『右下に見えますのが、乱獲されつくしたサンゴ礁でございます』
クラーケンのガイドで、俺たちは海に出た。
砂船は砂の上を走るために設計されている。そのせいか、海に浮かべるとじんわりと浸水。
で、クラーケンの吸盤で支えて貰って、海面すれすれの所を浮かんで進んでいる。
「クラーケンさま」
『クラちゃんでいいわよぉ』
「あ、えっと……クラちゃんさま、さんごしょうとはなんでしょう?」
『ちょっと、クラちゃんさまって……って、サンゴ礁を知らないの!?』
「俺以外は砂漠から出たことがないから、サンゴ礁なんて知らないだろう。俺だって実物を見たことはないし」
テレビだと見たことがあるけど、生では見たことがない。
サンゴの密漁があるみたいなのは聞いたことあるけど、まさかこっちの世界でも問題になってるとはなぁ。
「俺たちにこれを見せたってことは……」
『生きているものを成長させるスキルを持っているんだってねぇ。サンゴたちも生きてるの、知ってた?』
「知ってるよ。サンゴを成長させるのはいいんだけど、問題がある」
『問題? なんだいそれは』
「それは……水中で呼吸ができないってことだ!」
やや間があって、ルーシェとシェリル、ハクトが「あぁ」っと納得したように声を漏らす。
『あらぁ、そうだったわね。でも心配しないで。そこはちゃーんとサポートしてあ・げ・る』
……イカに色っぽく言われてもなぁ。
「そのサポートって、何をしてくれるんだ?」
『んふっふ。わたしも水の大精霊。水中呼吸を可能にすることなんて、簡単よぉ』
そう言うとクラーケンは、砂船を持ち上げ、ひっくり返……ぎゃあぁぁぁぁーっ!
「泡で包んでくれるなら、最初から言ってくれないかな」
『説明するの面倒くさいじゃないのさぁ』
説明は大事だと思います!
海に投げ出された俺たちは、海水にどぼんすることなく大きな泡に包まれた。
泡の中には空気がある。
全員がそれぞれ泡に包まれ、海中に浮かんだような状態だ。
ハクトがじたばたしているのが見える。
暴れても泡は破裂しないようだ。
『う、海の中だよ!? 溺れちゃうよぉ』
『オ水ハイッテコナイ?』
『大丈夫よ、坊やたち。空気も常に補充してあげてるから、心配しなくていいんだよ。泡も決して破裂しないからね』
『本当ニ? ジャア、ボクタチ海ノ中デ遊ベルンダネ!』
とたんにアスたちはわちゃわちゃと動き出す。
なんか無重力空間に浮かんでいるみたいだ。
よぉし、俺も――
『子供たちは遊んでてもいいとして、あんたはしっかり見てちょうだいよ』
「わ、分かってるよ」
太陽の日差しが降り注ぐ海底には、転々とサンゴが見える。
テレビで見たことのあるサンゴというより、イラストで見るようなカラフルなものだ。
「さんごとはどれでしょう?」
「ほら、硬そうな植物みたいなのが見えるだろ。鮮やかな色の。あれがサンゴ……だと思う」
『そうよ。綺麗でしょ』
「はい!」
「あれって植物なの? だったら、まるで花のようね」
確かに、遠くからだと花畑のように見えるかもしれない。
だけど、東の山にあった花畑よりも転々とし過ぎている気がする。
『以前はもーっとたくさんあったのよ。それを人間や魚人たちが刈り取ってしまってねぇ』
「魚人? そんな種族もいるのか」
『人間に売って、それで地上の物を買ってるんだよ』
どこの世界も、悪いのは人間かぁ。
「でも俺がサンゴを成長させたら、また同じことを繰り返されるだけじゃないのか?」
『そうねぇ。そこもなんとかしてくれないかい?』
なんとかって……。
サンゴを盗らせないようにするには、どうすれば……。
『ユタカオ兄チャン、ドウシタノ?』
「ん? んー、サンゴってな、海の宝石って言われているんだ。綺麗だろ?」
『ウン、綺麗!』
「綺麗なものは、高く売れるんだ。えっと、たとえるとな、綺麗なサンゴ一個で何か月分のレタスと交換できる……みたいな」
『エェ!? スゴーイッ』
なんか喜ばせてしまった。
これじゃダメなんだよ。
「で、でもなアス。高く売れるからっていろんな人間や他の種族のヤツがサンゴを盗っていったら、えっと……あっ」
サンゴを見ていると、小魚がたくさん泳いでいることに気づいた。
「アス、見てみろ。小さな魚がたくさん泳いでいるだろ?」
『ウン。綺麗ナオ魚サンダネェ』
「サンゴは魚のお家なんだ。とくに小さな魚はサンゴに隠れることで、大きな魚に食べられるのを防いている。きっと以前はもっと、たくさんの魚がいたんだろうな」
『オ家……オ家盗ラレタラカワイソウ』
「だろ? だから成長させて終わりってわけにもいかなくてな。どうやって人間たちにサンゴを盗らないようにするか、何か案がないかなぁって考えているんだよ」
『サンゴヲ盗ラレナイヨウニ……ウゥーン、ウゥン』
海の中で腕組みをしてうんうん唸る。
アスも横で同じようにうんうんと唸った。
『アッ』
「ん? なにか思いついたのか?」
そう尋ねると、アスはにっこり笑って頷いた。
『オジチャンミタイニスレバイインダヨ!』
おじちゃんみたいに?
クラーケンのガイドで、俺たちは海に出た。
砂船は砂の上を走るために設計されている。そのせいか、海に浮かべるとじんわりと浸水。
で、クラーケンの吸盤で支えて貰って、海面すれすれの所を浮かんで進んでいる。
「クラーケンさま」
『クラちゃんでいいわよぉ』
「あ、えっと……クラちゃんさま、さんごしょうとはなんでしょう?」
『ちょっと、クラちゃんさまって……って、サンゴ礁を知らないの!?』
「俺以外は砂漠から出たことがないから、サンゴ礁なんて知らないだろう。俺だって実物を見たことはないし」
テレビだと見たことがあるけど、生では見たことがない。
サンゴの密漁があるみたいなのは聞いたことあるけど、まさかこっちの世界でも問題になってるとはなぁ。
「俺たちにこれを見せたってことは……」
『生きているものを成長させるスキルを持っているんだってねぇ。サンゴたちも生きてるの、知ってた?』
「知ってるよ。サンゴを成長させるのはいいんだけど、問題がある」
『問題? なんだいそれは』
「それは……水中で呼吸ができないってことだ!」
やや間があって、ルーシェとシェリル、ハクトが「あぁ」っと納得したように声を漏らす。
『あらぁ、そうだったわね。でも心配しないで。そこはちゃーんとサポートしてあ・げ・る』
……イカに色っぽく言われてもなぁ。
「そのサポートって、何をしてくれるんだ?」
『んふっふ。わたしも水の大精霊。水中呼吸を可能にすることなんて、簡単よぉ』
そう言うとクラーケンは、砂船を持ち上げ、ひっくり返……ぎゃあぁぁぁぁーっ!
「泡で包んでくれるなら、最初から言ってくれないかな」
『説明するの面倒くさいじゃないのさぁ』
説明は大事だと思います!
海に投げ出された俺たちは、海水にどぼんすることなく大きな泡に包まれた。
泡の中には空気がある。
全員がそれぞれ泡に包まれ、海中に浮かんだような状態だ。
ハクトがじたばたしているのが見える。
暴れても泡は破裂しないようだ。
『う、海の中だよ!? 溺れちゃうよぉ』
『オ水ハイッテコナイ?』
『大丈夫よ、坊やたち。空気も常に補充してあげてるから、心配しなくていいんだよ。泡も決して破裂しないからね』
『本当ニ? ジャア、ボクタチ海ノ中デ遊ベルンダネ!』
とたんにアスたちはわちゃわちゃと動き出す。
なんか無重力空間に浮かんでいるみたいだ。
よぉし、俺も――
『子供たちは遊んでてもいいとして、あんたはしっかり見てちょうだいよ』
「わ、分かってるよ」
太陽の日差しが降り注ぐ海底には、転々とサンゴが見える。
テレビで見たことのあるサンゴというより、イラストで見るようなカラフルなものだ。
「さんごとはどれでしょう?」
「ほら、硬そうな植物みたいなのが見えるだろ。鮮やかな色の。あれがサンゴ……だと思う」
『そうよ。綺麗でしょ』
「はい!」
「あれって植物なの? だったら、まるで花のようね」
確かに、遠くからだと花畑のように見えるかもしれない。
だけど、東の山にあった花畑よりも転々とし過ぎている気がする。
『以前はもーっとたくさんあったのよ。それを人間や魚人たちが刈り取ってしまってねぇ』
「魚人? そんな種族もいるのか」
『人間に売って、それで地上の物を買ってるんだよ』
どこの世界も、悪いのは人間かぁ。
「でも俺がサンゴを成長させたら、また同じことを繰り返されるだけじゃないのか?」
『そうねぇ。そこもなんとかしてくれないかい?』
なんとかって……。
サンゴを盗らせないようにするには、どうすれば……。
『ユタカオ兄チャン、ドウシタノ?』
「ん? んー、サンゴってな、海の宝石って言われているんだ。綺麗だろ?」
『ウン、綺麗!』
「綺麗なものは、高く売れるんだ。えっと、たとえるとな、綺麗なサンゴ一個で何か月分のレタスと交換できる……みたいな」
『エェ!? スゴーイッ』
なんか喜ばせてしまった。
これじゃダメなんだよ。
「で、でもなアス。高く売れるからっていろんな人間や他の種族のヤツがサンゴを盗っていったら、えっと……あっ」
サンゴを見ていると、小魚がたくさん泳いでいることに気づいた。
「アス、見てみろ。小さな魚がたくさん泳いでいるだろ?」
『ウン。綺麗ナオ魚サンダネェ』
「サンゴは魚のお家なんだ。とくに小さな魚はサンゴに隠れることで、大きな魚に食べられるのを防いている。きっと以前はもっと、たくさんの魚がいたんだろうな」
『オ家……オ家盗ラレタラカワイソウ』
「だろ? だから成長させて終わりってわけにもいかなくてな。どうやって人間たちにサンゴを盗らないようにするか、何か案がないかなぁって考えているんだよ」
『サンゴヲ盗ラレナイヨウニ……ウゥーン、ウゥン』
海の中で腕組みをしてうんうん唸る。
アスも横で同じようにうんうんと唸った。
『アッ』
「ん? なにか思いついたのか?」
そう尋ねると、アスはにっこり笑って頷いた。
『オジチャンミタイニスレバイインダヨ!』
おじちゃんみたいに?