彼女と初めて言葉を交わしたのは、大学に入学してから四か月ほど経った頃だったと思う。蝉達が短い生涯を無駄にしないように、命の限りを声に変えて自分を表現する季節。僕は蝉達に、少なからず共感の念を抱いていた。
彼女は入学当初から、ずっと一人で行動していた。
僕はそんな彼女を密かに目で追っていた。
「ねえ、あなた…名前は?」
それが、彼女の最初の言葉だった。
「僕は高木悠馬」
僕は視線を彼女の肩口に落として答えた。
「いい名前ね。とても素敵な響き。――私は紗希、倉本紗希」
「どうして、僕なんかに声をかけたの?」
僕は絵に対する情熱は誰にも負けていないと自負していたが、容姿や雰囲気に関しては、人並み以下だと常々思っていた。
「あなた、何か持ってそうだったから。私、そういうの何となくわかるんだ」
僕は彼女の顔を訝しげに見ながら、とりあえず、納得した表情をした。
彼女は入学当初から、ずっと一人で行動していた。
僕はそんな彼女を密かに目で追っていた。
「ねえ、あなた…名前は?」
それが、彼女の最初の言葉だった。
「僕は高木悠馬」
僕は視線を彼女の肩口に落として答えた。
「いい名前ね。とても素敵な響き。――私は紗希、倉本紗希」
「どうして、僕なんかに声をかけたの?」
僕は絵に対する情熱は誰にも負けていないと自負していたが、容姿や雰囲気に関しては、人並み以下だと常々思っていた。
「あなた、何か持ってそうだったから。私、そういうの何となくわかるんだ」
僕は彼女の顔を訝しげに見ながら、とりあえず、納得した表情をした。