「今日で、お前をこのパーティから追放する」

 背筋が凍る。やっぱりかという気持ちとまだここにいたいという気持ちがせめぎ合う。
 イスに座る私は、横並びで立っている三人を見上げた。リーダーのディエゴの苛立ちが伝わってくる。

「さすがにね」
「もう我慢できない」

 仲間のイアンとジェシカも、私には冷たい視線しか向けてこない。

「本当にごめんなさい。明日からは――」
「だから、今日でやめてもらうと言っただろう」
「お願いします、とりあえず居させてもらうだけでいいんです。討伐には行きません。その間に訓練をして、自力でお金を稼いできま――」
「もう用がないヤツは、ここにいる資格はない。お前の代わりなどいくらでもいる」

 ディエゴは、私の言葉を聞き入れようとしない。ふと父の顔が脳裏によぎる。

「こんなんじゃ……家族に合わせる顔もない……」

 自分の技術がこの人たちに到底及ばないのは、このパーティに入る前から分かっていた。普通は同じくらいの実力の者どうしで組むパーティに、なぜ私なんかのヘボが入ってしまったのかというと……。

 あの武術大会だろう。

「明日、日が昇ったらさっさとここを出ていけ。自分でも分かってるよな。お前が足を引っぱったんだ」

 トドメを刺された。頭が真っ白になった。
 まだもう一晩泊まれるだけでもマシ。きっとディエゴが最後にかけてくれた恩に違いない。そう心に言い聞かせた。

「まぁ、お前はそもそも冒険者をやめた方がいいだろうな。このまま他のパーティに行って迷惑かけてもしょうがないだろ」

 パーティのメンバーと合わなかったり、ソロで討伐したかったり、自分からパーティを出ていくことはよく聞く話だ。でも、追放されるなんて。しかも能力不足で。 

 夜のうちに私はさっと荷物をまとめた。涙が出そうになるのをこらえて、翌朝には冒険者ギルドの宿を出ていった。