【2119年 現代】
時間というものは、区切られて初めて実感できる。
上から下へと流れていく街の眺望が、最近読んだ本の一節を思いださせた。
このあたりは百階越えのビルが多く建築されているが、それでも街の景観は計算された美しさを保っており、幾千の光が街全体をより華やかにしている。
エレベーターは駆動音をほとんど立てず、緩やかに流れていく景色を延々とつないでいく。建築工学がいくら進歩したといっても193階に到達するまでには時間がかかる。外の風景をぼんやり眺めていると、無機質な音が腕時計から流れた。
「現在19時55分です。次のスケジュールまでおよそあと5分。現在地から目的地まではおよそ1分で到着予定……」
途中までしか流れていない音声案内を止める。旧式のウェアラブル端末だ。このまましゃべらせ続けるとコイツは、これからの天気や今日歩いた歩数、心拍数まで永遠にしゃべり続けるのだ。脳の思考を読み取り、知りたい情報だけを瞬時に教えてくれるモデルもあったが機能なんてほとんど気にせずに買ったものだから、少し使い勝手が悪い。
そう思っているうちに、階数表示は125を過ぎた。
目的階に到着すると、エレベーターの前に見知らぬ金髪の男が立っていた。白衣を着ていないが、ネームプレートを見るとどうやらここの機関の関係者のようだ。
俺を見るなり人懐っこい笑顔で「晚上好」と音声で挨拶された。
心で思ったことはすべて伝わる現代で、発話すること自体が珍しいのに、中国語を話すとは。
そう思いつつも「晚上好」と返す。愛想のよさそうな人だし、このまま会話が続くかも知れない。中国語ってどんな感じだっけ。頭の隅っこに眠っている知識を呼び起こすも、気づけば男は俺が乗ってきたエレベーターにすでに乗り込んでいた。男は俺が振り返ったのに気づくと、またニコリと笑って手を振ってくる。「bonnenuit」男が最後にそういうとそのままエレベーターのドアは閉まり、起動音を立てずに下へ下へとくだっていく。確か今のはフランス語の「いい夜を」だっただろうか。フランス語はとっくの昔に消滅した言語だからか、腕時計をのぞいてみても翻訳機能は先ほどの中国語「こんばんは」しか表示されていなかった。
エレベーターホールを見渡すと、右側にドア、正面には無音のウォーターパネルがたちはだかっている。ノイズキャンセリングがされているせいだろうか、音圧の高さに耳がキンとなる。右側のドアには、所長室と書かれている。いまどきリアルな扉を作るなんて無駄だけれど、うちの研究機関では、面白がって物質的なものにこだわっている。ドアの前に立ってみても、うんともすんとも言わない。セキュリティの顔認証や指紋認証、静脈認証や生体オーラ認証はすべてレッドを示していた。ただの研究員である俺には開けることはできない。部屋の主である所長のエルドさんが開けてくれるのをジッと待つ。
あらゆる音が意図的に消された空間から見える地上は、とても穏やかで、現実感がなかった。ウォーターパネル越しのそれは、青や赤、緑の原色がゆるやかな流れで溶かされていく。そんな光景にしばらく見とれていると、ウォーターパネルに白衣を着た長身が映りこむ。
「あれ、ジュンー? もういるのかー?」
エルドさんの声が脳内に響く。
います、開けてください、と言う前に、ただの壁だと思っていたウォーターパネルが真っ二つに割れる。きらびやかな夜景を背に、相変わらず年齢には見合わない、少し長めの茶髪を揺らしたエルドさんが俺を出迎えた。
「お疲れ様です、エルドさん」
「声くらいかけてくれよなー。このエレベーター、起動音がまったくしないから来たかどうか分からないんだよ。まあ、座ってくれ」
そう小言を言いながら頭をポリポリと掻くエルドさんを尻目に、所長室へと入る。所長室は思ったより狭く、簡素な来客用の白いソファと電子テーブル、エルドさんのデスク、そして、エルドさんの趣味であるシレネの花が植えられた鉢が置いてあるだけだった。広さはあまりないかもしれないが、街全体を見渡せるはめ殺しの窓が存在感を出していた。俺は固く真っ白なソファに腰掛ける。エルドさんは向かいの席に腰掛けるわけでもなく、自らのデスク上に表示された通知を片付けながら「最近どうだ? プライベートは」と問いかける。
「別に、特に何もありませんよ。さっき珍しいフランス語を喋る方にお会いしたくらいです。そういえばエルドさんの知り合いですか?」
「ああ、あいつは俺の友人でな。お前と一緒で語学の勉強をしてたんだよ」
俺の質問に軽くかわしながら、続けて
「なんもないって友達と遊んだりしないのか~?」
「連絡はとりますが、特に会ったりとかは……。仕事が忙しいですから」
「そうか……なぁ、お前さ、大学で日本語専攻してたんだよな」
なんだか嫌な予感がして、はい、と言いよどんでいると目の前に履歴書が表示される。
《Jun・Bradley》
自分の名前の下にずらりと並ぶ学歴と経歴に確かに「日本語の研究で単位取得」とある。
言い訳はさせない、とでもいうようなエルドさんの悪い笑みに思わず固まってしまう。
どんな面倒事を任されてしまうんだろう。
「次のプロジェクトの被験者にならないか」
「……はい?」
数年前に「many unverses」と題されたプロジェクトがうちの研究機関(※国際時空研究機関リップル)で立ち上げられた。内容は「被験者の夢を、時空間を用いて叶える」というひどく曖昧なもの。ほとんどの研究員が相手にしなかったし、俺自身も忘れかけていた。しかし先月、リップルを司るマスターAIが次のプロジェクトとして指定したのが「many universes」だった。
「次のプロジェクトの被験者って、一般人から集めるんですよね。しかも、その被験者の夢を叶えるっていうバカげたあれ……ですよね」
「そのとおりだ。そして被験者は決定している。被験者の夢を叶えるためには、もう滅びてしまった『日本語』が必要なんだよ」
俺は怒りにも似た感情を抱いていた。科学的とはとても言えないプロジェクトに、否応なく参加させられそうになっていると感じたからだ。
「なあ、ジュン」
エルドさんは俺をまっすぐ見つめると、すこし笑みを浮かべた。
「日本語を扱えるからって理由でお前を推薦したんじゃないんだぞ。お前はよく仕事をやってくれる。早いし、正確だし、合理的だ、でも、向上心がない。研究に対する熱意を感じないんだよ。……とりあえず、これを聞いてくれ」
そう言うと電子テーブルから心声データを取り出し、再生をはじめた。
「今後の調査、研究発展のためここから先の会話を録音させていただきますがよろしいでしょうか?」
「わかりました。よろしくお願いいたします」
「ありがとうございます。それでは白河時雫さん、あなたの過去に叶えたかった夢をお答えください」
「夢というか……。私のようなおばあさんが言うのは恥ずかしいですが、学生の時にもっと恋愛を楽しんでいればと感じることはあります。このような夢でも、大丈夫なのでしょうか?」
「もちろん、構いませんよ。でしたら、『学生時代の自分に恋人を作ってもらう』というのが今回我々に依頼したい夢ということでよろしいですね?」
「はい……そのようなことが出来るのでしょうか?」
「……それに近いことなら可能性があります。アインシュタインのブロックユニバース説というのをご存じですか?」
「存じ上げません」
「ではまずその説明から……。ブロックユニバース説とは『無数の可能性を生きる自分がいる』ということです」
「それは……どういった意味でしょう?」
「じゃあ例えば……」
「はい」
「あなたがこの実験の広告を見なかったとしましょう。すると今頃ご自身は何をされていると思いますか?」
「わかりません……でも確実にここには来てないでしょうね」
「そうですよね、人生には様々な選択、可能性があるんです。これから我々が十七歳のあなたの元に『恋人』という存在を届けます。あなたの人生の中に『恋人と出逢う自分』というイレギュラーな可能性が生まれるのです」
「はぁ……」
「その『恋人と出逢った自分』の記憶……いや、『可能性』を見ることが出来るのです
「過去を書き換えるということですか?」
「正確に言えば、過去を書き足すということです。可能性が増えるに過ぎません」
「は、はぁ……」
「心配は不要です。いまのあなたが変わることはありません。別のユニバースでのあなたが幸福になっていることはあるかもしれませんが。ところで、恋愛をもっと楽しめばよかった……とのことですが具体的にお伺いしても?」
「はい……。中学生の頃に両親をなくして、その時は恋愛どころではありませんでした。高校に入学してからは祖父とふたり暮らし。祖父が個人経営の牛舎をしていたので放課後は手伝いばかりしていました。近くに男の子がいなかったわけでもないし、私を好きになってくれた人もいました……でも」
エルドさんは途中で心声データを停止した。
「ジュンには、この被験者の過去へ行って、恋人を作る手助けをしてほしいんだよ。いまから約80年前の2040年の日本へとタイムリープして──」
俺はエルドさんの話を遮る。
「お断りします。そもそもタイムリープはまだ未確立の技術で、安全という段階にありません。数例の成功があったという程度です。だいたい、なぜ俺が、見ず知らずの被験者の夢を叶えるために日本に行かなくちゃならないんですか」
当然の主張をしたつもりだったが、エルドさんは悲しそうな顔をして、俺を見つめるばかりだった。
「そもそも、いま俺は九次元観測装置の研究が最終段階になってて、あと少しで……」
そこまで言って、これはもう決定されたことで、何をわめいても覆せない状況なのだということを悟った。エルドさんがプツンと消え、実体である警備兵たちが所長室へと雪崩れ込んできた。俺は両手両足をつかまれ、何もすることが出来なくなった。
時間というものは、区切られて初めて実感できる。
上から下へと流れていく街の眺望が、最近読んだ本の一節を思いださせた。
このあたりは百階越えのビルが多く建築されているが、それでも街の景観は計算された美しさを保っており、幾千の光が街全体をより華やかにしている。
エレベーターは駆動音をほとんど立てず、緩やかに流れていく景色を延々とつないでいく。建築工学がいくら進歩したといっても193階に到達するまでには時間がかかる。外の風景をぼんやり眺めていると、無機質な音が腕時計から流れた。
「現在19時55分です。次のスケジュールまでおよそあと5分。現在地から目的地まではおよそ1分で到着予定……」
途中までしか流れていない音声案内を止める。旧式のウェアラブル端末だ。このまましゃべらせ続けるとコイツは、これからの天気や今日歩いた歩数、心拍数まで永遠にしゃべり続けるのだ。脳の思考を読み取り、知りたい情報だけを瞬時に教えてくれるモデルもあったが機能なんてほとんど気にせずに買ったものだから、少し使い勝手が悪い。
そう思っているうちに、階数表示は125を過ぎた。
目的階に到着すると、エレベーターの前に見知らぬ金髪の男が立っていた。白衣を着ていないが、ネームプレートを見るとどうやらここの機関の関係者のようだ。
俺を見るなり人懐っこい笑顔で「晚上好」と音声で挨拶された。
心で思ったことはすべて伝わる現代で、発話すること自体が珍しいのに、中国語を話すとは。
そう思いつつも「晚上好」と返す。愛想のよさそうな人だし、このまま会話が続くかも知れない。中国語ってどんな感じだっけ。頭の隅っこに眠っている知識を呼び起こすも、気づけば男は俺が乗ってきたエレベーターにすでに乗り込んでいた。男は俺が振り返ったのに気づくと、またニコリと笑って手を振ってくる。「bonnenuit」男が最後にそういうとそのままエレベーターのドアは閉まり、起動音を立てずに下へ下へとくだっていく。確か今のはフランス語の「いい夜を」だっただろうか。フランス語はとっくの昔に消滅した言語だからか、腕時計をのぞいてみても翻訳機能は先ほどの中国語「こんばんは」しか表示されていなかった。
エレベーターホールを見渡すと、右側にドア、正面には無音のウォーターパネルがたちはだかっている。ノイズキャンセリングがされているせいだろうか、音圧の高さに耳がキンとなる。右側のドアには、所長室と書かれている。いまどきリアルな扉を作るなんて無駄だけれど、うちの研究機関では、面白がって物質的なものにこだわっている。ドアの前に立ってみても、うんともすんとも言わない。セキュリティの顔認証や指紋認証、静脈認証や生体オーラ認証はすべてレッドを示していた。ただの研究員である俺には開けることはできない。部屋の主である所長のエルドさんが開けてくれるのをジッと待つ。
あらゆる音が意図的に消された空間から見える地上は、とても穏やかで、現実感がなかった。ウォーターパネル越しのそれは、青や赤、緑の原色がゆるやかな流れで溶かされていく。そんな光景にしばらく見とれていると、ウォーターパネルに白衣を着た長身が映りこむ。
「あれ、ジュンー? もういるのかー?」
エルドさんの声が脳内に響く。
います、開けてください、と言う前に、ただの壁だと思っていたウォーターパネルが真っ二つに割れる。きらびやかな夜景を背に、相変わらず年齢には見合わない、少し長めの茶髪を揺らしたエルドさんが俺を出迎えた。
「お疲れ様です、エルドさん」
「声くらいかけてくれよなー。このエレベーター、起動音がまったくしないから来たかどうか分からないんだよ。まあ、座ってくれ」
そう小言を言いながら頭をポリポリと掻くエルドさんを尻目に、所長室へと入る。所長室は思ったより狭く、簡素な来客用の白いソファと電子テーブル、エルドさんのデスク、そして、エルドさんの趣味であるシレネの花が植えられた鉢が置いてあるだけだった。広さはあまりないかもしれないが、街全体を見渡せるはめ殺しの窓が存在感を出していた。俺は固く真っ白なソファに腰掛ける。エルドさんは向かいの席に腰掛けるわけでもなく、自らのデスク上に表示された通知を片付けながら「最近どうだ? プライベートは」と問いかける。
「別に、特に何もありませんよ。さっき珍しいフランス語を喋る方にお会いしたくらいです。そういえばエルドさんの知り合いですか?」
「ああ、あいつは俺の友人でな。お前と一緒で語学の勉強をしてたんだよ」
俺の質問に軽くかわしながら、続けて
「なんもないって友達と遊んだりしないのか~?」
「連絡はとりますが、特に会ったりとかは……。仕事が忙しいですから」
「そうか……なぁ、お前さ、大学で日本語専攻してたんだよな」
なんだか嫌な予感がして、はい、と言いよどんでいると目の前に履歴書が表示される。
《Jun・Bradley》
自分の名前の下にずらりと並ぶ学歴と経歴に確かに「日本語の研究で単位取得」とある。
言い訳はさせない、とでもいうようなエルドさんの悪い笑みに思わず固まってしまう。
どんな面倒事を任されてしまうんだろう。
「次のプロジェクトの被験者にならないか」
「……はい?」
数年前に「many unverses」と題されたプロジェクトがうちの研究機関(※国際時空研究機関リップル)で立ち上げられた。内容は「被験者の夢を、時空間を用いて叶える」というひどく曖昧なもの。ほとんどの研究員が相手にしなかったし、俺自身も忘れかけていた。しかし先月、リップルを司るマスターAIが次のプロジェクトとして指定したのが「many universes」だった。
「次のプロジェクトの被験者って、一般人から集めるんですよね。しかも、その被験者の夢を叶えるっていうバカげたあれ……ですよね」
「そのとおりだ。そして被験者は決定している。被験者の夢を叶えるためには、もう滅びてしまった『日本語』が必要なんだよ」
俺は怒りにも似た感情を抱いていた。科学的とはとても言えないプロジェクトに、否応なく参加させられそうになっていると感じたからだ。
「なあ、ジュン」
エルドさんは俺をまっすぐ見つめると、すこし笑みを浮かべた。
「日本語を扱えるからって理由でお前を推薦したんじゃないんだぞ。お前はよく仕事をやってくれる。早いし、正確だし、合理的だ、でも、向上心がない。研究に対する熱意を感じないんだよ。……とりあえず、これを聞いてくれ」
そう言うと電子テーブルから心声データを取り出し、再生をはじめた。
「今後の調査、研究発展のためここから先の会話を録音させていただきますがよろしいでしょうか?」
「わかりました。よろしくお願いいたします」
「ありがとうございます。それでは白河時雫さん、あなたの過去に叶えたかった夢をお答えください」
「夢というか……。私のようなおばあさんが言うのは恥ずかしいですが、学生の時にもっと恋愛を楽しんでいればと感じることはあります。このような夢でも、大丈夫なのでしょうか?」
「もちろん、構いませんよ。でしたら、『学生時代の自分に恋人を作ってもらう』というのが今回我々に依頼したい夢ということでよろしいですね?」
「はい……そのようなことが出来るのでしょうか?」
「……それに近いことなら可能性があります。アインシュタインのブロックユニバース説というのをご存じですか?」
「存じ上げません」
「ではまずその説明から……。ブロックユニバース説とは『無数の可能性を生きる自分がいる』ということです」
「それは……どういった意味でしょう?」
「じゃあ例えば……」
「はい」
「あなたがこの実験の広告を見なかったとしましょう。すると今頃ご自身は何をされていると思いますか?」
「わかりません……でも確実にここには来てないでしょうね」
「そうですよね、人生には様々な選択、可能性があるんです。これから我々が十七歳のあなたの元に『恋人』という存在を届けます。あなたの人生の中に『恋人と出逢う自分』というイレギュラーな可能性が生まれるのです」
「はぁ……」
「その『恋人と出逢った自分』の記憶……いや、『可能性』を見ることが出来るのです
「過去を書き換えるということですか?」
「正確に言えば、過去を書き足すということです。可能性が増えるに過ぎません」
「は、はぁ……」
「心配は不要です。いまのあなたが変わることはありません。別のユニバースでのあなたが幸福になっていることはあるかもしれませんが。ところで、恋愛をもっと楽しめばよかった……とのことですが具体的にお伺いしても?」
「はい……。中学生の頃に両親をなくして、その時は恋愛どころではありませんでした。高校に入学してからは祖父とふたり暮らし。祖父が個人経営の牛舎をしていたので放課後は手伝いばかりしていました。近くに男の子がいなかったわけでもないし、私を好きになってくれた人もいました……でも」
エルドさんは途中で心声データを停止した。
「ジュンには、この被験者の過去へ行って、恋人を作る手助けをしてほしいんだよ。いまから約80年前の2040年の日本へとタイムリープして──」
俺はエルドさんの話を遮る。
「お断りします。そもそもタイムリープはまだ未確立の技術で、安全という段階にありません。数例の成功があったという程度です。だいたい、なぜ俺が、見ず知らずの被験者の夢を叶えるために日本に行かなくちゃならないんですか」
当然の主張をしたつもりだったが、エルドさんは悲しそうな顔をして、俺を見つめるばかりだった。
「そもそも、いま俺は九次元観測装置の研究が最終段階になってて、あと少しで……」
そこまで言って、これはもう決定されたことで、何をわめいても覆せない状況なのだということを悟った。エルドさんがプツンと消え、実体である警備兵たちが所長室へと雪崩れ込んできた。俺は両手両足をつかまれ、何もすることが出来なくなった。