冒険者ギルドと王都との真ん中くらいにある、私が生まれ育った家までやってきた。冒険者時代に大金を稼いだこともあって、平民の身分ながら大きく広々とした家で育った。

 戸を(たた)くと、変わらずお手伝いさんが出迎えてくれた――が、私の姿を見て衝撃だったのだろう。

「……!」

 声に出さなくても分かる。無駄に腰まで伸びた銀髪はボサボサで、ストレスでさらにやつれ、『雪のような白い肌』がただ青ざめているだけなのだから。

「お父さまはいらっしゃいますか」
「はい、旦那様のお部屋に」
「今、お伺いすることはできますか」
「えっと……少々お待ちください」

 お手伝いさんは私を玄関に残して廊下の奥へと消えてしまった。一人うつむいたまま、また戻ってきてくれるのを待つ。

 私が冒険者になる前からだが、この家でお手伝いさんだけが誰にでも無難な接し方をしてくれる。だけど……きっと心の中では……。

「どうぞこちらへ」

 戻ってきたお手伝いさんに導かれて、私は「失礼します」と部屋に入っていった。