その日の夜、夢を見た。
小さい頃の俺が、テレビの前に立っている。
母さんから「テレビ近いよ」と言われても無視。
無視というか、意識がテレビの中へと向かい、聞こえていない様子だ。
呆れる母さん。
そんな母さんから缶ビールを受け取り、わざわざコップに移し替えて飲む父さん。
そして、テレビの中のロングヘアの人物に夢中の自分。
そんな家族の生活を、高校生の自分が俯瞰で見ている。
そんな夢だった。
「ねぇ、ぼくも髪伸ばしたい」
テレビから振り返り、両親へつぶやく自分。
母さんは首を横に振った。
「だめよ」
「なんで?」
俺の問いかけに答えたのは、父さんだった。
「だって、お前女じゃないだろ?」
何気ない日常のたった一言。
言った本人だってすでに忘れているであろう一言。
この一言で、俺は生まれて初めて自分の性別を認識した。
俺は女じゃない。
だから、男。……なのか?
それからというもの、俺の人生にはある違和感がつねにつきまとった。
たとえるなら、シャツのボタンを掛け違っていたり、シャツの表裏が逆だったり。
そんな感じの違和感。
それは他人に言われるまでは気づかない。
でも、気づいてからは気になって仕方がない。
恥ずかしくて、直そうと思っても、気がついたらまたボタンを掛け違っている。
男という性別と自分。女という性別と自分。世の中と自分。
いつもどこかずれている感覚が、心の奥底にあった。
だからこそ、立花のような存在がまぶしくて仕方がなかった。
立花の部屋は完全に女子の部屋だった。
置いてある家具が、雰囲気が、匂いが、女子のそれだった。
一度も自分の性別に迷いを覚えていない存在と一緒に居ることが耐えられなかった。
俺の腕をつかむ立花の小さい手。
俺が振り払うだけで、簡単に転んでしまう立花が、どうしたって本物の女子で、そんな立花を突き飛ばせてしまう俺はやっぱりどうしたって男の身体で。
そんな自分が性別に迷うこと自体、おこがましく思えて。
だからって、俺は女になりたいわけじゃない。
男でありたいわけじゃない。
じゃあ俺は、どっちになりたいんだ。
どっちだと、思われたいんだ。
俺は、なんなんだ。
目が覚めると、寝汗でシャツがぐっしょりと濡れていた。
小さい頃の俺が、テレビの前に立っている。
母さんから「テレビ近いよ」と言われても無視。
無視というか、意識がテレビの中へと向かい、聞こえていない様子だ。
呆れる母さん。
そんな母さんから缶ビールを受け取り、わざわざコップに移し替えて飲む父さん。
そして、テレビの中のロングヘアの人物に夢中の自分。
そんな家族の生活を、高校生の自分が俯瞰で見ている。
そんな夢だった。
「ねぇ、ぼくも髪伸ばしたい」
テレビから振り返り、両親へつぶやく自分。
母さんは首を横に振った。
「だめよ」
「なんで?」
俺の問いかけに答えたのは、父さんだった。
「だって、お前女じゃないだろ?」
何気ない日常のたった一言。
言った本人だってすでに忘れているであろう一言。
この一言で、俺は生まれて初めて自分の性別を認識した。
俺は女じゃない。
だから、男。……なのか?
それからというもの、俺の人生にはある違和感がつねにつきまとった。
たとえるなら、シャツのボタンを掛け違っていたり、シャツの表裏が逆だったり。
そんな感じの違和感。
それは他人に言われるまでは気づかない。
でも、気づいてからは気になって仕方がない。
恥ずかしくて、直そうと思っても、気がついたらまたボタンを掛け違っている。
男という性別と自分。女という性別と自分。世の中と自分。
いつもどこかずれている感覚が、心の奥底にあった。
だからこそ、立花のような存在がまぶしくて仕方がなかった。
立花の部屋は完全に女子の部屋だった。
置いてある家具が、雰囲気が、匂いが、女子のそれだった。
一度も自分の性別に迷いを覚えていない存在と一緒に居ることが耐えられなかった。
俺の腕をつかむ立花の小さい手。
俺が振り払うだけで、簡単に転んでしまう立花が、どうしたって本物の女子で、そんな立花を突き飛ばせてしまう俺はやっぱりどうしたって男の身体で。
そんな自分が性別に迷うこと自体、おこがましく思えて。
だからって、俺は女になりたいわけじゃない。
男でありたいわけじゃない。
じゃあ俺は、どっちになりたいんだ。
どっちだと、思われたいんだ。
俺は、なんなんだ。
目が覚めると、寝汗でシャツがぐっしょりと濡れていた。