家のベットに横たわり、泣き崩れている私は綾中はる、高校2年生。昨日、好きな人が死んだ。交通事故らしい。信号が青なのに、トラックが信号無視をして彼を...。事故の知らせを聞いて、一番後悔をしたこと。それは自分の気持ちを彼に伝えなかったこと。振られるのが怖いことを理由にして、ずっとずっと気持ちを伝えなかった。
私の人生、この先はもう真っ暗になっちゃった、光だった人が居なくなってしまったから。この部屋から1歩も動けない、出る勇気が全くない。今日もまた、布団の中で泣いている。後悔しても何も起きないってわかってるのに。
朝の7時、階段を上る足音が聞こえる。その足音は私の部屋の前で止まった。いつもの事だ。

母「はる、そろそろ、朝ごはんだけど、」

母さんの声だ。今日もまた同じ時間に同じことを言いに来る。それが日課になっているようだ。でも私は、絶対に下へ降りたくない。少し顔を出すだけでも、家族はほっとするだろう。
でも、この部屋から出る勇気がないし、例え出たとして私は話す勇気もない。だから私は下に降りれない。

はる「お母さん、毎日言ってるよね、ほっといて。」

母「でも、食べなきゃ。」

はる「ほっといてって言ってるでしょ!」

母さんに強く当たってしまった。私の心の中で悲しみや苦しみ、悔しさや苛立ちが混ざりあった。

母「ごめん、なさい、」

いつもこうだ。反抗しようと思ってる訳じゃ無い。ただ、気持ちの整理が着いていないだけ、だから反抗的になる。それだけなのに。でも、ほんとにそれだけなんだろうか。いつしか、自分の考えていることさえも嘘に思えてきて、自問自答を繰り返す日々。ずっと暗闇の中にいる私は少しづつおかしくなっていくような気がしていた。

はる「私って、どうして、こうなの?」

1人の空間に私は話しかける。誰からの返事も帰ってこないのに。

??「それは後悔してることが原因だろ?」

ふと、そんな声が聞こえた。周りを見渡してみる。誰もいない。幻聴かなにかだろうか。

??「俺はここ、クローゼット。開けてみろ!」

声に従い、クローゼットを開ける。すると、中から、私と同じ歳くらいの男子が出てきた。

はる「何、誰!なんでこんなとこに!?」

人の家のクローゼットになんで人がいるの??しかも知らない人。意味がわからない。もしかして、頭がおかしくなって幻覚も見るようになったとか??私は少し考え込んだ。

??「うるさいなぁ。俺は幽霊です、死んでる。」

はる「ゆ、幽霊?」

意味のわからないことを言うので、少し困惑した。急に言われても理解し難いし、何より透けていない、あと触れる。

??「それだけ触ってりゃもう十分だろ?」

私はハッとなって我に返る。いつの間にか彼の体を触っていた。ちゃんと触れるし、透けてないし、生きている人間みたい。

??「俺は幽霊だってわかった?まぁ、未練があるからこんなことになってるんだけど、」

はる「未練?何かやり残したことがあるの?」

??「まぁな。そうっぽい」

なんか大変そうだな。ぽいってことは何が未練かわかってないようだし。私は彼に目をやる。身長は、175センチ前後だろうか。割と筋肉は着いているみたい、肌の色は薄い。

??「俺の名前はとわ」

はる「あ、うん。私、はる」

びっくりした、急に自己紹介だなんて、やっぱりこの人の事は全然分からない。にしても、なぜ、クローゼットの中にいたのか、気になって仕方がない。

とわ「あー、クローゼットがいちばん居心地いいから」

心の声読まれた、?そんなことも出来るの?頭の中はパニックになっている。

とわ「幽霊だからね。」

と、とわは答える。多分説明が面倒臭いからこの一言で終わらせたのだろう。でも心の中を読めることはとてもすごい。

はる「すごいね、」

でも、とわの事についての疑問は沢山ある。まず、なぜ今出てきたのか。それと、なぜ私のところになのか。他にもいろいろ。

とわ「全部説明する。今出てきたのは俺の気分。そして、なぜ出てきたのか、それは、間接的か直接的にかは分からないけど、お前に未練があるらしい。未練は何かわかんない。困るなぁほんと。」

はる「そっちの問題でしょ?私は関係ないから...。」

とわ「そーだーけどよ、ま、とりあえず助けてくれ。頼むよ!」

身元も分からない人に関わりたくないのが本心だが、今の私には少しの気晴らしは必要なのかな。
少しでも気晴らしになるのでは無いかと、とわを助けることにした。

とわ「んで、返事はどー?」

はる「ここは心読まないんだね。いーよ」

とわ「いつでも読めると思うなよ笑」

とわ「でも、なんでかこの家懐かしい感じするんだよな。」

はる「ふーん、生きてる時住んでた家に似てるんじゃない?」

私はそんなことを言いながらも少し俯いた。

とわ「なに、なんか暗いけど。なんかあった?」


正直、詮索されるのは大嫌いだ。でも、今は話し相手が欲しい気がする。少しでも吐き出せば楽になるのだろうが、その話し相手が、こいつで大丈夫だろうか。何より、話が重いので、心配だ。

はる「話せば軽くなるのかな、」

私はとわに聞く。話して軽くなる悩み事もあれば、話したことで余計に重くなってしまう悩み事もあるから、私は人に話すことが苦手だ。

とわ「全然?軽くなると思うけど。俺客観的にしか考えないし」

はる「わかった、重たい話だけど、いい?」

とわ「おう、もちろん⋯?」

案外あっさり了承してくれた。少し嫌な顔をすると思っていたけど、今の表情、なんだろう。同情しているかのような、哀れんでいるかのような、そんな顔をしているように感じとれた。もちろん私から見て。

はる「そっか、話すと長くなるけど。」

とわ「大丈夫だって言ってるだろ?早く話せよ。」

言葉は乱暴だが、とわなりの優しさなのだろう。会って間もないけどそのくらいは分かった。

はる「うん、話す。」