彼との出会いは、入学式だった。彼の外見と優しさ、そして柔らかい雰囲気。そんなところに一目惚れしてしまった。何もかもが完璧だった彼はいつもみんなに優しく、困っている子を見掛けると、駆け寄って話を聞いたり、クラスの係の仕事を率先してやっていた。いわば優等生。1年の時は残念ながら、クラスは離れてしまったが、それはそれで良かったと思ってる。その方が楽だから。クラスが一緒だと何をするにも息が詰まる。
そんな恋は、もうしたくない...。
この恋は私の片思いだった。だから、私から積極的に話に行くことはなく、アピールもしなかった。
そんな私でも、彼と何度か話したことがあった。委員会が同じだったから。委員会の度、グループワークがあったんだけど、私は陰な性格だし、グループワークがすごく苦手。始まった途端、すぐに孤立してしまう。でも、彼だけはグループワークの度に話しかけにきてくれた。その時は、心臓が飛び跳ねるほど嬉しかった。緊張していたせいか、何を話したかほとんど覚えていない。
2年生、またクラスは違った。2年生に上がると、テストや、学校行事で忙しく、彼とは全く喋れなかった。委員会は一緒だったものの、委員長が変わったので、グループワークはなくなり、唯一の接点も同時に消えてしまった。そして彼も、あっという間に消えてしまった。なんの予兆もなく、この世から消えてしまったのだ。交通事故だった。私は、泣き叫んだ。思いを伝えなかったこと、臆病を理由にし、話しかけに行かなかったことを後悔した。もう後悔しても仕方ないのに。
初めて話した日のことは今でも鮮明に覚えてるよ。好きな人と初めて話せた日だもん。忘れられるわけが無い。

(委員会)

彼は私の方へ近づいてきてこういった。

彼「話すの初めてだよね!」

はる「そうですね、」

彼「敬語やめてよ!笑 同級生じゃーん!」

はる「あ、うん、!わかった!」

彼「名前、はるっていうんだね!はるって呼んでいー?」

急に名前を呼ばれたのでびっくりした。名札の名前を読んだのか、好きな人に急に名前を呼ばれるなんて、心臓に悪い。

はる「も、もちろん!」

彼「聞きたいことあんだけど!はるはさ!なんか、将来なりたいものとかないの?」

はる「私がなりたいものか、将来ないたいものは無いけど、現実的じゃないものならあるかな笑」

彼「え、なになにー?」

はる「…………だよ!」

彼「へぇ!素敵だねぇ!」

正直、何になりたいと言ったのか忘れてしまった。緊張でそれどころじゃなかったし。でも彼の目がキラキラしていたことは鮮明に覚えている。
てか、私下の名前で呼ばれてたんだ。仲良く話できてるじゃん。話している間は、パニックでそれどころじゃなかったんだろうな。



はる「っとまー、こんな感じだけど、」

正直話すのは恥ずかしかった。だって恋愛話と一緒なんだから。

とわ「ん、そか」

思ってた反応と違った。もっと茶化してくるかと思ったのに。その方が楽だし。

とわ「でも、なんでお前、あいつの名前出さないんだ?」

そういえば、名前を出していなかったな。思い出したくないのかもしれない。

はる「わかんない、思い出したくない、のかな、」

とわ「ふーん。」

はる「そだ!とわも話して?」

とわ「あぁ?なんで俺まで話さなきゃなんねぇんだよ」

はる「だって、これから協力して行く仲じゃん」

とわ「んな事言ったってよ、」

はる「いーから、ね?」

そういった私は笑っていた。自然な笑顔だ。笑顔で語りかけるなんて、いつぶりだろう。

とわ「仕方ないな〜笑」