遊び終わると、上の子らが片付けの中心となり、手作りのスゴロクセットを麻の袋に一つにまとめた。

「ねぇ、今からスゴロク、魔王と一緒にやりたい。駄目?」と、初等部のオレンジが目を輝かせて尋ねた。

「今、せっかく片付けたんだし、たぶんもう少しで昼飯の時間だから、今度な?」と、俺は軽く笑いながら答えた。それでも「やりたい!」と、駄々をこねる。俺は苦笑いしながら頭を掻いた。

「全員、昼ご飯をしっかり食べられたら……あっ、そういえば魔王のコマがないな。魔王も一緒に遊ぶなら、コマが必要だよな……」

 それに、スゴロクのマスは全部、魔王が寝て一回休みだったり、魔王が走ったからサイコロを二回振れたり、魔王がスープを作ったから全員一マス進んだり……魔王が何かしてるイベントばかりだ。
魔王も一緒にやるとしたらどうしよう、このままで良いのか?と顎に手を当てて考えていると、「勇者、魔王とスゴロクやる時までに、魔王のコマを描いといて~?」と、幼児のイエローが目をキラキラさせて軽い口調で頼んできた。

 俺は絵を描くのが昔から苦手だ。しかも本人がそのコマを使う。クオリティの低い魔王のイラストが完成したら、魔王のあの鋭い目で睨まれそうだし、なんか気まずいな。いや、待てよ? 子育てって、よく子供と絵を描いたりするよな? もしかしたら、チートのお陰で今は絵の技術も最強かもしれない。

「分かった。じゃあ、俺が描いておくから、全員ご飯をしっかり食べられたら、魔王と一緒にスゴロクをやろう!」

 全員で再び魔王がいるキッチンへ向かう。廊下を進むと、焼き立てのパンやスープの食欲をそそる香ばしい香りが漂ってきた。

「魔王、ご飯食べたらスゴロクやるよ~!」と、小さな子らが魔王の足にまとわりつく。

「スゴロクだと? なんだそれは――」と、魔王は眉をピクつかせ、顔を引きつらせた。

「遊びだ。後で説明する。それよりも魔王に聞きたいことがある。魔王には、隠し子がいたりするのか?」
「なんだ突然。そんなものは、いない」と、魔王はムッとした表情で即答し、眉を寄せて全力で否定した。

「でもな、さっき……」

 俺はさっきの幽霊の話や、「魔王パパ」と呼んでいた謎の子のことを、かくかくしかじか説明した。説明を終えたタイミングで、「魔王、お腹空いたー!」と、子らが騒ぎ始める。

「思い当たる節はないが……子供たちにご飯を食べさせたら、確認しておく」と、魔王は考え込むように言った。

「そうだな。みんな、ご飯だ! 誰が一番準備をたくさんできるか、競争だ!」

俺が叫ぶと、みんなは「僕!」「私!」と叫びながら、皿を運んだりスプーンやナプキンを置いたりと、競い合って笑いながら準備の手伝いを始めた。