「あ、俺は声がかかったからJリーグの入団テスト受けるんだ」
サラッと言われて、聞いてから理解すると目を見開いて驚いてしまう。
「蒼くんJリーグのチームに入るの?」
「まだ、わかんないよ。結果次第じゃないかな? 一応だから進学の予定で俺も指定校推薦貰う予定」
みんな、それぞれ先が決まってきているんだな。
ちょっぴり羨ましくなった。
「有紗は?もちろん進学だよね?」
日菜子の笑顔に、私は少し考えてから答える。
「うん、一応その予定」
そう、私も進学はする。
ただし、普通の専門学校とはいえない特殊な進学先の予定だ。
詳しくは言わないけれど……。
そこは上手く笑顔で交わしたのだった。
新学期がスタートするとあっという間に時間が流れていく。
体育祭の練習も佳境で、各々出場する競技の練習もかなり進んだ。
日菜子は綱引きと二人三脚にリレー。
蒼くんと要くんは綱引き、騎馬戦、障害物競走にリレーだ。
ふたりはかなり運動神経が良いので、体育祭ではクラスの主戦力だ。
目玉競技への参加が多い。
なにしろスタミナとスピードが出せるふたりだから、かなりクラス全体から当てにされている。
「あんま、休みがない」
ボソッと呟いていたのは要くん。
この暑い中これだけの競技に出るのは大変だろう。
ちょっと心配ではある。
そうして、迎えた体育祭は晴天に恵まれて朝から暑い。
グラウンドに集められて話す中でも、熱中症に気をつけるように、水分補給はしっかりと等と言う体育の担当教師の話を聞いて準備運動が終われば、各自クラスの集まる色の所へと移動。
今年の私たちのクラスは赤。
各学年8クラスあるので、色は四色に分けられる。
赤、白、青、黄の四カラーだ。
各学年二クラスがひとつのカラーに振り分けられるので、各カラーに六クラス分の生徒が居るのでカラー毎の範囲には結構な数の生徒が居る。
蒼くんと要くんは下級生に囲まれ始めた。
さすが、校内で人気のふたりだ。
下級生なんて普段はそう交流もないので、今日は滅多にないチャンスなのだ。
この前までは穏やかにさすがふたりは人気者だな、なんて見ていられたのに……。
私の気持ちに変化があったから?
今日は下級生に囲まれている要くんを見ると、モヤモヤとした気分になる。
それを振り払うように首を振っているところに声がかけられる。
「なに、首なんか振っちゃって。ほら、こっち来な!」
声を掛けてきたのは、茜だ。
今回の運動会は茜のクラスと同じ色なので、待機場所が一緒だった。
「茜、なにするの?」
「そんなの、遊ぶに決まっているじゃない」
それはものすごく、いい笑顔の茜に私は捕獲されたのだった。
それどこから持ってきたの? という道具が出され、あっという間にまたも髪型やら顔やらいじられる。
今日はサイドに髪をまとめて、ゆるく三つ編みにされた。
更に顔にはナチュラルメイクをされた。
それを見ていた同学年の女子達が感嘆の声を上げる。
「小山さん! 凄く上手いね!」
「汐月さん、羨ましい! 私もやってもらいたい!」
茜はニッコリ笑うと、こう声をかけた。
「メイクは厳しいけど、ヘアアレンジならやるよ」
茜のその言葉に女子が一気にテンションが上がる。
そして、結構な数の女子がお願いに来ていたが茜はとっても手際よくヘアアレンジをしては送り出した。
どの子も可愛らしく、それでいてその子に合うアレンジになっている。
茜はやっぱり美容師の素質があるなと、見ていて思ったのだった。
私は三つ編みに、日菜子は茜に可愛らしいアレンジのあるポニーテールにしてもらっている。
両サイド編み込みを入れたポニーテールは可愛い。
「茜ちゃん、本当に器用だよね! 私、不器用だから普通に結ぶだけで精一杯だよ」
日菜子は確かにそんな感じだから、ゴムを可愛いのを集めていると前に言っていた。
その中からセレクトして今日は茜が結んであげていた。
今日は花柄の可愛いシュシュで纏めている。
「ありがとう。でも、このアレンジも可愛いシュシュやらゴムやらあってこそだからね。女子はみんな可愛いものに目がないよね」
茜の言葉に、私と日菜子含め周りの女子みんなが頷いていた。
可愛いは正義である。
そうして話しているうちに、まず日菜子が出る二人三脚への出場選手の呼び出しがかかり、出る子達が移動して行った。
「水木くんと松島くんは、短距離走も出るの?」
今グラウンドで始まったのは、男子100m走だ。
「うん、うちのクラス体力テストの結果で競技に選出されていて。ほら、ふたりは大体どの項目も出来が良いから避けられなかったみたいでね」
私が濁しつつ言うと、茜も察したらしい。
「あぁ。始ちゃんが担任だし、ふたりは逃げられないか……」
「そういう事」
うちのクラスの担任の三浦先生は、こういった行事に熱心を通り越して熱血である。
勝ちに行く気満々でメンバーを集め決めていたので、蒼くんと要くん、日菜子など運動神経のいい体育会系メンバーは出場枠にどんどん入れられてしまった感じだ。
「それは、運動部関連の生徒は不幸だったわね」
苦笑いで言う茜は運動好きの基本インドア派だから、出るのは女子全員参加の棒引きだけらしい。
やれば出来るのにもったいないことだ。
日菜子はそれに綱引き、二人三脚、リレーだから出るのが多い。
蒼くんと要くんも短距離走、障害物競走、リレー、騎馬戦なのだから。
私はそろそろ走り出すふたりの応援に席を立った。
見やすいようにと移動すれば、既にグラウンドの競技するそばには女子が大勢いる。
そして、たくさんの声が飛んでいる!
「きゃー、松島先輩! 頑張って!」
「水木先輩、負けないで!」
女子達の黄色い声が、そこかしこから上がってくる。
主に下級生の女子だ。
同学年の子達は慣れもあり落ち着いているし、蒼くんには彼女の日菜子が居るのがデフォになったのでそう騒がれない。
要くんについても同じ。
騒がれるのが苦手なのはみんな知っているし、うちの学年は何人か既にふたりに撃沈した話は有名になっているのでそう騒がないのだ。
それに三年生にもなれば、各々相手がいたり、受験勉強に集中したりとそう恋愛にキャーとか言わなくなったみたい。
大人になるってこういうこと? なんて、ちょっと思ってみたりする。
思考に意識を飛ばしているうちに、まずは蒼くんの走る順番が来た。
「位置について、よーい」
『パーン!』
陸上用のピストルの音がすると、一気に駆け出す集団。
そこから一歩先に出たのは蒼くん。
そのままぐんぐんとスピードを上げて、一着でゴール。
全力疾走だと思ったのに、蒼くんはあまり息を乱していない。
にこやかに二着でゴールした陸上部の子と話している。
最終走者の組で要くんが出てきた。
並んでいるのはどの子も運動部、しかも下の学年の現役の子達。
私はキュッと手を握って見守った。
「位置について、よーい……」
『パーン!』
走り出した要くんは、スタートから群を抜いて早く100mの距離をあっという間に走り抜けた。
もちろん一着で。
要くんは走る姿勢から綺麗で、風を纏ったように軽やかに走り抜けた。
そして、やっぱりかなり早く走ったようなのに息が上がるような状態にはなっておらず一緒に走ったメンバーと話しつつ着順に並ぶ所へと移動して行った。
「松島先輩、すごいカッコイイ!!」
「ほんとだよね! イケメンで運動神経抜群とかカッコイイしか言えないわ!!」
下級生女子達が興奮冷めやらぬ表情と声で話しながら、各自のカラーの待機場所へと戻っていく。
その流れに乗りつつも、私も要くんが走り抜けていった姿を思い返していた。
本当に羨ましいくらいかっこいいなんて……。
女子が騒ぐのも分かる気がしたのだった。
そうして、日菜子の二人三脚も応援して、さらに綱引き、障害物競走を応援し終わると午前の部が終了。
お昼の時間になる。
各自、学食やパン販売やお弁当持参の子達など散り散りになりつつお昼休憩だ。
私は大きめのレジャーシートを持参してきたので、校庭の一角の木陰になる所に場所を確保していた。
障害物競走を終えた要くんと蒼くんがこちらに気づいて、走って来る。
「ふたりともお疲れ様。お昼にしよう」
そう誘うとふたりも靴を脱いでレジャーシートに座る。
私は日菜子、茜、蒼くん、要くんに取り皿とお箸を置くと大きい二段の重箱を開けた。
「わ! すごい豪華!」
開けたお弁当を見て日菜子が声を上げる。
運動会の定番と言える物を詰めてきた。
サラッと言われて、聞いてから理解すると目を見開いて驚いてしまう。
「蒼くんJリーグのチームに入るの?」
「まだ、わかんないよ。結果次第じゃないかな? 一応だから進学の予定で俺も指定校推薦貰う予定」
みんな、それぞれ先が決まってきているんだな。
ちょっぴり羨ましくなった。
「有紗は?もちろん進学だよね?」
日菜子の笑顔に、私は少し考えてから答える。
「うん、一応その予定」
そう、私も進学はする。
ただし、普通の専門学校とはいえない特殊な進学先の予定だ。
詳しくは言わないけれど……。
そこは上手く笑顔で交わしたのだった。
新学期がスタートするとあっという間に時間が流れていく。
体育祭の練習も佳境で、各々出場する競技の練習もかなり進んだ。
日菜子は綱引きと二人三脚にリレー。
蒼くんと要くんは綱引き、騎馬戦、障害物競走にリレーだ。
ふたりはかなり運動神経が良いので、体育祭ではクラスの主戦力だ。
目玉競技への参加が多い。
なにしろスタミナとスピードが出せるふたりだから、かなりクラス全体から当てにされている。
「あんま、休みがない」
ボソッと呟いていたのは要くん。
この暑い中これだけの競技に出るのは大変だろう。
ちょっと心配ではある。
そうして、迎えた体育祭は晴天に恵まれて朝から暑い。
グラウンドに集められて話す中でも、熱中症に気をつけるように、水分補給はしっかりと等と言う体育の担当教師の話を聞いて準備運動が終われば、各自クラスの集まる色の所へと移動。
今年の私たちのクラスは赤。
各学年8クラスあるので、色は四色に分けられる。
赤、白、青、黄の四カラーだ。
各学年二クラスがひとつのカラーに振り分けられるので、各カラーに六クラス分の生徒が居るのでカラー毎の範囲には結構な数の生徒が居る。
蒼くんと要くんは下級生に囲まれ始めた。
さすが、校内で人気のふたりだ。
下級生なんて普段はそう交流もないので、今日は滅多にないチャンスなのだ。
この前までは穏やかにさすがふたりは人気者だな、なんて見ていられたのに……。
私の気持ちに変化があったから?
今日は下級生に囲まれている要くんを見ると、モヤモヤとした気分になる。
それを振り払うように首を振っているところに声がかけられる。
「なに、首なんか振っちゃって。ほら、こっち来な!」
声を掛けてきたのは、茜だ。
今回の運動会は茜のクラスと同じ色なので、待機場所が一緒だった。
「茜、なにするの?」
「そんなの、遊ぶに決まっているじゃない」
それはものすごく、いい笑顔の茜に私は捕獲されたのだった。
それどこから持ってきたの? という道具が出され、あっという間にまたも髪型やら顔やらいじられる。
今日はサイドに髪をまとめて、ゆるく三つ編みにされた。
更に顔にはナチュラルメイクをされた。
それを見ていた同学年の女子達が感嘆の声を上げる。
「小山さん! 凄く上手いね!」
「汐月さん、羨ましい! 私もやってもらいたい!」
茜はニッコリ笑うと、こう声をかけた。
「メイクは厳しいけど、ヘアアレンジならやるよ」
茜のその言葉に女子が一気にテンションが上がる。
そして、結構な数の女子がお願いに来ていたが茜はとっても手際よくヘアアレンジをしては送り出した。
どの子も可愛らしく、それでいてその子に合うアレンジになっている。
茜はやっぱり美容師の素質があるなと、見ていて思ったのだった。
私は三つ編みに、日菜子は茜に可愛らしいアレンジのあるポニーテールにしてもらっている。
両サイド編み込みを入れたポニーテールは可愛い。
「茜ちゃん、本当に器用だよね! 私、不器用だから普通に結ぶだけで精一杯だよ」
日菜子は確かにそんな感じだから、ゴムを可愛いのを集めていると前に言っていた。
その中からセレクトして今日は茜が結んであげていた。
今日は花柄の可愛いシュシュで纏めている。
「ありがとう。でも、このアレンジも可愛いシュシュやらゴムやらあってこそだからね。女子はみんな可愛いものに目がないよね」
茜の言葉に、私と日菜子含め周りの女子みんなが頷いていた。
可愛いは正義である。
そうして話しているうちに、まず日菜子が出る二人三脚への出場選手の呼び出しがかかり、出る子達が移動して行った。
「水木くんと松島くんは、短距離走も出るの?」
今グラウンドで始まったのは、男子100m走だ。
「うん、うちのクラス体力テストの結果で競技に選出されていて。ほら、ふたりは大体どの項目も出来が良いから避けられなかったみたいでね」
私が濁しつつ言うと、茜も察したらしい。
「あぁ。始ちゃんが担任だし、ふたりは逃げられないか……」
「そういう事」
うちのクラスの担任の三浦先生は、こういった行事に熱心を通り越して熱血である。
勝ちに行く気満々でメンバーを集め決めていたので、蒼くんと要くん、日菜子など運動神経のいい体育会系メンバーは出場枠にどんどん入れられてしまった感じだ。
「それは、運動部関連の生徒は不幸だったわね」
苦笑いで言う茜は運動好きの基本インドア派だから、出るのは女子全員参加の棒引きだけらしい。
やれば出来るのにもったいないことだ。
日菜子はそれに綱引き、二人三脚、リレーだから出るのが多い。
蒼くんと要くんも短距離走、障害物競走、リレー、騎馬戦なのだから。
私はそろそろ走り出すふたりの応援に席を立った。
見やすいようにと移動すれば、既にグラウンドの競技するそばには女子が大勢いる。
そして、たくさんの声が飛んでいる!
「きゃー、松島先輩! 頑張って!」
「水木先輩、負けないで!」
女子達の黄色い声が、そこかしこから上がってくる。
主に下級生の女子だ。
同学年の子達は慣れもあり落ち着いているし、蒼くんには彼女の日菜子が居るのがデフォになったのでそう騒がれない。
要くんについても同じ。
騒がれるのが苦手なのはみんな知っているし、うちの学年は何人か既にふたりに撃沈した話は有名になっているのでそう騒がないのだ。
それに三年生にもなれば、各々相手がいたり、受験勉強に集中したりとそう恋愛にキャーとか言わなくなったみたい。
大人になるってこういうこと? なんて、ちょっと思ってみたりする。
思考に意識を飛ばしているうちに、まずは蒼くんの走る順番が来た。
「位置について、よーい」
『パーン!』
陸上用のピストルの音がすると、一気に駆け出す集団。
そこから一歩先に出たのは蒼くん。
そのままぐんぐんとスピードを上げて、一着でゴール。
全力疾走だと思ったのに、蒼くんはあまり息を乱していない。
にこやかに二着でゴールした陸上部の子と話している。
最終走者の組で要くんが出てきた。
並んでいるのはどの子も運動部、しかも下の学年の現役の子達。
私はキュッと手を握って見守った。
「位置について、よーい……」
『パーン!』
走り出した要くんは、スタートから群を抜いて早く100mの距離をあっという間に走り抜けた。
もちろん一着で。
要くんは走る姿勢から綺麗で、風を纏ったように軽やかに走り抜けた。
そして、やっぱりかなり早く走ったようなのに息が上がるような状態にはなっておらず一緒に走ったメンバーと話しつつ着順に並ぶ所へと移動して行った。
「松島先輩、すごいカッコイイ!!」
「ほんとだよね! イケメンで運動神経抜群とかカッコイイしか言えないわ!!」
下級生女子達が興奮冷めやらぬ表情と声で話しながら、各自のカラーの待機場所へと戻っていく。
その流れに乗りつつも、私も要くんが走り抜けていった姿を思い返していた。
本当に羨ましいくらいかっこいいなんて……。
女子が騒ぐのも分かる気がしたのだった。
そうして、日菜子の二人三脚も応援して、さらに綱引き、障害物競走を応援し終わると午前の部が終了。
お昼の時間になる。
各自、学食やパン販売やお弁当持参の子達など散り散りになりつつお昼休憩だ。
私は大きめのレジャーシートを持参してきたので、校庭の一角の木陰になる所に場所を確保していた。
障害物競走を終えた要くんと蒼くんがこちらに気づいて、走って来る。
「ふたりともお疲れ様。お昼にしよう」
そう誘うとふたりも靴を脱いでレジャーシートに座る。
私は日菜子、茜、蒼くん、要くんに取り皿とお箸を置くと大きい二段の重箱を開けた。
「わ! すごい豪華!」
開けたお弁当を見て日菜子が声を上げる。
運動会の定番と言える物を詰めてきた。