6
ジョナスの部下たちの横死させられた仇が取りざたされてから、三カ月ほどは何事もなかった。
少佐は参事会の選挙に出馬し、無事に当選。
祝賀会パーティーで「爆弾」が爆発して、集まっていた支持者たち数十名が死亡。それらは選挙のために妥協していた魔族ギャング。人間に紛れていた魔族二名は「特殊な剣」で切られて回復魔法による復活すら叶わず惨殺。
ジョナス大尉は清々しい顔で、さらに爆破トラップ魔法を起爆しようとするトラを制止した。これ以上の破壊は無駄で修理費用は経費や税金だから。「こいつもストレス溜まってそうだな」「はっちゃけたな」などと思いつつ、笑いをこらえた顔で首を左右し「そのあたりでやめとけ、もう十分だし建物の修理の手間がかかるから」と。
「囮役も、ご苦労。「反魔族の狂った過激派テロリストがいる(トラバサミの鉄仮面の、狂った魔法使いの好戦派が)。だが我々はそこまでの強硬策は望まない、現実的かつ賢明に君たち売国奴と妥協や取引しよう。その危険分子の情報を売ってやるから選挙協力しろ」って。
俺らのグループは「票で買収」されて護衛してやるって口実で騙して、こいつら逃がさないように周りを固めていた。アホだな、あとで全員皆殺しにするに決まってるだろ? フライングで殺してやろうか、何十回迷ったことか!」
「その剣、あんたが持っていたのか」
「これか? いつぞや「辻斬り」していた買収で成金貴族の武芸者を始末したときに手に入れたんだが。まさかお前の腕、これでやられたのか?」
ジョナスは「業物・魔術者殺し」を見せた。
装飾からして、たぶんあのときのものだ。
トラの切り落とされた右腕を接合できなかったのは、その魔剣の「回復魔法への阻害」という効能が原因。キチガイに刃物、バカとハサミ。
「そうだったのか。それにしたって、お前って魔術者では強い方なわけか?」
「戦いだけならそこそこやる方だろうが。戦術や肉弾戦の格闘も含めての総合力としては。
魔術者としての認定ランクは十二階級の上から六番目。ただ、広い意味での魔法能力がある人間の七八割くらいまでは八か七ランク止まりくらいだろうけど。半分は一生かかって九ランクにもなれるかどうかだろ、資質的に」
「だが? だったら魔術協会には、お前みたいなのが何千人も何万人もゴロゴロいるわけか。並以下の下っ端や弱い下手な奴らを入れたらもっと幾らでもいるのか。
戦闘の能力のこと言っているんだが。だったら、あいつらがどんだけサボって裏切りしてるのかってことになるが。お前と同レベルの奴が千人なり二千人なり積極的に軍やレジスタンスと一緒に魔族と戦っていたら、それだけでも悪くない戦力だし、戦局が変わるんじゃないのか?
能力のある奴が「いない・足りない」というよりも、魔術協会方針とか指導でわざと手を抜いたり協力拒否したり、戦わずに逃げまくってサボっているのか? それで魔族ギャングからご褒美の金や利益を得られるってことなのか?」
「その認識で、だいたい合っていると思う」
魔術協会のグループ・ネットワークは人間の魔法使い・魔術者の資質や能力がある人員や知識・ノウハウやデータ以外にも、魔術の資材や魔法効果のある武器や道具類なども大量に独占的に支配下に置いている。それが故意に戦わず、場合によっては政治的に駆け引きして、味方側の反魔族の政治家や警察・軍・レジスタンスに圧力や妨害すらしている。特殊なエリート党派意識はほとんど選民思想じみていて、自分たちを「第二の魔族」になぞらえたり憧れや共感するような風潮があって、そいつらが人間の魔法使い・魔術者たちを指揮・統制や指導して、人事権や地位ポストの推薦や指名権どころかランク付け・評価なども握っている。魔術者全般への影響は絶大で、裏を知っている者らの間では、それが人間陣営を対魔族戦争で劣勢にしている原因にも数えられている。
トラとジョナス大尉は苦い顔になる。
だがさっさと町を脱出して、山や森のレジスタンス拠点に行かなくては。もはや体裁上ではテロリストや犯罪者と大差がないからだ。
ほぼ同時に町中をゲリラ粛清で魔族ギャングに殺戮していた実行者は数十名くらいいるのだけれど、それらが全員逃げるわけではない。事後にも反魔族レジスタンスの戦力として防衛・威嚇・掃討する人員が町に残っている必要はある。あまりにもあからさまに殺しまくって(魔族やギャング側との)「裏協定」にも違反なやり方だから、誰かしら「こいつらがやりました、逃げました」という形式上の代表者が必要な次第である。
「ひとまず、最寄りのレジスタンス拠点に話は通してある。あっちの裏切り者どもの町のことは、いったんそっちに着いてからも改めて考えよう」
トラとジョナス大尉は森林地帯へと旅だった。
(三話へ続く?)
※携帯スマホで簡潔・要約的に書いてますw
1
「はあっ!」
レトは村の河原で能力解放(人狼変身)の練習。
気合いを入れれば、グリーンのローブに包まれた身体が一回り筋肉で膨れ、背丈も少し伸びるようだ。顔立ちは「狼」でなくレトリバーなのだが。
だんだんコントロールできるようになってきていて、突発的な偶然頼りでなく、自分の判断で変身できるようになったのは進歩か。
変身後の基本形態が二足歩行タイプであるために、そのまま人間の衣服を着用し続けられることや(膨張を考えてゆったりめに仕立て)、あのトラに貰った大剣などの人間用の武器を存分に使えるのは利点だろう。
彼の姉などは四足獣になってしまうために衣服が邪魔になり、移動速度が高く動物的な俊敏な戦い方ができる反面で、物理的に動物のような行動しかとれない(二足歩行・直立タイプに変身する練習もしているが上手くいかないそうだ)。「便利でいいね」と弟を羨んでいたが、姉の場合は付属の固定装備・先天の魔法が攻撃向きであるから、人間形態でもそれなりに強い。変身を必要とするのはよほどの強敵や窮地だけだろう。
(でも、ビジュアルがなあ。姉さんの狼姿は美々しいしかっこいいのに、僕はなんでこんな。どうして、耳垂れてるんだろう?)
流れる川面に映った、やたらと温厚で人懐こそうな己のレトリバーな狼男の顔。
深刻というわけなないが、心に引っかかるものがある。無念と苦悩のような何か。
気をとられて油断していたのは村だからか。
接近してくる二人に気付かず。
見知った顔の、ドワーフの戦士娘とエルフの魔法使いのお姉さんがこちらに歩いてくる。葦の繁みにしゃがみ込む。意図を察したときには手後れで、二人して「お花摘み」。
(まずい。用足し中に出くわしたら、あとで面倒そうだ)
逃げるタイミングを逸してしまった。
こちらに気付いているのか、おそるおそる少しだけ頭を巡らせて様子を窺う。目敏くこっちを見つけたのはドワーフ娘。同世代で気が強い女の子だった(よく耳をからかわれ)。
聞こえてくる霊妙音、漂い来る異臭。関与や詮索すべきでない。しかし走り出して逃げるには手後れ。下手に動いたらそれでバレる。
下品なラッパ音。
レトは犬のおすわり姿勢で硬直中。
「あれ、あんな犬いたっけ?」
「森から迷い込んだんじゃない?」
どうやら、繁みで身体が隠れているので、犬だと思っている?
よし、犬のふりをしてやり過ごそう。
そう腹をくくりかけた直後に、背後から両耳をはしっ!とつかみ摘ままれた。女の人の手?
「やっぱり! レト君でしょ?」
「ええっ!」
ドワーフ娘が驚きの声で少し睨む。
背後にいたのは、目の前にいると思っていたエルフのお姉さんだった。嫌いではないものの、出くわしたタイミングが気まずい。
「ど、どうして?」
「魔法で「有心残像」なんてテクニック。残像のコピーだけ残しておいて、短距離テレポートであなたのう・し・ろ!」
にっこりして耳をやんわりひっぱる。
ぐうの音も出ない。
だが彼女が切り出したのは意外な話だった。
「ちょうどよかったり。誘おうとして探してたから。そろそろお年頃なんだし冒険パーティー組むでしょう? レト君、私たちと組まない?
うちの相方って、強い戦士だけど脳筋ちゃんだから。レト君は回復魔法も使えて器用だし、男の子だから。この気が強過ぎる考えなしが勢いで突っ込んで行ったりするのに着いてて止めたり守って見ててあげると安心かな。
あの罠師さんやお姉さんとも、チームA・Bみたいな掛け持ちでいいから。お姉さんには前から話してあるし、彼とたまには二人きりがいいときは弟預けるって」
「は? それじゃ私がバカみたいじゃん」
脳筋扱いされたドワーフ娘が抗議の口を挟む。
だが年上エルフはしれっとして答えた。
「あたらずしも遠からずかな。慌てて突っ込んでくから、いっつもハラハラしちゃう。いっつも生傷つくってあとで回復でしょ。重傷や死んだらどうするのよって、いっつも言ってるのに」
「うう」
ドワーフ娘が口を尖らせる。だが猪突猛進の自覚はあるらしい。
「あなただって女の子なんだし」
「だけど戦士だから」
「それはそうだけど、あんたの横着ぶり後ろから見てると心配なのよ。レト君、どう? この子とツートップの前衛で面倒みてあげてくれない?」
「あ、はい」
どうやら姉が承諾済みらしいということもあって、肯定気味に頷く。彼女自身は姉とは同年齢の親しい友人。
昨日の晩くらいにも姉は「あなた、あの子のこと綺麗とか言ってたわね。あの子もまんざらじゃないみたいだから、仲良くしてきたら?」などとほのめかしていた。
「でも、トラにも聞いてみないと」
それが、村の名物パーティー・チーム「レトリバリック」の発端だった。
レトはてっきり自分などトラや姉のオマケのように思っていたのだが、複数チームの複合であることや「村の氏族出身だから」「取りまとめ役と事務員に向く」「男の子だから」などの理由で、実質の代表リーダーにされることになる。
それにトラは村の傭兵のような面もあり、単独行動も多いため、その間のレトや姉の所属チームがあるのも案外に歓迎だったらしい。
2
「腕試ししないと。私はまだ認めてないからね! 相撲とボクシングで勝負してテスト」
すっかり(別の意味で)やる気のドワーフ娘。ひょっとしてさっきの「禁忌の遭遇」を根に持っているのだろうか? 三白眼でレトを不敵に見据えている。
けれど、相撲もボクシングも、女の子を相手にやってはいけない気がする。抱きつき合いも男女では意味合いが変わってくるし、女の子の顔面を拳骨で思い切り殴るのは。
「それ、本気で言ってる?」
「本気!」
手のひらを拳で叩く女戦士、脳筋のゆえん。
困り果てたレトが目で救いを求めると、さすがにエルフのお姉さんがたしなめてくれた。ペシッと相棒の後ろ頭を手で叩く。
「レト君、困ってるでしょ! ほら、こんなふうなのよ、うちの相方って。いくら戦士でも、考えなしっていうか、向こう器だけ強いっていうか。女の子なのに」
「だってえ」
「戦士でも、賢い奴は賢い。その子の性格が天然なんでないだろうか?」
会話を端で聞いていたトラが横槍する。
するとドワーフ娘は一目置く感じで言った。
「そりゃ、あなたは戦士でも賢い部類かもだけど。色々できてオールマイティっぽいし」
「俺は魔術者だが。強いて言えば魔法戦士。それに器用といえばレトもだぞ。回復系は俺より得意で資質がある感じだが」
するとドワーフ娘は、いきなりレトの腕を捻り上げる。すごい力だった。
「わかった。骨を二三本くらいへし折ってやるから、それを自分で治せたら、僧侶か回復担当でパーティーに入れたげる」
「嫌ですよ!」
とうとう付き合いきれなくなったレトは、素早い体術で捻られた手の主導権を取り返し、あまりダメージの出ないやんわりした投げ技・押さえ技でカウンターする。
ドワーフ娘は目を白黒させた。
「ほら、力任せだから、そういうことになる。力だけはそっちの方がちょいとありそうだけど(変身前のレトと比べれば)」
レトはため息。なんだか、コンビのお姉さんが心配する理由がわかった気がしたからだ。
「だったらさ、腕相撲しよう」
負けず嫌い発言?
しかしレトは、集中すれば身体の一部分だけ変身中に近いパワーも出せる。変身後ならこの娘よりは力比べや取っ組み合いしても正面から蹂躙できそうだろうか。
結局は変身してお相手し、何度も挑んでくるので、レトは翌朝にちょっとだけ腕が筋肉痛気味だった。このドワーフ娘のガッツと根性だけは買って良いと思ったこと
お相手はなぜか全身筋肉痛らしく動きがぎこちないのを(昨晩の腕相撲で必死の全力だったらしい)、ちょっとだけ可愛い・微笑ましいと思ったが、とりあえず口にするのはやめておく。
「ねえ、筋肉痛を治す回復魔法ない?」
「ない」
魔法使いのお姉さん、妹分のやんちゃに笑顔。
傍目にレトも、ほのぼのと心が温かかった。
3
圧勝して舐めていたのがいけなかった。
ついに悲劇が訪れるときがきた。
「ボクシングしようよ。キックありで。そんなに気になるなら私は防具着けるから」
練習になるからとか、魔法防具着けているから変身前の腕力なら殴っても大丈夫だろうとか。そんな考え方が甘かった!
ドワーフ娘は「打撃の鬼」だった。
まるで四方八方から石やハンマーでめった打ちされるようだった。頭の中で「やめて、勘弁して」という言葉が浮かんでいた。
殴られる度に肉が潰れる。
動きが見切りきれない。
引き手が早く、たとえつかみや投げ技がオッケーでも、実行は困難だったかもしれない。もし本気で対抗しようとおもえば、抱きつきタックルするか変身でもするしかあるまい。
殴られた脇腹からの衝撃で肺が悲鳴をあげる。横っ面の顎を掠められて脳振盪っぽくなった顔面にグローブが直撃、鼻血。野獣のように猛然と襲いかかるドワーフ娘は目つきまで違っていた。
ローキックで骨が震えるようで、数発蹴られただけで足が覚束なくなってくる。被弾した太股が腫れてきて、膝がうまく曲がらず変になる。
ひょいと肩を抱かれ「優勢なのにクリンチしてきた?」とわけがわからず、直後に膝蹴りがみぞおちにめり込む。
「がはっ!」
しかも連打。内臓が潰れるかと思った。
とんっと突き放され、アッパーカットでKO。
「ふだんは肘打ちもするけど」
ドワーフ娘は過酷なことを言って、お茶を飲みながら笑っていた。少しは気が晴れてわだかまりも解けたのか、レトへの態度も打ち解けた。
試練に耐えた価値はあっただろうか。
「だけどさ、最初に言ったときレトはどうして相撲は嫌だったの? レトはそういうのだったら得意そうなのに」
「だって、女の子相手では」
「ふうん? そういう目で見てたんだ?」
てっきりこの修羅格闘姫の機嫌を損ねたかとギクリとしたものの、それは杞憂だったようだ。まんざらでもなさそうな顔で「これからよろしく」と告げられてレトはほっとしたものだ(女の子として見られて気を良くした? 特別美人というより体育系・健康派、レトとしても嫌いではないが)。
4
また姉の日記が、これ見よがしに机上に開いておきっぱなしになっていた。
「犬になってシャンプーとブラシを持参し、全身をまさぐり洗われた。「洗うと乾くまで臭い」などと酷いことを言うので、その晩に上に「生犬布団」になってのしかかって寝てやった。愛のあるモフモフに溺れてやがった」
姉は、トラに対して「犬化」した。
孤高の牝狼、どこへいった?
どこへも行っていない、変身しただけ?
覗きに行ったら、犬になってトラに膝枕させて腹を見せ、弟にニヤリ。
「あの子、あなたが気に入ったのかもね」
そんな姉の言葉と、よく知っていたあのドワーフ娘の顔が頭をよぎる。あの狂暴ちゃんがはたしてここまでデレデレするとは考えにくいが、目の前に類似の前例があるだけに(略)。
遠く聞こえた彼女の声に、当惑で耳がピクリと動いた。
5
だがそれはつかの間の平穏だった。
裏協定によって、その地域とレトたちの小さな村ごと魔族の(暗黙の)支配領域・狩り場に売り飛ばされたからだ。人間の腐敗利得した有力者たちからすれば、自分たちの利益のためなら下層の庶民や味方でも余所のエルフやドワーフどうなろうが「知ったこっちゃあなかった」。
侵攻してくる魔族帝国軍を迎え撃つため、周囲・近辺の都市の一部(過半は「目を付けられる」のを恐れたり負担と危険を嫌って関与を拒否した)から部隊が出撃し、レジスタンスの兵士たちも出陣した。
けれども、「支援する」と出てきた魔術協会の魔術者たちは戦闘が始まる直前に、戦術的撤退とやらで「有心残像」などで逃げ去った(騙し目的だったらしい)。また一部都市の部隊も突如として撤収してしまい、士気の高い者たちが最前線に取り残されて生贄に売り飛ばされる格好になる。四方八方から撃ちまくられ、味方(のはずの出撃してきた友軍)にまで「嵌められた」と気付いたときには手後れであった(多大な被害と損耗で後々まで響く)。
後方から支援射撃かと思いきや、後ろから魔法の火矢が降り注いだり、近くの要塞都市にまで落ち延びた者たちが「関係ない、関わるな!」と保護されず、城壁から石を落とされて、追いついてきた魔族側の追撃部隊から皆殺しにされたり。
「またかよ!」
トラなども珍しく怒りもあからさまに毒づいていた。迎撃の戦線に参加して、大敗北と惨禍に巻き込まれつつ。幸いにも本人自身が優秀な魔法戦士で、クリュエルなどの指揮するレジスタンスの精鋭部隊と一緒であったために難を逃れたようだったが、人間戦士を中心にした他の部隊が目の前で壊滅するのは救えなかったらしい。
最初の作戦ではセット運用で連携するはずだった、魔術協会の送った護衛の魔法使いたちが計画的な任務放棄逃げてしまったため、人間の戦士だけの部隊は魔法面で防御や援護してくれる人員を欠いて為す術もなかったようだ。
だからレトと姉、二人の女性メンバーを含むレトリバリックチームの最初の冒険ミッションは、村や地域から脱出や仮設陣地で立て籠もりする住民・避難民たちの護衛や手助けだった。
幸いにクリュエルやサキの先に作っていた避難民村(屯田兵村)が比較的に近くの距離にあったため、どうにか逃げ出してそちらに合流できた者が四分の一いるかいないか(近場で仮設の陣地・居住区を作ったり)。
第一次の殺戮と蹂躙から逃げられた彼らはまだ幸運な部類であった。それ以外は殺されたり、捕囚されて奴隷に連れ去られた。
☆世界観
人間と魔族が世界の支配圏を二分している。魔族は人間を捕食して酵素・栄養素を補給しないと生きていけず、その支配領域では人間は家畜・奴隷的な被支配者である。
また人間側では(特に旧魔王戦役以前)しばしば魔族帝国下での奴隷労働や通商、魔族ギャングの存在によって利益を得ており、支配層・富裕層ではその(腐敗や買収の)傾向が著しく、人間側や世界全体として危機を招いている(魔法協会も特権集団として同様で、同じ人間側の反魔王強硬派に非協力的だったり敵対・裏切り行為すら頻繁)。
作中では魔族やエルフ・ドワーフは人間の亜種であって、魔族側にも人間やエルフは(主に被支配者だが)居住・存在しており、人間同士の二大勢力・異なった政治思想・支配原理の戦いでもある。
☆あらすじ
獣エルフ(狼男)の少年レトと、人間の魔法戦士トラ(短編「れとりばりっく!vol.1」を参照)。旧魔王戦役の時代で世界が危機的状況。
なお、後述のクリュエルやサキ、レサパン商人は過去作(携帯スマホ書き)の主役。
ーーーーー
☆キャラクター1(「れとりばりっく!」)
レト、(犬鳴(いなき)レトリバリクス:
獣エルフの少年、変身するとレトリバー狼男。(義兄になった?)トラから貰った大剣と固定・先天才能による回復魔法。温和で従順。
トラ:
人間の魔法戦士。設置トラップ(罠)型の魔術を駆使し、凶悪なフランベルジュ剣を装備。トラバサミの鉄仮面ヘルメットを愛用。レトとは友人で兄貴分(義兄みたいなもの)。
犬鳴ルパ:
レトの姉でトラとは恋仲。変身は「麗しの牝狼」だったのに、窮地を(大型犬と思って)救ったトラとの間では(懐きすぎて)急速に犬化している。
ミケナ・フロラ:
森林エルフの女魔法使い、レトには憧れのお姉さんらしい。カエデとコンビで、新たにレトを勧誘・発案して冒険パーティー・チーム「レトリバリック」のメンバーになる。
カエデ・ジャロスタイン:
ドワーフ娘の女戦士。レトとは幼なじみ的な関係の体育会系、ボクシングとキックが得意な「打撃の鬼」。新規結成した冒険パーティー・チーム「レトリバリック」のメンバー。
ジョナス:都市ボンデホンの防衛軍大尉、歴戦の戦士。壮年のややお偉いさん(中間管理職)、反魔族レジスタンスとは協力関係・理解者。反魔族強硬派の上官・同僚や参事会議員らと共に都市内の親魔族派ギャングと暗闘。
サワラ:反魔族レジスタンスの世話役・協力者で、都市ボンデホンのカフェ・商店を拠点・連絡事務所と兼用にしている。元軍人・曹長で、ジョナス大尉とは長年の盟友。
☆キャラクター2(旧作からの主要登場人物)
クリュエル・サトー:
反魔族レジスタンスの「リベリオ屯田兵村」山塞・村落地域のリーダー格。トラの魔術学校時代からの学友・友人(先輩らしい)。
「原人騎士」と呼ばれるのは、エルフの革鎧と自作の魔術石器(付呪した石器)を駆使するのが原始人さながらだから。聖剣詐欺村で封印されていた剣を見破って強奪したことも(実はこのシリーズの最初に思いついた・書いたエピソード)。
サキ:
サキュバス姫騎士(推して知るべし)。魔族ハーフで伯爵(中級魔王)の娘だが、魔族たちの異常な残虐さに適応できず、仲が良かった支持者の領民の人間たちと脱走。ほんわかして天然さん・アホっぽいように見えるが、頭が良く極めて有能(回復・治療や薬品製造、基本的な能力・戦闘力も高い部類)でかなりデリケート(性格は良く、少し寂しがり?)。屯田兵村のリーダー格の一人。
※未来編ではミリア(長女、人間の回復魔法・薬品担当)・レオ(長男、エルフの狩人)・ミカ(次女)の三人の子供がいる。
キョウコ:
森林エルフのマタギ狩人なお姉さん。犬鳴ルパ、ミケナやサキとは友人関係で、カエデなどからは(体育会系的な意味で)先輩としてリスペクトされている。クリュエルの妻(?)で、その所有・占有権を巡って「山の女神」と殴り合った猛者。
※未来編では教え子・部下(?)のアネチカ(ドワーフ娘、戦士)が登場。
ファルコン・チャン:
魔獣「レッサーパンダ」になったドワーフのカンフー魔導師(眼帯が特徴?)。諸々の反魔族レジスタンスでも中心的メンバーで、クリュエルやトラの戦友。「レサパン商会」と通商されるグループを率いて独自の拠点を持っている(本人もレサパン商人と呼ばれる)。変身している理由は「山の女神」の祝福且つ呪い(パワーアップと浮気防止で、山の女神または正妻にキスされたときだけ人間・ドワーフの姿に戻るらしい)。
ガジュマル・リー:
エルフ・ドワーフ(混血)で助・郭と共にファルコン・チャンの部下。刺青スキンヘッドでいかついが、付き合いのあった人間の村が魔族に蹂躙されたり妹を誘拐・殺害されて武闘派の復讐鬼になった過去がある。
シェリー:
魔族の羅刹娘で、サキとは旧知で因縁がある(友人だったが食人・対人間のスタンス・考え方の違いで決裂したらしい)。純血に近いらしいが家門は下級魔族出身で上昇志向が強く、やり方の悪辣さもあって人間から恐れられ、魔族の間では「女傑」との評価らしい。人間のギャングや「魔族寄りのエルフ」氏族であるアビスエルフ(鮮魚人など)を配下にしている。
※未来編ではアレクセという年下の貴族と仲良くなって配下になっている。
ニキータ伯爵家:
サキの生家だが兄二人が継承争いしている。
※未来編ではお家騒動もあって息子が子爵(準伯爵)になっており、辺境(教会村の近く)のネクロポリスに領民の人間たちと移住してくる。