子らは名をもらって、うれしかったのだろうか。はしゃぎながら食事をし、食べ終えるのに時間はかかったが、なんとか全員完食した。
席を離れて自由に動き回る子やまだ座ったままの子、それぞれが自由に過ごしている。
大人たちも食べ終わり、席を立つ。
テーブルの上を眺めると、空の食器が無造作に置かれているままだ。
「いつも、片付けはどんな感じなんだ?」
俺は魔王に問いかける。
「どんな感じとは?」
「魔王と執事で、子供と遊ぶ担当とか片付け担当とか、あるのかな?と思って」
「片付けはひとりでやっている。子供をかまいながらだ」
執事と分担してやっているのかと思ったが……。
そういえば「リュオン様はひとりでなんでも抱え込む」と、執事が言っていたな。席から離れ、中等部組と話をしていた執事はこっちをチラチラ気にしていた。視線がなんとなく落ち着かなそうで、まるで何か言いたげだった。
執事はいつも魔王からの命令を待ち構えているような雰囲気だな。
「執事に、家事と育児の仕事分担を命令しないのか?」
「……しない。執事は執事なりの考えがあると思うから、命令は必要最低限だ」
執事への命令は必要最低限……つまり、どうしてもやってほしいことがある時に魔王は執事に命令をするのか。
執事が真夜中に話していたことを思い出す。
魔王に、『万が一、我が倒されたら、とにかく全員逃げ切れ』と命令を受けたと執事は言っていたな。その必要最低限の命令をされた時に執事は、逃げない選択をし、逆らったのか……なかなかやるな。
「そうなのか……魔王は子供と遊ぶのと、片付けするの、どっちが好きだ?」
「好き、というか……ひとりの時間が、ほしい」
「そっか、本当は片付けも全部したいんだけど、さすがに難しいから、魔王は片付けを頼む。俺と執事は子供と遊んでいるから!」
「……あぁ」
でも、せめてテーブルの上の食器だけでも、俺も片付けよう。
さて、やるか……子供の人数が多いと、もう本当に色々大変だな。とりあえず――。
「全員、自分が使った食器をさげてくれ」と、子らに指示を出した。
上の子らは自分たちでキッチンの洗い場まで持っていった。下の子らは、話を聞いてない子と、自分で運べない子がいた。まだテーブルには食器が結構残っている。魔王はそれを持ってキッチンへ。魔王だけでは持ちきれなさそうだったから、残りを全て持つと魔王のあとについて行った。
食器を洗い場に置いた魔王は食器を洗う前に、鍋に水を入れ、それを火にかけた。
「昼食の分か?」
「そうだ」
魔王は続けて冷蔵庫から卵や野菜を取り出し、テーブルの上に並べていく。
――無駄な動きがなくて、手際が良い動きだ。
子育ては得意じゃなさそうだけど、魔王はかつて世界最強と言われていた。そう言われていただけあって、仕事も出来る男だな。容姿も端麗だし……もしも魔王が世間に全てをさらけだしたらスパダリと言われ、もてはやされるだろうな。
魔王から視線を外せない。その無駄のない動きや、どこか孤独そうな横顔を見ていると、俺は魔王に興味が湧いてきて、もっと知りたくなっていた。
「魔王は料理が得意なのか? いつから、誰に教わったんだ?」
「……」
魔王は何も答えない。
質問攻めしすぎたか?
「別に答えたくなかったら、答えなくてもいい……魔王のスープ、美味しかったぞ」
そうだよな……敵である俺に、自身の情報を易々とさらすなんてことは、自滅への道を意味している。頭の良い魔王はしないだろう。
「……誰にも教わらず、料理をせざるを得ない環境だった」
魔王はそう言って目を伏せた。
席を離れて自由に動き回る子やまだ座ったままの子、それぞれが自由に過ごしている。
大人たちも食べ終わり、席を立つ。
テーブルの上を眺めると、空の食器が無造作に置かれているままだ。
「いつも、片付けはどんな感じなんだ?」
俺は魔王に問いかける。
「どんな感じとは?」
「魔王と執事で、子供と遊ぶ担当とか片付け担当とか、あるのかな?と思って」
「片付けはひとりでやっている。子供をかまいながらだ」
執事と分担してやっているのかと思ったが……。
そういえば「リュオン様はひとりでなんでも抱え込む」と、執事が言っていたな。席から離れ、中等部組と話をしていた執事はこっちをチラチラ気にしていた。視線がなんとなく落ち着かなそうで、まるで何か言いたげだった。
執事はいつも魔王からの命令を待ち構えているような雰囲気だな。
「執事に、家事と育児の仕事分担を命令しないのか?」
「……しない。執事は執事なりの考えがあると思うから、命令は必要最低限だ」
執事への命令は必要最低限……つまり、どうしてもやってほしいことがある時に魔王は執事に命令をするのか。
執事が真夜中に話していたことを思い出す。
魔王に、『万が一、我が倒されたら、とにかく全員逃げ切れ』と命令を受けたと執事は言っていたな。その必要最低限の命令をされた時に執事は、逃げない選択をし、逆らったのか……なかなかやるな。
「そうなのか……魔王は子供と遊ぶのと、片付けするの、どっちが好きだ?」
「好き、というか……ひとりの時間が、ほしい」
「そっか、本当は片付けも全部したいんだけど、さすがに難しいから、魔王は片付けを頼む。俺と執事は子供と遊んでいるから!」
「……あぁ」
でも、せめてテーブルの上の食器だけでも、俺も片付けよう。
さて、やるか……子供の人数が多いと、もう本当に色々大変だな。とりあえず――。
「全員、自分が使った食器をさげてくれ」と、子らに指示を出した。
上の子らは自分たちでキッチンの洗い場まで持っていった。下の子らは、話を聞いてない子と、自分で運べない子がいた。まだテーブルには食器が結構残っている。魔王はそれを持ってキッチンへ。魔王だけでは持ちきれなさそうだったから、残りを全て持つと魔王のあとについて行った。
食器を洗い場に置いた魔王は食器を洗う前に、鍋に水を入れ、それを火にかけた。
「昼食の分か?」
「そうだ」
魔王は続けて冷蔵庫から卵や野菜を取り出し、テーブルの上に並べていく。
――無駄な動きがなくて、手際が良い動きだ。
子育ては得意じゃなさそうだけど、魔王はかつて世界最強と言われていた。そう言われていただけあって、仕事も出来る男だな。容姿も端麗だし……もしも魔王が世間に全てをさらけだしたらスパダリと言われ、もてはやされるだろうな。
魔王から視線を外せない。その無駄のない動きや、どこか孤独そうな横顔を見ていると、俺は魔王に興味が湧いてきて、もっと知りたくなっていた。
「魔王は料理が得意なのか? いつから、誰に教わったんだ?」
「……」
魔王は何も答えない。
質問攻めしすぎたか?
「別に答えたくなかったら、答えなくてもいい……魔王のスープ、美味しかったぞ」
そうだよな……敵である俺に、自身の情報を易々とさらすなんてことは、自滅への道を意味している。頭の良い魔王はしないだろう。
「……誰にも教わらず、料理をせざるを得ない環境だった」
魔王はそう言って目を伏せた。



