「いやったぁー!」
「あたし二階がいいぃ」
「二階は兄ちゃんのに決まってるだろ」
「兄ちゃんずるーいっ」
「あにょね、あにょね。ミルね、ちっちゃいお部屋がいいの」
しばらく遊んでもいいよ――と招き入れたんだけど……。
「ボクたちもこのお家欲しい。エディだけずるいよ」
「オレが先に来たんだから、オレんちのっ」
いやいや君たち。ここは俺の家だからね。
「こらっお前たち! ここはユタカお兄ちゃんの家だろうっ」
「「えぇぇーっ」」
なんで「えぇー」なの?
オーリさんが来て子供たちを叱る。
ユタカお兄ちゃんの物を盗ったら、お兄ちゃんが困るだろうと言って。
うん、凄く困ります。
でも……。
「「うわあぁぁぁぁん」」
子供たちが一斉に泣き出した。
「ごめんなさい、ユタカさん。私が子供たちを中に入れてしまったせいで」
「いや、親であるわたしの責任だよルーシェ。本当に悪かったね、ユタカくん」
「泣いてたってこの家はユタカのなの。それともあんたたち、ユタカお兄ちゃんに外で寝ろっていうの?」
「ちがぁもん」
「じゃあ泣いてないで、お家をお兄ちゃんに返しなさい」
シェリルが厳しい口調でそう言うと、子供たちはしゅんとなってツリーハウスから出て行く。
あぁあ。ハウスの中が砂だらけだ。
けど、子供たちにとってツリーハウスは、よっぽど魅力的だったんだろうな。
「オーリさん。ツリーハウスの種は残り八個あるんだ。ひとり一軒は当然無理だけど、各家庭に一軒なら用意出来るよ」
「よ、用意って……スキルのことは昨日ざっくり聞いたが、大丈夫なのか? 無理して倒れられたら大変だ」
「うぅん。スキルを手に入れたのがそもそも最近のことで、それまでスキルなんて使ったこともなかったから分からないんだよね」
「確かに突然バタっといかれても困るわね」
「そうですね。私たちがいるときならいいですが、ひとりの時だと命にかかわりますし」
だよなぁ。
「たぶん魔力の消費量は、自然成長に必要な時間が長ければ長いほど、消費量も多いみたいなんだよね」
野菜を種から成長させたときと、杉の木を成長させたときじゃ抜けていく何か――たぶん魔力だけど、これが全然違う。
野菜は収穫出来るようになるまでと考えてスキルを使っているが、三、四カ月をスキルで成長させているはずだ。
杉は大きく育つまでと考えている。詳しい樹齢とかわかんないけど、一年や二年じゃないはずだ。もしかすると数十年かもしれない。
「となると、この家は木だ。結構な年数分を一気に成長させているだろう?」
「えぇ、たぶん。樹齢はまったく分からないけどね」
「そうか。子供の頃住んでいた村にも、枯れかけの木が何本かあった。あんなのでも、十年以上は生えていたらしいからね。それよりも立派なこの家は、数十年になるのかもしれない」
どのくらいスキルで成長させたら、俺の魔力って切れるんだろう。
確かめたいけど、どうやればいいのか。
「とにかく、今日のところは止めておいた方がいい。ま、まぁ、この家は、うん、いい家だけどね」
とオーリさんが照れくさそうに言う。
つまり……。
「じゃ、明日から順にみんなの家の横に一本ずつ成長させるよ」
「ん……ん……ありがとう。いやぁ、中は快適そうだね。あぁ、そうだ。子供たちが汚してしまったから、掃除をしないとな。うん」
「もう、オーリってば嬉しそう」
「ふふふ。でも本当にステキなお家ですものね」
「もちろん、二人の分も成長させるから」
そう言うと、ルーシェもシェリルも大喜びでぴょんぴょんと跳ねた。
「あ、でも、先に調べたほうがいいのでは?」
「確認?」
「はいです。ユタカさんの魔力量――というか、何年分成長させると、ユタカさんの魔力が枯渇するのかを」
とはいえ、どうやって調べたものか。
「そうだ。ボンズサボテンを成長させてもらうのはどうだ? 種から育てて最初に花をつけるのに、だいたい十年かかる。その後は五年に一度の周期で花を咲かせるだろう?」
「あ、いいですね。花が咲く回数を数えれば、何年成長させたか分かりますし」
「それでユタカがどのくらいで疲れるのか見ればいいのね。うん、いいんじゃない」
五年に一度花を咲かせるサボテンか。
うん。確かにそれだと花の開花を数えるだけで、何年成長させたか分かるな。
サボテンでの検証は明日。
今夜ゆっくり休んで、魔力をリセットしてからだ。
そして夜は天ぷら大会になった。
まぁ手持ちの野菜だと、タマネギ、人参、ナス、カボチャぐらいしか天ぷらに出来ないけど。
それと――
「んまっ。この黄色いつぶつぶ、甘くて美味しい」
「あま~い。兄ちゃん、これなんていうの?」
「それな、トウモロコシって言うんだ。美味しいだけじゃなく、栄養も豊富なんだぞ」
「「おぉ~」」
野菜の木にトウモロコシも生った。それを乾燥させて全部種にしておいた。
落ち着いたら他の野菜の木も育てたい。
日が暮れる前にオーリさんや他の大人の人が手伝ってくれて、俺のツリーハウスにベッドが運ばれた。
今はベッドだけ。
十分だ。
木材の心配もないし、少しずつ作って揃えて行こう。
そして翌朝――
「これがボンズの種だ。で、あれが成長したボンズだ」
「ウチワサボテンだっけか、それに似てるな」
真ん中に一本太い幹のようなのがあって、そこから枝の代わりに平ぺったくて楕円形の葉が縦に連なって生えている。
平ぺったいと言っても、厚みは二センチほどあるけど。
俺が知ってるウチワサボテンより棘は少なそうだ。
「じゃ、成長させるよ」
「ゆっくりとか出来ますか? お花が咲く回数を数えたいので」
「それなら、花が咲くまで成長させて、それからまた次の花が咲くまで成長ってやるよ」
いつものように種を芽吹かせてから地面に植える。
そこから成長させ、まずは一回目の花を咲かせた。
最初は十年。次から五年ごとだったな。
「次、五年後行くよ――」
こうして成長させては花を咲かせ、また成長させて花を咲かせ――。
その度にサボテンも大きく伸びて行って、時々触れる場所を変えながら成長させていった。
「サボテンの寿命は八〇年ぐらいだと聞いた。花を九回咲かせたら別の種を成長させよう」
「九回――ってことは五〇年?」
「それを過ぎると食用に向かなくなるんだよ」
「あぁ、なるほ……ん?」
食用……これ食べるのか!?
つまりこれは、検証をしつつ食料を育てているって訳だ。
結果。
五つ目の種を成長させて三回花が咲いた辺りで軽い眩暈を起こした。
俺が安全に成長させられるのは、二七〇年ってことが分かった。
野菜ならめちゃくちゃたくさん成長させられるな。
「あたし二階がいいぃ」
「二階は兄ちゃんのに決まってるだろ」
「兄ちゃんずるーいっ」
「あにょね、あにょね。ミルね、ちっちゃいお部屋がいいの」
しばらく遊んでもいいよ――と招き入れたんだけど……。
「ボクたちもこのお家欲しい。エディだけずるいよ」
「オレが先に来たんだから、オレんちのっ」
いやいや君たち。ここは俺の家だからね。
「こらっお前たち! ここはユタカお兄ちゃんの家だろうっ」
「「えぇぇーっ」」
なんで「えぇー」なの?
オーリさんが来て子供たちを叱る。
ユタカお兄ちゃんの物を盗ったら、お兄ちゃんが困るだろうと言って。
うん、凄く困ります。
でも……。
「「うわあぁぁぁぁん」」
子供たちが一斉に泣き出した。
「ごめんなさい、ユタカさん。私が子供たちを中に入れてしまったせいで」
「いや、親であるわたしの責任だよルーシェ。本当に悪かったね、ユタカくん」
「泣いてたってこの家はユタカのなの。それともあんたたち、ユタカお兄ちゃんに外で寝ろっていうの?」
「ちがぁもん」
「じゃあ泣いてないで、お家をお兄ちゃんに返しなさい」
シェリルが厳しい口調でそう言うと、子供たちはしゅんとなってツリーハウスから出て行く。
あぁあ。ハウスの中が砂だらけだ。
けど、子供たちにとってツリーハウスは、よっぽど魅力的だったんだろうな。
「オーリさん。ツリーハウスの種は残り八個あるんだ。ひとり一軒は当然無理だけど、各家庭に一軒なら用意出来るよ」
「よ、用意って……スキルのことは昨日ざっくり聞いたが、大丈夫なのか? 無理して倒れられたら大変だ」
「うぅん。スキルを手に入れたのがそもそも最近のことで、それまでスキルなんて使ったこともなかったから分からないんだよね」
「確かに突然バタっといかれても困るわね」
「そうですね。私たちがいるときならいいですが、ひとりの時だと命にかかわりますし」
だよなぁ。
「たぶん魔力の消費量は、自然成長に必要な時間が長ければ長いほど、消費量も多いみたいなんだよね」
野菜を種から成長させたときと、杉の木を成長させたときじゃ抜けていく何か――たぶん魔力だけど、これが全然違う。
野菜は収穫出来るようになるまでと考えてスキルを使っているが、三、四カ月をスキルで成長させているはずだ。
杉は大きく育つまでと考えている。詳しい樹齢とかわかんないけど、一年や二年じゃないはずだ。もしかすると数十年かもしれない。
「となると、この家は木だ。結構な年数分を一気に成長させているだろう?」
「えぇ、たぶん。樹齢はまったく分からないけどね」
「そうか。子供の頃住んでいた村にも、枯れかけの木が何本かあった。あんなのでも、十年以上は生えていたらしいからね。それよりも立派なこの家は、数十年になるのかもしれない」
どのくらいスキルで成長させたら、俺の魔力って切れるんだろう。
確かめたいけど、どうやればいいのか。
「とにかく、今日のところは止めておいた方がいい。ま、まぁ、この家は、うん、いい家だけどね」
とオーリさんが照れくさそうに言う。
つまり……。
「じゃ、明日から順にみんなの家の横に一本ずつ成長させるよ」
「ん……ん……ありがとう。いやぁ、中は快適そうだね。あぁ、そうだ。子供たちが汚してしまったから、掃除をしないとな。うん」
「もう、オーリってば嬉しそう」
「ふふふ。でも本当にステキなお家ですものね」
「もちろん、二人の分も成長させるから」
そう言うと、ルーシェもシェリルも大喜びでぴょんぴょんと跳ねた。
「あ、でも、先に調べたほうがいいのでは?」
「確認?」
「はいです。ユタカさんの魔力量――というか、何年分成長させると、ユタカさんの魔力が枯渇するのかを」
とはいえ、どうやって調べたものか。
「そうだ。ボンズサボテンを成長させてもらうのはどうだ? 種から育てて最初に花をつけるのに、だいたい十年かかる。その後は五年に一度の周期で花を咲かせるだろう?」
「あ、いいですね。花が咲く回数を数えれば、何年成長させたか分かりますし」
「それでユタカがどのくらいで疲れるのか見ればいいのね。うん、いいんじゃない」
五年に一度花を咲かせるサボテンか。
うん。確かにそれだと花の開花を数えるだけで、何年成長させたか分かるな。
サボテンでの検証は明日。
今夜ゆっくり休んで、魔力をリセットしてからだ。
そして夜は天ぷら大会になった。
まぁ手持ちの野菜だと、タマネギ、人参、ナス、カボチャぐらいしか天ぷらに出来ないけど。
それと――
「んまっ。この黄色いつぶつぶ、甘くて美味しい」
「あま~い。兄ちゃん、これなんていうの?」
「それな、トウモロコシって言うんだ。美味しいだけじゃなく、栄養も豊富なんだぞ」
「「おぉ~」」
野菜の木にトウモロコシも生った。それを乾燥させて全部種にしておいた。
落ち着いたら他の野菜の木も育てたい。
日が暮れる前にオーリさんや他の大人の人が手伝ってくれて、俺のツリーハウスにベッドが運ばれた。
今はベッドだけ。
十分だ。
木材の心配もないし、少しずつ作って揃えて行こう。
そして翌朝――
「これがボンズの種だ。で、あれが成長したボンズだ」
「ウチワサボテンだっけか、それに似てるな」
真ん中に一本太い幹のようなのがあって、そこから枝の代わりに平ぺったくて楕円形の葉が縦に連なって生えている。
平ぺったいと言っても、厚みは二センチほどあるけど。
俺が知ってるウチワサボテンより棘は少なそうだ。
「じゃ、成長させるよ」
「ゆっくりとか出来ますか? お花が咲く回数を数えたいので」
「それなら、花が咲くまで成長させて、それからまた次の花が咲くまで成長ってやるよ」
いつものように種を芽吹かせてから地面に植える。
そこから成長させ、まずは一回目の花を咲かせた。
最初は十年。次から五年ごとだったな。
「次、五年後行くよ――」
こうして成長させては花を咲かせ、また成長させて花を咲かせ――。
その度にサボテンも大きく伸びて行って、時々触れる場所を変えながら成長させていった。
「サボテンの寿命は八〇年ぐらいだと聞いた。花を九回咲かせたら別の種を成長させよう」
「九回――ってことは五〇年?」
「それを過ぎると食用に向かなくなるんだよ」
「あぁ、なるほ……ん?」
食用……これ食べるのか!?
つまりこれは、検証をしつつ食料を育てているって訳だ。
結果。
五つ目の種を成長させて三回花が咲いた辺りで軽い眩暈を起こした。
俺が安全に成長させられるのは、二七〇年ってことが分かった。
野菜ならめちゃくちゃたくさん成長させられるな。