河川敷は相変わらず涼しかった。

時折ひんやりとした風が吹き抜け、それもまた心地よい。

「えーと・・・・・・あそこか」

すると、私は自分の目を疑った。

あの二人が、そこにまた、居たのだ。

え、あ、まあ、そんなこともあるか。

内心バクバクしながら二人へと近づく。

あと1メートル、といったところで立ち止まると、茶髪を風になびかせる女の子と目が合った。

「・・・・・・?なにかご用ですか?」

女の子がきょとんとした表情を浮かべる。

「えーと。あ、その。実はさっきお二人の写真を勝手に撮ってしまって・・・・・・すみませんでした」

とりあえず素直に謝ろう。そう思い、ぺこりと頭を下げた。

「写真?僕たちの?」

本を片手に携えた男の子が、きらきらとした表情を浮かべる。

「はい」

「ええ!ぜひ見たいです」

男の子が人なつっこい笑顔で笑う。私は言われるがまま、封筒から写真を取り出し、二人に渡した。

「え!すごいきれいに撮れてる」

女の子が笑顔でそう言ったので、私はほっと胸をなで下ろした。

「もしかして写真部だったりします?」

男の子がじっと私を見つめる。私は照れくさくなりながら、「まあ、はい・・・・・・」と言った。

そうだ、と思い、私は口を開く。

「この写真、お二人に差し上げます。代わりに、約束してほしいことがあって」

「なんでしょう?」

男の子が首をかしげる。

私は至極真剣な表情をして、伝えた。

「今日は、絶対に川に入らないで」

語気をつよめた私に驚いたのか、男の子と女の子は顔を見合わせた。

そして彼らはうなずき合って、「わかりました」と言った。

「素敵な写真をありがとうございます」

女の子がぺこりと頭を下げる。

私もぺこりと頭を下げた。

あ、そうだ。せっかくだから、ヒマワリも渡そう。

そう思い、頭を上げたとき。

もう、男の子と女の子はいなくなっていた。

「・・・・・・」

きょろきょろと辺りを見回す。

けれど、やっぱり居ない。

「・・・・・・どうか、あの二人がしあわせで在りますように」

そうつぶやきながら、私はヒマワリを二本、橋の柱にもたれかからせるように置いた。