「ルルには大地の大精霊と契約してもらうことになるから、今のうちからアスに手伝って貰って、土の精霊としっかり仲良くなっておいてくれ」
『♪♪』
「はーいって、元気にお返事しています」
謎の釣勝負に負けて、ルルが落ち込まないように先手を打っておいた。
でもこれはルルを慰めるためじゃなく、アスの提案でもある。
仲良くなっているほうが、何かと契約はしやすいだろうからって。
「そういう意味だと、リリ嬢の方が契約が難しいかもなぁ」
「バフォおじさん。そうなのか?」
「下位の精霊との契約だってなぁ、誰でもできるもんじゃねえんだぜ。そのうえ大精霊だ。能力も必要だが、試練を乗り越える必要だってあんだよ」
「試練?」
ユユの頭の上にちょこんと座る大精霊を見た。
『アタシの場合、精霊力を取り戻してくれたお礼もあるから大した試練は与えてないわ。あんたがアタシを騙さないっていう約束が試練なのよ』
「そうだったのか。となると、風や大地の大精霊は、真正面から試練を受けなきゃならないんだな」
雲を任意の場所に送るのだって、普通に考えれば無理難題なことだもんな。
そのぐらいの困難は乗り越えなきゃってことだ。
まぁ乗り越えるのは俺じゃなく、リリとルルになるんだけど。
「ごめんな、リリ、ルル。大変なことに巻き込んで」
『♪』
『♪♪』
「砂漠の砂が土に変わるのは嬉しいことだから気にしないでって」
「何事も経験だと言っています」
リリとルルを撫でると、嬉しそうに尾を振ってくれた。
明日は他の集落を砂船で回って、素材の代理取引の件を話しに行く。
ついでに小麦粉や、少し育てた野菜を木製のプランターに入れて持って行く。
町で購入した――という説明して。
日陰においておけば数日で実を付けるだろう。
あとは村に寄って、次に町へ行く日程を決めよう。
この数カ月の間に集落から運ばれた素材が村にはあると言っていたし、それも整理して持って行かなきゃな。
「じゃ、明日はリリも一緒に砂船で移動だ。ワームの皮膚だと、砂の上を長時間移動できないしな」
『ボクマタ留守番?』
『あら、アタシは行くわよ。その方が好き推しでも試練を緩くしてもらえるかもしれないでしょ』
『じゃー僕も一緒に行かなきゃいけないよね?』
『ボクモォ』
はぁ……仕方ない。
「あの、ルルもご一緒したいそうです。どんな試練なのか、契約はどうするのか予習をしておきたいと」
「大所帯になりそうだな」
『我も……』
「無理。絶対」
出発の朝、「時々《・・》会いにくる」火竜に外出の話をすると、我もと言い出した。
大所帯どころの話じゃない。
そもそも、まず行くのは各集落なんだし、火竜同伴とか阿鼻叫喚再びにしかならないだろう。
アスやワームたちにも、集落に行くときには船室に残って貰うことで了解して貰ったのに。
火竜なんてどこに隠れられるんだよって言う。
『優シイオジチャン。オ家ヲ守ッテネ』
『うむ。我に任せておけばよい』
鼻の下伸びてるぞ。
ワームたちが乗り込むと、さすがに重量で砂船が少しきしむ。
荷物は全部インベントリに入れて、少しでも軽くしなきゃな。
乗船者も最小限にした。
「また留守番ですか……寂しいです」
「仕方ないだろ、マリウス」
ってことでマリウスは留守番。
一緒に行く人間はルーシェとシェリル、それからマストの三人だ。
オーリより一歳だけ年上のマストは、他の集落ともよく行き来していたようなので道安奈なら彼の方がいいとオーリが。
手近な集落まで行ったら、インベントリから土入り木箱を取り出してトマトの種を成長させる。
緑色のトマトがたわわに実った状態で成長を止め、あとは自然に熟すのを待つだけだ。
これを「町で仕入れて来た」と言って集落へ渡す。
代金は今村に送っている素材がからいただくので、気にしないで欲しいと言って。
小麦も同様だ。
「これからは適正価格で取引できるようになる。素材の回収もこの船で各集落を回るから、無理して村まで行く必要もない」
「それはよかった。素材を担いで砂漠を行くのは、それだけで危険が伴っていたからな」
マストの説明で集落の人たちは安心して、取引の件を承諾してくれた。
何より食べ物を送ったってのが大きいのだろう。
本当は水も上げたいんだけど、これはどう説明すればいいのか分からなくて……。
ただ――
『ここの井戸のもっと下の方に地下水が少しはあるようね。アタシが水を汲み上げてあげるわ』
っと、手のひらサイズになった大精霊アクアディーネがそう言って、掘られた井戸よりもっと下にあるという地下水を、井戸に染み出る高さまで汲み上げてくれた。
これで数カ月は最低限の水に困ることはないと。
ただ彼女曰く、砂漠全体の地中に流れる水の量が極端に少なくなっているという。
手を打たなきゃ、本当にこの砂漠では生き物が生きていけない環境になるだろうとも。
これは失敗の許されないミッションになってきたな。
『♪♪』
「はーいって、元気にお返事しています」
謎の釣勝負に負けて、ルルが落ち込まないように先手を打っておいた。
でもこれはルルを慰めるためじゃなく、アスの提案でもある。
仲良くなっているほうが、何かと契約はしやすいだろうからって。
「そういう意味だと、リリ嬢の方が契約が難しいかもなぁ」
「バフォおじさん。そうなのか?」
「下位の精霊との契約だってなぁ、誰でもできるもんじゃねえんだぜ。そのうえ大精霊だ。能力も必要だが、試練を乗り越える必要だってあんだよ」
「試練?」
ユユの頭の上にちょこんと座る大精霊を見た。
『アタシの場合、精霊力を取り戻してくれたお礼もあるから大した試練は与えてないわ。あんたがアタシを騙さないっていう約束が試練なのよ』
「そうだったのか。となると、風や大地の大精霊は、真正面から試練を受けなきゃならないんだな」
雲を任意の場所に送るのだって、普通に考えれば無理難題なことだもんな。
そのぐらいの困難は乗り越えなきゃってことだ。
まぁ乗り越えるのは俺じゃなく、リリとルルになるんだけど。
「ごめんな、リリ、ルル。大変なことに巻き込んで」
『♪』
『♪♪』
「砂漠の砂が土に変わるのは嬉しいことだから気にしないでって」
「何事も経験だと言っています」
リリとルルを撫でると、嬉しそうに尾を振ってくれた。
明日は他の集落を砂船で回って、素材の代理取引の件を話しに行く。
ついでに小麦粉や、少し育てた野菜を木製のプランターに入れて持って行く。
町で購入した――という説明して。
日陰においておけば数日で実を付けるだろう。
あとは村に寄って、次に町へ行く日程を決めよう。
この数カ月の間に集落から運ばれた素材が村にはあると言っていたし、それも整理して持って行かなきゃな。
「じゃ、明日はリリも一緒に砂船で移動だ。ワームの皮膚だと、砂の上を長時間移動できないしな」
『ボクマタ留守番?』
『あら、アタシは行くわよ。その方が好き推しでも試練を緩くしてもらえるかもしれないでしょ』
『じゃー僕も一緒に行かなきゃいけないよね?』
『ボクモォ』
はぁ……仕方ない。
「あの、ルルもご一緒したいそうです。どんな試練なのか、契約はどうするのか予習をしておきたいと」
「大所帯になりそうだな」
『我も……』
「無理。絶対」
出発の朝、「時々《・・》会いにくる」火竜に外出の話をすると、我もと言い出した。
大所帯どころの話じゃない。
そもそも、まず行くのは各集落なんだし、火竜同伴とか阿鼻叫喚再びにしかならないだろう。
アスやワームたちにも、集落に行くときには船室に残って貰うことで了解して貰ったのに。
火竜なんてどこに隠れられるんだよって言う。
『優シイオジチャン。オ家ヲ守ッテネ』
『うむ。我に任せておけばよい』
鼻の下伸びてるぞ。
ワームたちが乗り込むと、さすがに重量で砂船が少しきしむ。
荷物は全部インベントリに入れて、少しでも軽くしなきゃな。
乗船者も最小限にした。
「また留守番ですか……寂しいです」
「仕方ないだろ、マリウス」
ってことでマリウスは留守番。
一緒に行く人間はルーシェとシェリル、それからマストの三人だ。
オーリより一歳だけ年上のマストは、他の集落ともよく行き来していたようなので道安奈なら彼の方がいいとオーリが。
手近な集落まで行ったら、インベントリから土入り木箱を取り出してトマトの種を成長させる。
緑色のトマトがたわわに実った状態で成長を止め、あとは自然に熟すのを待つだけだ。
これを「町で仕入れて来た」と言って集落へ渡す。
代金は今村に送っている素材がからいただくので、気にしないで欲しいと言って。
小麦も同様だ。
「これからは適正価格で取引できるようになる。素材の回収もこの船で各集落を回るから、無理して村まで行く必要もない」
「それはよかった。素材を担いで砂漠を行くのは、それだけで危険が伴っていたからな」
マストの説明で集落の人たちは安心して、取引の件を承諾してくれた。
何より食べ物を送ったってのが大きいのだろう。
本当は水も上げたいんだけど、これはどう説明すればいいのか分からなくて……。
ただ――
『ここの井戸のもっと下の方に地下水が少しはあるようね。アタシが水を汲み上げてあげるわ』
っと、手のひらサイズになった大精霊アクアディーネがそう言って、掘られた井戸よりもっと下にあるという地下水を、井戸に染み出る高さまで汲み上げてくれた。
これで数カ月は最低限の水に困ることはないと。
ただ彼女曰く、砂漠全体の地中に流れる水の量が極端に少なくなっているという。
手を打たなきゃ、本当にこの砂漠では生き物が生きていけない環境になるだろうとも。
これは失敗の許されないミッションになってきたな。