「こ、これを私たちに？」
「いいんですか、ユタカさん」
二人が夢中で生地を見ている間に何か贈り物をと考えてて、いいものを見つけたから買っておいた。
指輪は狩りの時には邪魔になるようだったし、じゃー別のものをと思って。
「二人の髪色に合わせた宝石が付いててさ、いいなと思ったんだ」
「これ、首に付けるものね」
「チョーカー、でしたっけ。お店の方が言ってた気がします」
あぁ、そうそう。チョーカーだ。
首元にはピンク色の宝石と薄水色の宝石とがついたチョーカーだ。
ピンクトルマリンとアクアマリンって言ってたかな？
「本当はさ、町で渡そうと思っていたんだけど……まぁ、あの騒ぎだったろ」
「あはは。そうね。あの騒ぎの中渡されても、喜ぶ暇もなかったかも」
「ですね。ありがとうございます、ユタカさん」
「じゃ、私たちもお礼に、ユタカの服を編まなきゃね」
「え、作ってくれるの？」
二人は笑顔で頷き、買った生地を見せてくれた。
ほんのり緑色がかったものと、黒い色の麻の生地だ。
「そろそろこの学生服もヘタッてきてたし、新しい服は嬉しいな」
「生地があるだけ、何着か作るわ」
「お店の方に繊維の取り方なども教えていただいたのですが、こんなことなら種を買っておくべきでしたね」
「ふっふっふ。それなら心配無用だ」
インベントリから取り出したのは、麻――リネンの種だ。
自分のスキルを活かすために、買わない訳がない。
翌日、さっそくリネンを成長させた。
「あれ？ リネンって花だったのか」
「わぁ、綺麗な花」
「ほんとですね。薄紫のお花、とても綺麗です」
俺も知らなかった。花が咲くなんて。
ひょろっと背の高い茎の先端に、菫色の花が咲いている。
根本から刈り取って、何本か束にしたら一カ月ほど地面に放置して腐らせるのだそうだ。
「スキルで腐らせたらダメなのか？」
「どうなんでしょう？」
「量が多いから、試しに少しやってみる？」
そうしよう。
『ナニナニ？』
「お、来たな。好奇心旺盛お子様」
さっそくアスがやって来た。
『キタヨォ。ン？ ナンダカ土ノ元気、ナクナッテル』
「え！？」
元気がなくなっている？
アスが土の精霊を呼び出し、何か話し始めた。
すると精霊が土を弄った後、首を振った。
『ヤッパリネ、元気少シ減ッタッテ。ソノ葉ッパガネ、土ノ栄養イッパイモッテイクンダッテ』
「麻がか……」
『デモ大丈夫。他ノ植エレバイイッテ。ソノ葉ッパハ同ジ場所デ成長サセナイヨウガイインダッテ』
知らなかった。
知らないまま繰り返し同じ場所で成長させてたら、せっかく土壌改良した土がまたもとに戻ってたかもな。
「アス、教えてくれてありがとうな」
「事前に分かってよかったわね」
「アスちゃんのお手柄です」
『エヘヘ。エヘヘ』
あんまり褒めると調子に乗るから……。
笑みを浮かべるルーシェとシェリルの首には、俺が贈ったチョーカーが巻かれてある。
誰かに贈り物をする日が来るなんて、思ってもみなかった。
初めての物としては、いいものをチョイス出来たんじゃなかろうか。
「おぉ、お嬢ちゃんたち、いい物巻いてんじゃねえか」
「あ、バフォおじさん。ふふ、いいでしょう」
「ユタカさんが買ってくださったんです」
「はぁぁん、いい首輪じゃねえか」
首輪言うなよ。
「あとは紐付けときゃ逃げられねえぜ」
「その首輪じゃないって！」
「イッヒッヒッヒッヒ」
わざと言ってんだろ、このジジィ。
「おう、そうだ。昨日、火竜のダンナと話ししてたろ。水の大精霊がどうとかってよ」
「あ、うん。おじさん、何か知ってるのか？」
「いや、オレぁ大精霊が神殿に閉じ込められた後に引っ越してきてるからよぉ、直接は知らねえんだが。ほれ、十数年前に大きな嵐があったじゃねえか。あんときにな、なーんか山の上の方で水の精霊の気配を感じたのよ。まぁすぐ消えちまったし、嵐で山の上の方あかなり雨も降ったからな、それでだろうと思ったんだがよ」
山の上の方。
そう言えば、ユユたちが言ってたな。
渓谷の外に行ってユユたちに会いに行く。
「ユユ。前に山の上の方に湖があるとか言ってなかったか？」
『ん？ あ、うんうん。湖あるよ。僕たちワーム、近づくと危ないって言われてた』
「そう、その湖だ。遠いのか？」
『んー……人間だと地面の上歩かなきゃいけないから、たぶん遠い？』
そっか。ユユたちワームなら、ある程度土がしっかりしていれば潜れるんだったな。
神殿に閉じ込められていた大精霊が、山の上の方にある湖に……。
いや、湖で何をするんだろう？
気にはなる……行ってみるべきかな。
「いいんですか、ユタカさん」
二人が夢中で生地を見ている間に何か贈り物をと考えてて、いいものを見つけたから買っておいた。
指輪は狩りの時には邪魔になるようだったし、じゃー別のものをと思って。
「二人の髪色に合わせた宝石が付いててさ、いいなと思ったんだ」
「これ、首に付けるものね」
「チョーカー、でしたっけ。お店の方が言ってた気がします」
あぁ、そうそう。チョーカーだ。
首元にはピンク色の宝石と薄水色の宝石とがついたチョーカーだ。
ピンクトルマリンとアクアマリンって言ってたかな？
「本当はさ、町で渡そうと思っていたんだけど……まぁ、あの騒ぎだったろ」
「あはは。そうね。あの騒ぎの中渡されても、喜ぶ暇もなかったかも」
「ですね。ありがとうございます、ユタカさん」
「じゃ、私たちもお礼に、ユタカの服を編まなきゃね」
「え、作ってくれるの？」
二人は笑顔で頷き、買った生地を見せてくれた。
ほんのり緑色がかったものと、黒い色の麻の生地だ。
「そろそろこの学生服もヘタッてきてたし、新しい服は嬉しいな」
「生地があるだけ、何着か作るわ」
「お店の方に繊維の取り方なども教えていただいたのですが、こんなことなら種を買っておくべきでしたね」
「ふっふっふ。それなら心配無用だ」
インベントリから取り出したのは、麻――リネンの種だ。
自分のスキルを活かすために、買わない訳がない。
翌日、さっそくリネンを成長させた。
「あれ？ リネンって花だったのか」
「わぁ、綺麗な花」
「ほんとですね。薄紫のお花、とても綺麗です」
俺も知らなかった。花が咲くなんて。
ひょろっと背の高い茎の先端に、菫色の花が咲いている。
根本から刈り取って、何本か束にしたら一カ月ほど地面に放置して腐らせるのだそうだ。
「スキルで腐らせたらダメなのか？」
「どうなんでしょう？」
「量が多いから、試しに少しやってみる？」
そうしよう。
『ナニナニ？』
「お、来たな。好奇心旺盛お子様」
さっそくアスがやって来た。
『キタヨォ。ン？ ナンダカ土ノ元気、ナクナッテル』
「え！？」
元気がなくなっている？
アスが土の精霊を呼び出し、何か話し始めた。
すると精霊が土を弄った後、首を振った。
『ヤッパリネ、元気少シ減ッタッテ。ソノ葉ッパガネ、土ノ栄養イッパイモッテイクンダッテ』
「麻がか……」
『デモ大丈夫。他ノ植エレバイイッテ。ソノ葉ッパハ同ジ場所デ成長サセナイヨウガイインダッテ』
知らなかった。
知らないまま繰り返し同じ場所で成長させてたら、せっかく土壌改良した土がまたもとに戻ってたかもな。
「アス、教えてくれてありがとうな」
「事前に分かってよかったわね」
「アスちゃんのお手柄です」
『エヘヘ。エヘヘ』
あんまり褒めると調子に乗るから……。
笑みを浮かべるルーシェとシェリルの首には、俺が贈ったチョーカーが巻かれてある。
誰かに贈り物をする日が来るなんて、思ってもみなかった。
初めての物としては、いいものをチョイス出来たんじゃなかろうか。
「おぉ、お嬢ちゃんたち、いい物巻いてんじゃねえか」
「あ、バフォおじさん。ふふ、いいでしょう」
「ユタカさんが買ってくださったんです」
「はぁぁん、いい首輪じゃねえか」
首輪言うなよ。
「あとは紐付けときゃ逃げられねえぜ」
「その首輪じゃないって！」
「イッヒッヒッヒッヒ」
わざと言ってんだろ、このジジィ。
「おう、そうだ。昨日、火竜のダンナと話ししてたろ。水の大精霊がどうとかってよ」
「あ、うん。おじさん、何か知ってるのか？」
「いや、オレぁ大精霊が神殿に閉じ込められた後に引っ越してきてるからよぉ、直接は知らねえんだが。ほれ、十数年前に大きな嵐があったじゃねえか。あんときにな、なーんか山の上の方で水の精霊の気配を感じたのよ。まぁすぐ消えちまったし、嵐で山の上の方あかなり雨も降ったからな、それでだろうと思ったんだがよ」
山の上の方。
そう言えば、ユユたちが言ってたな。
渓谷の外に行ってユユたちに会いに行く。
「ユユ。前に山の上の方に湖があるとか言ってなかったか？」
『ん？ あ、うんうん。湖あるよ。僕たちワーム、近づくと危ないって言われてた』
「そう、その湖だ。遠いのか？」
『んー……人間だと地面の上歩かなきゃいけないから、たぶん遠い？』
そっか。ユユたちワームなら、ある程度土がしっかりしていれば潜れるんだったな。
神殿に閉じ込められていた大精霊が、山の上の方にある湖に……。
いや、湖で何をするんだろう？
気にはなる……行ってみるべきかな。
