったもんじゃねえが」
できることなら、レベッカちゃんの不安を取り除いてあげたい。
わたしは、出産中の妊婦に声を掛けるような、面持ちになった。
「どう、レベッカちゃん? 痛い?」
思い切って、わたしはレベッカちゃんに語りかける。
『痛くはありませんわ。ただ、少々柄の辺りが凝ってまして。もう少し、下のあたりを揉んでいただけると、練度が上がりそうですわ』
なんか、キャラ変わってるー!
『ああ。脳が混乱していて、意識が混濁しているんだよ。製造が完了すれば、もとに戻るから安心しな』
魔剣作りでは、よくあるパターンらしい。
「で、できたあああ!」
ゼゼリィが、手を引っ込める。
そこには、一回り大きくなったレベッカちゃんが。
手に持ってみた。
いつものように鋭い目のようなオーラが、刀身から湧き出てくる。
まばたきをしながら、オーラがこちらを見た。
「レ、レベッカちゃん?」
再度、声を掛ける。
また別人になってなかったらいいけど。
『いやあ、生まれ変わった気分だったよ! 魔剣としてのアイデンティティが、戻ってきたみたいだ!』
よかった。元のレベッカちゃんだ。
「なんだか、スッキリした感じだけど?」
『たしかにね。溜め込んでいた魔力もうまい具合に圧縮できて。自己強化能力も、復元できたようさね』
「自己強化?」
『魔剣ってのは本来、自分で進化していけるもんなのさ。だけどアタシ様は、実験体だったためにその部分がオミットされていた。あえて機能を止めていたっていうかさ』
つまり、もっと強くなるはずだったのに、そうならなかったと。
その部分を復元したことで、本来強化されるはずだった切れ味がアップしたと。
「これまででも、十分強くなったと思っていたけど?」
『あんなの、誤差レベルさね。今のアタシ様なら、一二〇%は強化されているよ』
その証拠に、わたしに大量の力が流れ込んできた。
今までの戦闘経験が、魔力となってわたしに吸収されていく。
レベッカちゃんをどう扱っていいのかも、頭に刻み込まれた。
あと、これから何が起きるのかも。
何をすべきかさえも、わかってしまった。
『想像以上に、ヤバイ事態が起きているようさね。だから、プリンテスはあんたに剣を打たせたんだ』
「なにが起きるの?」
まだゼゼリィは、コトの事態がわかっていないようだ。
「スルトが、動き出した。この世界に、向かってくる」
「キャルさん。スルトとは、まさか」
「レベッカちゃんの本来の持ち主である、魔王です」