3対2!

 一つローテが回って柏手のサーブは四葉。ブロックを打ち抜けなったストレスは残るものの、1発目のドシャットの借りをしっかり返済した四葉のモチベは高い。このテンションならサーブも期待できそうです。

「四葉先輩、ナイッサー」

 え? あれ? 四葉先輩今、私を避けなかった? なんか目を合せないようにしているのがアリアリです! あれね、『先輩のスパイク、好きですっ!』ってあれね?! どこがいけなかったっていうんです??


 本人の思い違いで、そう言ったつもりになってるなんて良くあることではある……。


 私の心配を他所に、四葉のサーブが黎明陣内に打ち込まれる。これまでの試合展開から、勝手に強打をイメージしていた流れから一転させ、前へと落して揺さぶっていく。
 黎明も慌てずレシーブするも乱れは残す。

「51来るよ!」

 平行からのレフトスパイクに3枚のブロックが付く。柏手(うち)の最もブロックが強いローテ……その3枚の壁を操るのはMB唯一パイセン、その速さ、さすがと言えます。

 因みに51とは『スロット5』(* ゾーンブロックシステムにおけるネットの端から端までを9つのスロットに分けたときの番号と記号)、『テンポ1』(* スパイカーがトスを基準に助走を始めるテンポ)の意ですね。

「前、ケア任せた」

 ブロックが飛んだ瞬間だった。今度は八千が声だけを残して動き出す。次というにはあまりにも短い時間……ボールがブロックに当たる音と共にエンドライン外フリーゾーンへと飛び出していた。

「ワンチッ!」
「任せて!」

 恐らく八千は、『いつものキルブロック(シャットアウト)狙いの腕の出し方ではなく、ワンタッチ(ソフトブロック)狙いの唯一パイセンの意図を素早く理解』したのだろう。八千が走る、一歩目が早い。

 ドシャットできなくない3枚の壁の集まりは速かった。なので黎明はブロックアウトに切り替えた。だから唯一はソフトブロックにブロックを変化させた。そんな攻防戦に思えた。攻めも攻めたり、守りも守ったりと言った感じか……。
 この攻防の功労者はやはり八千であろう、見事にボールを拾いきった。この2段トスを託すのは……

「四葉先輩」

 バックアタック!


 他所のチームの大砲のようなバックアタックとは一味違う、ライフル狙撃のような鋭い一撃。
 ブレイクだ!