そして、寒い冬が過ぎ遂に春が来た。一年前からずっと待ち侘びていた事だ。
沢山桜が咲き誇るあの場所で信様と婚姻の儀を挙げている。
つららちゃんや紅葉くん、屋敷で働いてるあやかしに囲まれながら幸せな時を噛み締めていた。
赤い花柄の色打掛を着た私は桜色の花びらの雨を愛する龍神の夫と共に眺める。
初めてここに来た時に見た桜よりも美しく映っていた。
幸せすぎて少し怖くなってしまう。

「信。私、こんなに幸せでいいのかしら」
「いいに決まってる。もう苦しみなんかない。これからの陽子の人生は幸せだけだよ」
「それは信も同じですわ」

怖気付く私を信は優しく寄り添ってくれた。
玲奈に全てを奪われた時の私には想像できなかった未来。
愛する人に裏切られた離縁された私は、龍神という高貴な人に助けられ全てが変わった。
白鷺へと姿を変え、ずっと私のそばにいてくれた私の愛する人。

「愛しています。信。ずっとそばにいさせてください」
「俺も愛してるよ。陽子。絶対に離したりしないから。俺の愛しくて可愛い花嫁」

誓いを交わし私達は口付けをする。
私の髪にささっている紅珊瑚の簪が私達を祝福する様に桜と共に美しく輝いていた。