走りながら、私はこんなことになってしまったあの悪夢を思い出していた。

 あれはつい半年前、父に無理矢理参加させられた、冒険者の中の武術大会のことだ。
 本来そういう大会には実力がなければ出られないが、アーチャー家は優秀な家系ということで、私を父の権力で出させることができたのである。

「わ、私なんかが武術大会に⁉︎ そんなのむ――」
「無理とは言わせない。冒険者になって一年以上は経ったんだ。そろそろ出てもよい頃だろう」
「いえ、私なんかが出てよいものでは……」
「出るからには、アーチャー家の名にかけて一番をとること。よいな?」

 確かに兄や姉も、冒険者になってから一年で武術大会に出ていた。父の命令に逆らうことはできない。

「は、はい。分かりました」
「いつもはダメなお前でも、大会でうまくいけば上級パーティに入れるかもしれないからな。これで成功させるしかないんだ」
「はい」
「アーチャー家の名に傷をつけることのないようにな」
「はい」

 頭が締めつけられそうだった。何がなんでも父を怒らせないように……、そう考えるのが精一杯。

 武術大会に向けて、討伐のすきま時間に集中して練習した。一般的な的にでさえ当てられるかというところだが、ダメ元で最難関の距離と的でやってみた。
 ……もちろん、当てられるはずもないのだが。