魔王リュオン率いる魔界と人間界の対立が始まると、一気に争いは激化した。かれこれ対立が始まってから、百年程経つだろうか。きっかけはひとりの人間が魔界に忍び込み、盗みを働いたことだった。ただ、その人間が魔界の物を盗むタイミングを実際に見た者はいなかった。魔界が人間界を攻撃して支配するための口実で嘘かもしれない。

真実は不明だったが、それからふたつの世界のバランスは崩れ、魔王が人間界を直接攻撃し、支配しようとした。これまで、何組ものパーティーが魔王討伐にチャレンジしたが、魔王の力は強大すぎて、どのパーティーも歯が立たず。王は諦めかけ、このパーティーで挑戦して駄目なら、魔王にこの世界を明け渡そうと考えていた。

 そうして最後に選ばれたパーティーが、俺、勇者ラレス と戦士ゼロス 、魔法使いエウリュ 、そして僧侶ウェスタ の、二十代の四人である。

「では、頼むぞ。そなたたちが最後の望みだ」

 王に希望を託された四人は、希望に応えるべく気合いを入れて、魔王リュオンの城に乗り込み、魔王に戦いを挑んだ。


 そして――。


「まさか、我が負けるとは……」

 魔王リュオンは俺が振りかざした剣で背中全体を切られ、倒れた。

「わたくしたち、勝ちましたの?」と僧侶ウェスタが疑問を呟くと、戦士ゼロスがしゃがみ魔王を指でつんつんした。魔王はビクともしない。

「魔王倒したあとって、どうすればいいんだろうか……誰か聞いたか?」

 俺が皆に問うも、首を振る三人。
 魔族がかけた特殊な魔法により連絡手段が遮断されていて、城の中から外部へは連絡がとれない。
 
「ここからじゃ、国に確認とれないよな。とりあえず、連れてくか?」と、戦士ゼロスは魔王を抱きあげようとした。

「ちょっと待って! 万が一起きてしまっては、再び戦うことになるかも。その時は勝てるか保証もなく……」

 僧侶ウェスタの言葉に三人は納得する。

「じゃあ、置いてくか?」と、戦士ゼロスは魔王を再び床に置いた。うつ伏せ状態で地面に置かれる魔王。

「その魔王のありふれた魔力が今後問題になる可能性を秘めているのなら、わたくしが掃除機のように吸いとります」

 魔法使いエウリュは、うつ伏せ状態の魔王の背中の前に両手をかざす。そして紫色に輝く円を作り、魔力を吸収する魔法「ドレイン」を唱えた。

 黒い魔王の魔力だと思われるものがどんどん魔法使いエウリュが作った円の中に吸い込まれていった。魔法使いエウリュは「この魔力の量、すごい、すごいわ」と言いながら魔力を吸い取る作業を続ける。

 魔法使いエウリュ以外は、魔王の身体の中に魔力が残っているのか見えないが、若干魔王が痩せ細ったのを確認した。

 そうして、戦士ゼロスが再び魔王を「重いな」と言いながら担ぐと、王に報告するために城へ向かうことにした。


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