四人は魔王城から出る。魔法使いエウリュがテレポートを唱えると、一瞬で王がいる城の前に着いた。俺は城の扉を両手で勢いよく開けた。いつもは座ったままでいる王が、抱えられた魔王の姿を確認すると駆け寄ってきた。

「な、なんと! そなたたち、そなたたちが魔王を!!」
「あなた、落ち着いて」

 いつもクールでイケオジだと庶民の中で噂となっている王が珍しく取り乱し叫ぶと、王女は王を落ち着かせた。

「はい、魔王討伐の任務を遂行致しました」と、俺は王の前でひざまつく。
「とりあえず、倒れた魔王を連れて来たけど、どうする?」
「魔力は吸い取ってありますので、暴走することはないかと……」
 戦士ゼロスは魔王を床に置きながら王に問うと、魔法使いエウリュは続けて言う。

「そっか、後は任せなさい」

 そう言った王は側近に目配せをする。側近は近衛隊のひとりに指示を出し、魔王は抱えられるとどこかに連れていかれた。

「もう俺らは帰っていいのか?」
「あぁ、長旅ご苦労。ゆっくりと休むがよい。報酬は後に送るとしよう。あと、今、これをやろう」
 王は小さな紙をパーティーのメンバーひとりひとりに1枚ずつ配る。
「これは……?」
「これはついこないだ完成したばかりの天然の湯につかれる高級宿のチケットだ。まだ位の高い者しか入ることは出来ん」
「早速行こうか?」と、戦士ゼロスは張り切り外に出ようとした。
「待て!」
 王が強めに言うと四人は立ち止まる。
「何でしょうか?」と、俺は王に問う。

「そなた達のお陰で、この国に真の平和が訪れるだろう。そなた達は偉業を成し遂げたのだ。よし、追加でそなた達に最高の褒美をやろうではないか。欲しい能力を述べよ」
「能力?」

 パーティーのメンバー達は顔を合わす。

「そうだ。こうなりたいとか、あれが出来たらいいのにとか……なんでも良い。この飴玉に願いを込めよ」

 直接王からパーティーメンバーそれぞれに、透明な飴玉が手渡された。
 しばらく四人は考え、結論を出した。

 俺は裕福な生活を送りたいと盛大な富を願った。戦士ゼロスは岩も碎ける程の強い腕力、魔法使いエウリュは人の心を読める能力、そして僧侶ウェスタは子を上手くあやす力を願った。

 それぞれが得たい能力を述べると、それぞれ飴玉に願いを込める。願いを込めた後は、最大限の魔力が込められたガラスケースの中に並べられた。一時間後、その飴玉を飲み込むと願った能力を得られるらしい。

 待ち時間に準備された豪華な食事を堪能する。あれやこれや、あっという間に時間は経っていった。飴玉があるガラスのケース前に四人は立つ。

「では、飴玉を手にとり、口にするが良い」

 遂に能力を得る時が来た。
 期待に胸が高まる。

 金が全てを解決する。これからは豪華な人生が待っていると俺は思っていたのに――。