この世はもともと、神のものだった。
 現世(うつしよ)幽世(かくりよ)を守っていた神はあるとき、現世を守る役割を人間に与えることにした。
 神はまず、現世を四つに分断し、それぞれを守る人間を各地方から無作為に選んだ。そして、選んだ者たちにその土地を守れるだけの特別な力を与えた。
 現在、四神の役割を担っているのは、東を龍桜院(りゅうおういん)、西を白蓮路(びゃくれんじ)、南を朱鷺風(ときつかぜ)、北を玄都織(くろとしき)の四家である。
 人間離れした美しい容姿と力を持つ現人神(あらひとがみ)たちは、ひとびとの憧れであり、あやかしにとっては畏怖の対象であった。
 彼ら現人神には、いくつか掟があった。
 ひとつ、自らの命をかけて任された国を守ること。
 ふたつ、現人神となるときに伴侶を迎え、式典にはふたりそろって参加すること。
 そしてみっつ。
 伴侶は、必ず自身の守る土地から選ぶこと――。