「おんせんってステキですね!」
「ほんと。気のせいかもしれないけど、なんだか肌がつるつるになった感じ」
「気のせいじゃないと思うよ。温泉ってそういう効果があるし。あと冷え性とか腰痛とかにも効く成分もあるようだけど、まぁそれは温泉によって違うからなんとも言えないな」
とはいえ、冷え性に効くとかって、砂漠で暮らす人に必要性があるのか謎だけど。
雪遊びを堪能したところで、みんなが寒いと言い出した。
当たり前だ。
さっそく火竜に温泉の場所を聞いて、まずは彼女らに入らせた。
ワームたちにとって、少し熱すぎるってんで――
『汲んだお湯に瓢箪のお水を混ぜて、温くしたのぉ』
『♪♪』
『●♪』
『リリとルルも、つるんつるんになったって言ってるぅ』
うん。なんかてかってるから分かるよ。
ここの温泉は美肌効果が高そうだな。
温泉の後は、夕食にして船でぐっすり休む。
いやぁ、やっぱり温泉効果かなぁ。
めちゃくちゃ熟睡できたし、朝目が覚めた時もスッキリ爽快。
おかげで種増やしの作業も捗った。
翌日も同じように種増やしの作業をせっせと頑張る。
その夜――
「どうかな?」
増やした種で足りるかどうか、ルルに見てもらった。
『♪』
「よさそうだって言っています」
「そか。じゃ、明日はこれを成長させる番だな」
『!♪♪』
「え? ルル……そうですね。大地の大精霊様の試練ですもの、ルルが頑張らなきゃですね」
ん?
「ユタカさんが成長促進のスキルをかけた種は、ルルが撒きたいそうです」
「なるほど。ルルの試練か」
『エェー。ボクモヤリタイ。オ母サンガ好キダッタオ花畑ダシ』
『♪♪』
「じゃあアスちゃんと一緒に試練を頑張る、だそうです」
『ヤッター』
寝る前にルルとアスが入念に話し合って、どの花をどこに撒くか決めていた。
俺は連日ギリギリまでスキルを使って疲れたから、早めに就寝。
そして早寝をすると、夜中に目が覚めるわけで。
目が覚めると行きたくなるのはトイレ。
もちろん、砂船の中にトイレなんてものはない。
砂漠を渡るときには、行きたくなったら船を停めて適当な所で適当にする。
だからここでも適当に――ん?
月明かりに照らされた花畑に、巨大なシルエットが浮かんでいる。
まぁシルエットの正体が火竜だってのはすぐわかるんだけど、何やってんだ?
もしかして、アスのおふくろさんのことを思い出しているとか?
あのドラゴン、意外と一途な男なのかもしれない。
未だにアスのおふくろさんのこと、好きなんだろうな。
だったら喧嘩したからって、意地張って放っておかなきゃよかったのに。
早く謝って迎えに行ってたら、アスのおふくろさんは今でも生きてたはずだ。
たらればの話をしたってしょうがないか。
きっと本人が一番後悔してるだろうしさ。
だから未だに、自分が父親だってアスに伝えられないんだろうから。
にしても、哀愁漂う背中だなぁ。
地上最強のドラゴンなんだから、もっとシャンとすればいいのに。
なんとなく火竜に近づいて、それで声をかけてみた。
「思い出にふけってるのか?」
『……探しておるのだ』
「探し物? 何を探してるんだよ。小さいものなら手伝うぞ?」
しばらく無言で火竜はじっと地面を見つめていたが、やがてボソりと言った。
『種だ』
「種? どんな?」
『……おそらく、人間の拳ほどの』
「デカいな。いや、火竜から見れば小さいのか」
その辺に転がっていれば見つかるだろうけど、土に埋まっていると探すのは難しいな。
それにしても握り拳サイズの種って……巨豆みたいに大きく育つ植物か?
「あ、そういえばあんたの記憶にあった花畑に、物凄く大きな木があったな。もしかしてあの木の?」
見上げると、火竜がゆっくりと頷いた。
なるほど、あの木か。
大精霊は元に戻せと言っていたし、やっぱりあの木も必要かなぁ。
だったら見つける必要がある。
とはいえ月明かりしかないこの時間帯に探し物ってのは、なかなか難しいんじゃないかな。
「明るくなってから探した方がよくないか?」
返事はない。
黙々と地面を見つめる火竜が少しいたたまれなくて、もうちょっと手伝うかと思ったが、
『明日にはまた、スキルを多用せねばなるまい。お前は休め』
そう言われたから、寝ることにした。
あ……すっかり忘れてた。
いそいそと離れた場所でようをたし、砂船に戻る。
火竜はまだ地面を見ているようだ。
アスは毎晩寝てるけど、大人になると寝なくてもよくなるのかな?
翌日。
アス用のレタスを成長させていると――
『ンームニャムニャ』
「アス、起きたか」
『レタスゥノニオイィ』
レタスってそんなにニオイしたっけ?
成長させたばかりのレタスを嗅いでみても、そんな漂うほどニオイはしてない気がする。
「寝ぼけてるだろ。顔洗ってこい」
『オシッコォ』
「離れた所でしろよ」
『ンー』
ぽてぽてと歩き出したアスは、言われた通り離れた場所にある岩の方へと向かった。
しばらくしてぽてぽてと戻ってきたアスは、口に何かを咥えていた。
「何を拾ってきてんだよ」
『ンー。イイニオイスルノ』
ころんっと転がったのは、拳大のクルミのような……。
ん?
「お、おい火竜!!! これっ、これじゃないのか!?」
今朝もあの場所でじーっと地面を見ていた火竜が、ゆっくり振り向く。
そして俺が掲げた物を見て、
『それだ!!』
と、驚いた顔をして叫んだ。
「ほんと。気のせいかもしれないけど、なんだか肌がつるつるになった感じ」
「気のせいじゃないと思うよ。温泉ってそういう効果があるし。あと冷え性とか腰痛とかにも効く成分もあるようだけど、まぁそれは温泉によって違うからなんとも言えないな」
とはいえ、冷え性に効くとかって、砂漠で暮らす人に必要性があるのか謎だけど。
雪遊びを堪能したところで、みんなが寒いと言い出した。
当たり前だ。
さっそく火竜に温泉の場所を聞いて、まずは彼女らに入らせた。
ワームたちにとって、少し熱すぎるってんで――
『汲んだお湯に瓢箪のお水を混ぜて、温くしたのぉ』
『♪♪』
『●♪』
『リリとルルも、つるんつるんになったって言ってるぅ』
うん。なんかてかってるから分かるよ。
ここの温泉は美肌効果が高そうだな。
温泉の後は、夕食にして船でぐっすり休む。
いやぁ、やっぱり温泉効果かなぁ。
めちゃくちゃ熟睡できたし、朝目が覚めた時もスッキリ爽快。
おかげで種増やしの作業も捗った。
翌日も同じように種増やしの作業をせっせと頑張る。
その夜――
「どうかな?」
増やした種で足りるかどうか、ルルに見てもらった。
『♪』
「よさそうだって言っています」
「そか。じゃ、明日はこれを成長させる番だな」
『!♪♪』
「え? ルル……そうですね。大地の大精霊様の試練ですもの、ルルが頑張らなきゃですね」
ん?
「ユタカさんが成長促進のスキルをかけた種は、ルルが撒きたいそうです」
「なるほど。ルルの試練か」
『エェー。ボクモヤリタイ。オ母サンガ好キダッタオ花畑ダシ』
『♪♪』
「じゃあアスちゃんと一緒に試練を頑張る、だそうです」
『ヤッター』
寝る前にルルとアスが入念に話し合って、どの花をどこに撒くか決めていた。
俺は連日ギリギリまでスキルを使って疲れたから、早めに就寝。
そして早寝をすると、夜中に目が覚めるわけで。
目が覚めると行きたくなるのはトイレ。
もちろん、砂船の中にトイレなんてものはない。
砂漠を渡るときには、行きたくなったら船を停めて適当な所で適当にする。
だからここでも適当に――ん?
月明かりに照らされた花畑に、巨大なシルエットが浮かんでいる。
まぁシルエットの正体が火竜だってのはすぐわかるんだけど、何やってんだ?
もしかして、アスのおふくろさんのことを思い出しているとか?
あのドラゴン、意外と一途な男なのかもしれない。
未だにアスのおふくろさんのこと、好きなんだろうな。
だったら喧嘩したからって、意地張って放っておかなきゃよかったのに。
早く謝って迎えに行ってたら、アスのおふくろさんは今でも生きてたはずだ。
たらればの話をしたってしょうがないか。
きっと本人が一番後悔してるだろうしさ。
だから未だに、自分が父親だってアスに伝えられないんだろうから。
にしても、哀愁漂う背中だなぁ。
地上最強のドラゴンなんだから、もっとシャンとすればいいのに。
なんとなく火竜に近づいて、それで声をかけてみた。
「思い出にふけってるのか?」
『……探しておるのだ』
「探し物? 何を探してるんだよ。小さいものなら手伝うぞ?」
しばらく無言で火竜はじっと地面を見つめていたが、やがてボソりと言った。
『種だ』
「種? どんな?」
『……おそらく、人間の拳ほどの』
「デカいな。いや、火竜から見れば小さいのか」
その辺に転がっていれば見つかるだろうけど、土に埋まっていると探すのは難しいな。
それにしても握り拳サイズの種って……巨豆みたいに大きく育つ植物か?
「あ、そういえばあんたの記憶にあった花畑に、物凄く大きな木があったな。もしかしてあの木の?」
見上げると、火竜がゆっくりと頷いた。
なるほど、あの木か。
大精霊は元に戻せと言っていたし、やっぱりあの木も必要かなぁ。
だったら見つける必要がある。
とはいえ月明かりしかないこの時間帯に探し物ってのは、なかなか難しいんじゃないかな。
「明るくなってから探した方がよくないか?」
返事はない。
黙々と地面を見つめる火竜が少しいたたまれなくて、もうちょっと手伝うかと思ったが、
『明日にはまた、スキルを多用せねばなるまい。お前は休め』
そう言われたから、寝ることにした。
あ……すっかり忘れてた。
いそいそと離れた場所でようをたし、砂船に戻る。
火竜はまだ地面を見ているようだ。
アスは毎晩寝てるけど、大人になると寝なくてもよくなるのかな?
翌日。
アス用のレタスを成長させていると――
『ンームニャムニャ』
「アス、起きたか」
『レタスゥノニオイィ』
レタスってそんなにニオイしたっけ?
成長させたばかりのレタスを嗅いでみても、そんな漂うほどニオイはしてない気がする。
「寝ぼけてるだろ。顔洗ってこい」
『オシッコォ』
「離れた所でしろよ」
『ンー』
ぽてぽてと歩き出したアスは、言われた通り離れた場所にある岩の方へと向かった。
しばらくしてぽてぽてと戻ってきたアスは、口に何かを咥えていた。
「何を拾ってきてんだよ」
『ンー。イイニオイスルノ』
ころんっと転がったのは、拳大のクルミのような……。
ん?
「お、おい火竜!!! これっ、これじゃないのか!?」
今朝もあの場所でじーっと地面を見ていた火竜が、ゆっくり振り向く。
そして俺が掲げた物を見て、
『それだ!!』
と、驚いた顔をして叫んだ。