オリヴァは、ルークに案内された
レッスンスタジオに向かっていた。
アシェルの自己紹介を終えた後、
それぞれの練習を行うようにと
マイクロチップに地図を送信されていた。
株式会社Spoonの会社から徒歩10分に
あると表示されている。
オリヴァの担当はドラムだった。
元々、和太鼓はマスターしていたが、
ドラムは今回初めてだった。
リズムを刻むのは好きだった。
音楽活動をしていたわけじゃない。
ただ、幼少期から習い事で
たまたまやっていた和太鼓を活かせるのでは
ないかというボスの提案だった。
全然、太鼓は太鼓でも数が多い。
できるか不安だった。
玄関のドアを開けた。
ドラムのレッスンスタジオ。
鏡張りの部屋があった。
実際は狭いと感じる部屋は鏡で広く見える。
真ん中にドラムセットが置かれている。
講師の先生はどこかとあたりを見渡すが、
変な音だけ響いている。
たんたんたんと一度鳴ったかと思ったら
すぐにまたたんたんたんとなった。
この音、何か聞いたことがあるような。
オリヴァは音のする方へ向かった。
よく見ると、
こぐまのトンプーと名前が書いてある
おもちゃが必死に何度も太鼓を叩いては
笛を吹く動作をしている。
「まさか、これが講師じゃないよな?」
オリヴァがおもちゃを持ち上げて、ジロジロと見る。
「おい、触るんじゃない。」
「うわ、しゃべった。」
オリヴァはびっくりして、こぐまのおもちゃを落としてしまう。
横になっても、まだ動き続けている。
後ろを振り返るとフクロテナガザルがそこにはいた。
「それが教えるわけないだろ。」
「で、ですよね。」
フクロテナガザルは落ちたおもちゃを
拾った。
「参考までに置いていただけだ。」
「そ、そうですか。」
「新入りだろ?
ドラムを覚えるために
ここにきたんだろ?」
「は、はい。
ルークさんに教えられてきました。
オリヴァです。」
ポケットから、電子タバコを取り出し、
吸おうとする。
「あ、わりぃ。
仕事中だった。」
慌てて、出したものをしまった。
「俺は、ドラム講師のスティーブだ。」
「よ、よろしくお願いします。」
「早速だけど、どれくらいできるの?」
「和太鼓の経験はあるんですけど、
ドラムは初めてです。」
「和太鼓?? 全然違うだろ?」
「そうですよね。僕もそう思います。
太鼓の数が違うって言うか。」
スティーブはドラムスティックをズボンのポケットから回しながら取り出した。
「そしたら、デモストレーションって感じでやってみるわ。見てて。」
スティックを器用に回してながら、
リズムをとって、演奏し始める。
得意の16ビートだった。
スネアからたたいて、
ハイハットと
バスドラムを小刻みに鳴らして、
最後の締めにクラッシュシンバルで
終わらせた。
ハイハットで、16分音符を刻むのが基本パターンでスネアは原則として各小節の2拍目と4拍目とする。
さすがは講師のスティーブ。
鼻を擦って、自慢げに見せつけた。
「ま、こんなもんよ。
みっちり指導させてもらうから。」
「は!はい。」
何がなんだかわからないまま、オリヴァは、スティーブにドラムの叩き方からメトロノームを使って、リズムの取り方など基本から徐々に本格的指導を受けた。
アシェルと比べて、随分と本格的なレッスンとなっていた。
和太鼓の経験しかないオリヴァにとって、ほぼ初心者のようなもの。
ボスは厳しくやらないと
コンテストに間に合わないと踏んでいた。
***
「オリヴァさん、厳しくて嫌になったりしませんかね。」
ひよこのルークはライオンのボスにコーヒーを運びながら話す。
「…さんきゅ。たぶん、大丈夫だろ。
オリヴァがやってた和太鼓クラブも
相当厳しいところだったらしいから、
それで県大会に出場するくらいで、
頑張ってたみたいだからな、
厳しいのには慣れてるだろ。」
ボスはズズっとコーヒーを飲むと熱かったようでふーふーと冷ました。
「…だといいんですけどねー。
そういや、例の女の子は
どうなりました?」
「あー、あの子ね。
交渉してるんだけども、
なかなか首を縦に振らないんだよ。
ったく、女の子って言ってもさ、
動物でもないし、
人間でもないじゃない。
妖精でしょう?
チャンス与えたいんだけどね。
引きこもってるのよ、お家で。
ショックが大きかったのかな。」
ルークは空中をパタパタを飛んで考えた。
「そしたら、
誰かと一緒に交渉に行きますか。
と言っても、
行ける人って決まってるんですけどね。」
「あぁ、俺は
もう嫌われてる可能性が高いからな。
よろしく頼むわ。」
「了解です。」
ルークは背中に小さなリュックを背負うと
外へと飛んでいった。
ボスは、テーブルの上にある
やりかけていたパズルの続きを
やり始めた。
ピースを繋ぎ合わせたら、
1枚のイラストが完成する。
今やっているロックバンドも
メンバーというパズルを合わせないと
始まらない。
でこぼこしているピースをくるくる
まわしては次々と当てはめていく。
パズルのように
うまく行けばいいのにと願った。
窓の外を覗くと、太陽がギラギラと輝いて
大きな入道雲ができていた。
アゲハチョウが目の前を通り過ぎていく。
青空を飛行機が大きな音を立てて
飛んでいくのが見えた。
レッスンスタジオに向かっていた。
アシェルの自己紹介を終えた後、
それぞれの練習を行うようにと
マイクロチップに地図を送信されていた。
株式会社Spoonの会社から徒歩10分に
あると表示されている。
オリヴァの担当はドラムだった。
元々、和太鼓はマスターしていたが、
ドラムは今回初めてだった。
リズムを刻むのは好きだった。
音楽活動をしていたわけじゃない。
ただ、幼少期から習い事で
たまたまやっていた和太鼓を活かせるのでは
ないかというボスの提案だった。
全然、太鼓は太鼓でも数が多い。
できるか不安だった。
玄関のドアを開けた。
ドラムのレッスンスタジオ。
鏡張りの部屋があった。
実際は狭いと感じる部屋は鏡で広く見える。
真ん中にドラムセットが置かれている。
講師の先生はどこかとあたりを見渡すが、
変な音だけ響いている。
たんたんたんと一度鳴ったかと思ったら
すぐにまたたんたんたんとなった。
この音、何か聞いたことがあるような。
オリヴァは音のする方へ向かった。
よく見ると、
こぐまのトンプーと名前が書いてある
おもちゃが必死に何度も太鼓を叩いては
笛を吹く動作をしている。
「まさか、これが講師じゃないよな?」
オリヴァがおもちゃを持ち上げて、ジロジロと見る。
「おい、触るんじゃない。」
「うわ、しゃべった。」
オリヴァはびっくりして、こぐまのおもちゃを落としてしまう。
横になっても、まだ動き続けている。
後ろを振り返るとフクロテナガザルがそこにはいた。
「それが教えるわけないだろ。」
「で、ですよね。」
フクロテナガザルは落ちたおもちゃを
拾った。
「参考までに置いていただけだ。」
「そ、そうですか。」
「新入りだろ?
ドラムを覚えるために
ここにきたんだろ?」
「は、はい。
ルークさんに教えられてきました。
オリヴァです。」
ポケットから、電子タバコを取り出し、
吸おうとする。
「あ、わりぃ。
仕事中だった。」
慌てて、出したものをしまった。
「俺は、ドラム講師のスティーブだ。」
「よ、よろしくお願いします。」
「早速だけど、どれくらいできるの?」
「和太鼓の経験はあるんですけど、
ドラムは初めてです。」
「和太鼓?? 全然違うだろ?」
「そうですよね。僕もそう思います。
太鼓の数が違うって言うか。」
スティーブはドラムスティックをズボンのポケットから回しながら取り出した。
「そしたら、デモストレーションって感じでやってみるわ。見てて。」
スティックを器用に回してながら、
リズムをとって、演奏し始める。
得意の16ビートだった。
スネアからたたいて、
ハイハットと
バスドラムを小刻みに鳴らして、
最後の締めにクラッシュシンバルで
終わらせた。
ハイハットで、16分音符を刻むのが基本パターンでスネアは原則として各小節の2拍目と4拍目とする。
さすがは講師のスティーブ。
鼻を擦って、自慢げに見せつけた。
「ま、こんなもんよ。
みっちり指導させてもらうから。」
「は!はい。」
何がなんだかわからないまま、オリヴァは、スティーブにドラムの叩き方からメトロノームを使って、リズムの取り方など基本から徐々に本格的指導を受けた。
アシェルと比べて、随分と本格的なレッスンとなっていた。
和太鼓の経験しかないオリヴァにとって、ほぼ初心者のようなもの。
ボスは厳しくやらないと
コンテストに間に合わないと踏んでいた。
***
「オリヴァさん、厳しくて嫌になったりしませんかね。」
ひよこのルークはライオンのボスにコーヒーを運びながら話す。
「…さんきゅ。たぶん、大丈夫だろ。
オリヴァがやってた和太鼓クラブも
相当厳しいところだったらしいから、
それで県大会に出場するくらいで、
頑張ってたみたいだからな、
厳しいのには慣れてるだろ。」
ボスはズズっとコーヒーを飲むと熱かったようでふーふーと冷ました。
「…だといいんですけどねー。
そういや、例の女の子は
どうなりました?」
「あー、あの子ね。
交渉してるんだけども、
なかなか首を縦に振らないんだよ。
ったく、女の子って言ってもさ、
動物でもないし、
人間でもないじゃない。
妖精でしょう?
チャンス与えたいんだけどね。
引きこもってるのよ、お家で。
ショックが大きかったのかな。」
ルークは空中をパタパタを飛んで考えた。
「そしたら、
誰かと一緒に交渉に行きますか。
と言っても、
行ける人って決まってるんですけどね。」
「あぁ、俺は
もう嫌われてる可能性が高いからな。
よろしく頼むわ。」
「了解です。」
ルークは背中に小さなリュックを背負うと
外へと飛んでいった。
ボスは、テーブルの上にある
やりかけていたパズルの続きを
やり始めた。
ピースを繋ぎ合わせたら、
1枚のイラストが完成する。
今やっているロックバンドも
メンバーというパズルを合わせないと
始まらない。
でこぼこしているピースをくるくる
まわしては次々と当てはめていく。
パズルのように
うまく行けばいいのにと願った。
窓の外を覗くと、太陽がギラギラと輝いて
大きな入道雲ができていた。
アゲハチョウが目の前を通り過ぎていく。
青空を飛行機が大きな音を立てて
飛んでいくのが見えた。