「久しぶりだな!」
俺は部屋に入ってきた三人に手を振った。
今、部屋に入ってきたのは、共に旅をしたメンバーだった。岩も砕ける程の強い腕力を得た戦士ゼロス、有能占い師として街で大活躍している魔法使いエウリュ、そして今回の旅行の計画をほぼ全て考えてくれた、金持ちな僧侶ウェスタ。
偶然まだ誰も温泉チケットを使っていなかったらしく、魔王を休ませつつ子らも楽しませるには人手が多い方が良いからと、ウェスタの計らいでゼロスとエウリュも来てもらえることになったのだ。ちなみに気まずくならないよう、事前に魔王には来ることを伝えてある。そんな魔王はというと、数人の子らの背筋を伸ばさせて行儀の良い座り方を教えていた。
「本当にたくさんの子供がいるのですね。可愛い!」
「後で遊ぼうな!」
子供が好きな魔法使いエウリュと戦士ゼロスはすぐに子らと仲良くなり、馴染んだ。
「ウェスタ、今日子供は一緒じゃないのか?」
「旦那と一緒に家にいるわ」
「そういえば、旅の時はいつも旦那に子供まかせていたよな」
「そうね、とてもふたりは仲が良いし。ありがたいわね」
「そうだな」
話していると和食料理が次々と運ばれてきたから、今来た三人も入口辺りの空いている席に並んで座った。全ての料理が揃った。
「いただきま~す!」
幼子らの前には、大人が食べるものとは別の、食べやすい料理が並べられていた。花の形の白い皿に、蒸した赤い魚と星の形をした色鮮やかな野菜が盛られていて「美味しい」「可愛い」と楽しみながら幼子らは食している。食べ終わるとあんこの乗ったアイスクリームも来るらしい。大人の料理も、刺身というものや味噌で味付けされたスープなど初めて味わう料理が次々出され、どれも美味しく、料理を堪能した。
食べ終えたら温泉だ。男湯と女湯に分かれていて、魔法使いエウリュと僧侶ウェスタが女湯の方で女の子チームと一緒に入ってくれることになった。
「バイオレットとオレンジとピンクは女湯だな」
「こちらの赤ちゃんはどちらに?」
「あっ、ホワイトも女の子だ!」
「ホワイトちゃん抱いてみたいです。おいで」
魔法使いエウリュは執事からホワイトを受け取ると、優しく抱いた。
「わっ、ふわふわしてて、可愛い!」
エウリュが微笑みかけるとホワイトは声を出して笑った。良い雰囲気で、大切な子らを安心して任せられそうだな。
「それじゃ、男の子チームは俺についてこい!」
俺はギルバードを抱き上げて歩く。男の子チームと戦士ゼロス、執事と魔王もついてきた。
「魔王も今入るのか?」
「あぁ、そうだ」
魔王、ゆっくりはできないか――?
脱衣所で元気よく服を脱いだスカイとイエローは勢いよく走り出して浴室の中へ入ろうとする。
「走るのダメ! 他に人がいたらぶつかって怪我するだろ?」と、強めに言うと注意された子らは素直に歩いた。浴室に入るとそれぞれが体を洗う。そして全員でまずは一番広い湯船に入り、湯の中に一斉に体を沈めた。しんみりとした温かさが体全体を巡り、気持ちが良い。少し経つと子らはそれぞれ目の届く場所で、遊んだり他の湯船に入ってぼんやりしたりしながら、好きなように過ごしていた。大人チームは子らを見守りながら並んで湯に浸かった。
「そういえば、俺ら以外誰も客いなくないか?」
「そのようですね。わたくしも少し気にかかっておりました」
「だよな。今もここには俺ら以外はいないし……後で計画立ててくれたウェスタに聞いてみようか」
「そうですね」
気持ちよさを感じ、ほっと息を吐いた時、レッドがこっちに来た。
「ねぇ、みんなで追いかけっこしたい」
「追いかけっこか……」
幼子らが集まってきて大人たちを引っ張る。
お兄さんチームは離れた場所からこっちを見ていた。
「他に人いないし、いいんじゃないか?」とゼロスは言う。
なかなかない機会だしな。こうやってここに来られるのも、最初で最後かもしれないし――。
「じゃあ、走るのは禁止で、歩く追いかけっこをやろう! 場所は……露天風呂の湯船の中にしようか」
浴室の奥にある扉を開けると、蒸気と共に広い湯船が見えた。鳥のさえずりが響いている。木でできた仕切りの向こう側からは女の子チームの声も聞こえてきた。
「じゃあ、まずは俺が追いかける!」
俺が追いかける役になると、追いかけっこが始まった。
子らはとても楽しそうだった。そして、大人も――。
しばらく遊んだ後は脱衣所へ。この宿に置いてある浴衣というものに着替えた。イケメンな魔王は浴衣も格好よく着こなすんだろうな。脱衣所の隅にいる魔王をちらっと見るとすでに着替え終えていた。髪をひとつに束ね、浴衣姿でいる魔王の格好良さは予想を超えていた。そんな魔王は座りながら両手を真剣に見つめている。
「魔王、どうした?」
「いや、何もない……」
何もないわりには首をかしげ、不思議そうな顔をしている。魔王は急に立ち上がると、タオルで全身を拭いていたイエローの元へ。そしてイエローに向かって両手をかざすと、魔王の手から風が出てきた。
「な、なんだ。なんでだ?」
その場にいた全員が驚いた。
俺は部屋に入ってきた三人に手を振った。
今、部屋に入ってきたのは、共に旅をしたメンバーだった。岩も砕ける程の強い腕力を得た戦士ゼロス、有能占い師として街で大活躍している魔法使いエウリュ、そして今回の旅行の計画をほぼ全て考えてくれた、金持ちな僧侶ウェスタ。
偶然まだ誰も温泉チケットを使っていなかったらしく、魔王を休ませつつ子らも楽しませるには人手が多い方が良いからと、ウェスタの計らいでゼロスとエウリュも来てもらえることになったのだ。ちなみに気まずくならないよう、事前に魔王には来ることを伝えてある。そんな魔王はというと、数人の子らの背筋を伸ばさせて行儀の良い座り方を教えていた。
「本当にたくさんの子供がいるのですね。可愛い!」
「後で遊ぼうな!」
子供が好きな魔法使いエウリュと戦士ゼロスはすぐに子らと仲良くなり、馴染んだ。
「ウェスタ、今日子供は一緒じゃないのか?」
「旦那と一緒に家にいるわ」
「そういえば、旅の時はいつも旦那に子供まかせていたよな」
「そうね、とてもふたりは仲が良いし。ありがたいわね」
「そうだな」
話していると和食料理が次々と運ばれてきたから、今来た三人も入口辺りの空いている席に並んで座った。全ての料理が揃った。
「いただきま~す!」
幼子らの前には、大人が食べるものとは別の、食べやすい料理が並べられていた。花の形の白い皿に、蒸した赤い魚と星の形をした色鮮やかな野菜が盛られていて「美味しい」「可愛い」と楽しみながら幼子らは食している。食べ終わるとあんこの乗ったアイスクリームも来るらしい。大人の料理も、刺身というものや味噌で味付けされたスープなど初めて味わう料理が次々出され、どれも美味しく、料理を堪能した。
食べ終えたら温泉だ。男湯と女湯に分かれていて、魔法使いエウリュと僧侶ウェスタが女湯の方で女の子チームと一緒に入ってくれることになった。
「バイオレットとオレンジとピンクは女湯だな」
「こちらの赤ちゃんはどちらに?」
「あっ、ホワイトも女の子だ!」
「ホワイトちゃん抱いてみたいです。おいで」
魔法使いエウリュは執事からホワイトを受け取ると、優しく抱いた。
「わっ、ふわふわしてて、可愛い!」
エウリュが微笑みかけるとホワイトは声を出して笑った。良い雰囲気で、大切な子らを安心して任せられそうだな。
「それじゃ、男の子チームは俺についてこい!」
俺はギルバードを抱き上げて歩く。男の子チームと戦士ゼロス、執事と魔王もついてきた。
「魔王も今入るのか?」
「あぁ、そうだ」
魔王、ゆっくりはできないか――?
脱衣所で元気よく服を脱いだスカイとイエローは勢いよく走り出して浴室の中へ入ろうとする。
「走るのダメ! 他に人がいたらぶつかって怪我するだろ?」と、強めに言うと注意された子らは素直に歩いた。浴室に入るとそれぞれが体を洗う。そして全員でまずは一番広い湯船に入り、湯の中に一斉に体を沈めた。しんみりとした温かさが体全体を巡り、気持ちが良い。少し経つと子らはそれぞれ目の届く場所で、遊んだり他の湯船に入ってぼんやりしたりしながら、好きなように過ごしていた。大人チームは子らを見守りながら並んで湯に浸かった。
「そういえば、俺ら以外誰も客いなくないか?」
「そのようですね。わたくしも少し気にかかっておりました」
「だよな。今もここには俺ら以外はいないし……後で計画立ててくれたウェスタに聞いてみようか」
「そうですね」
気持ちよさを感じ、ほっと息を吐いた時、レッドがこっちに来た。
「ねぇ、みんなで追いかけっこしたい」
「追いかけっこか……」
幼子らが集まってきて大人たちを引っ張る。
お兄さんチームは離れた場所からこっちを見ていた。
「他に人いないし、いいんじゃないか?」とゼロスは言う。
なかなかない機会だしな。こうやってここに来られるのも、最初で最後かもしれないし――。
「じゃあ、走るのは禁止で、歩く追いかけっこをやろう! 場所は……露天風呂の湯船の中にしようか」
浴室の奥にある扉を開けると、蒸気と共に広い湯船が見えた。鳥のさえずりが響いている。木でできた仕切りの向こう側からは女の子チームの声も聞こえてきた。
「じゃあ、まずは俺が追いかける!」
俺が追いかける役になると、追いかけっこが始まった。
子らはとても楽しそうだった。そして、大人も――。
しばらく遊んだ後は脱衣所へ。この宿に置いてある浴衣というものに着替えた。イケメンな魔王は浴衣も格好よく着こなすんだろうな。脱衣所の隅にいる魔王をちらっと見るとすでに着替え終えていた。髪をひとつに束ね、浴衣姿でいる魔王の格好良さは予想を超えていた。そんな魔王は座りながら両手を真剣に見つめている。
「魔王、どうした?」
「いや、何もない……」
何もないわりには首をかしげ、不思議そうな顔をしている。魔王は急に立ち上がると、タオルで全身を拭いていたイエローの元へ。そしてイエローに向かって両手をかざすと、魔王の手から風が出てきた。
「な、なんだ。なんでだ?」
その場にいた全員が驚いた。



