「よし。じゃあ試し打ちも兼ねてやりますか」
「「おーっ」」

 早ければ明日、もしくは明後日には騎士団が砂船で乗り込んでくるだろう。
 それに備えた準備を始めた。

 綿で編んだロープと布、それから竹を利用して巨大パチンコを作ってある。
 これにある物を入れた瓢箪を乗せ――

「発射!」
『飛ンダ、飛ンダァ』
「どのくらい飛んだかな?」
『今ネェ、ユユタチガ追イカケテルゥ』
「結構飛んだモグな。だいたい二五〇メートルぐらいモグか?」
「瓢箪は?」
「うぅむ。さすがにここからじゃ割れたかどうかわからんモグなぁ」

 仕方ないので下に行って、ユユたちから聞いた。

『割れてたよぉ。ドロドロしたの出て来てた』
「先に言った通り、触らなかっただろうな?」
『うん。大丈夫』
「これからたくさん瓢箪を飛ばすから、お前たちはドロドロには絶対近づくなよ」
『はーい』

 すぐに上に戻って、瓢箪が割れていたことを報告する。
 頑丈な瓢箪とはいえ、さすがにこの飛距離を飛ばせば砂の上でも割れるか。
 まぁ割れてくれた方がいいんだが。

「じゃ、次は薪をよろしく」
「モグ」 

 瓢箪をある程度飛ばした後、次にこの数日で成長させた木をカットしたものを発射させまくった。
 今はただ飛ばすだけ。

 次にニードルサボテンだ。
 こちらはうっかり棘を発射されると危険だから、板で囲った場所で成長させる。
 種を集めるためだ。
 種が自然に落下したら、またそぉっと触れて成長させ、また種を採る。
 このサボテン、花はだいたい二十年に一度ぐらい咲かせるようだ。
 五年ずつ成長させると、だいたい四回目か五回目に花を咲かせていた。
 寿命は一五〇年ぐらい。
 七回種を採ったら、棘を発射させて収穫。

 サボテンエキスが大量になるけど、どうしても種が欲しいんだよ。

「砂船も手に入ったんだし、他の集落にお裾分けするものいいわね」
「そうか、船があるんだから――」
「町に行けばエキスを買い取ってもらえるかもしれませんね! 高級品ですし、買い手には困らないと思いますっ」

 マリウスの言う通り、エキスを売ってお金にするのもいいな。
 もちろんお金なんてここじゃ意味のない物だけど、砂船で移動が短縮されるなら町で買い物をしたっていい。
 ここでは手に入らない植物の種とかあったら欲しい。

 ま、その前にご近所さんへのお裾分けかな。
 エキスなら「サボテンをたくさん見つけたから」とか、賊から奪った砂船で探索範囲が広がったからとか、俺のスキルと関連させない言い訳がいくらでも出来るし。

 種をインベントリに入れてっと……この数日で木の種もいっぱい増やしたなぁ。

「ユタカさん。そろそろ休みませんか?」
「そうよ。あんたここ数日、ずっとスキル使いっぱなしだったでしょ」
「今日は早めに切り上げて、美味しいもの食べてゆっくり休んでください」
「というか、命令よ。こうでも言わないと、あんた、いつまでもスキルを使おうとするんだもの」

 俺のこと、心配してくれているんだな。
 まぁ確かにここんとこ頑張ったもんなぁ。

「分かった。じゃあまずは風呂だな」
「ゆっくりお入りください」
「サボテンエキスの石鹸、出来てるから使って」
「あ、あぁ。使ってみるよ」

 リンスはいらないんだけど、まぁせっかくだし使ってみるか。

「ふふ。すっごいわよきっと」
「ん、きっと?」
「普段はボンズサボテンのエキスと混ぜて作っているので、艶出し効果が薄いんです」
「でも今回のは完全ニードルサボテンエキスよ。ぜーったいつやっつやよ」

 艶々にはならなくていいんだけど。

 共同風呂はまだお湯が張られていなかった。
 窯に火を入れ、上の段に水を流し込み、沸かす。
 まだ気温の高い時間帯だし、少し温めでもいいな。

 なんだかんだと入るまでに三〇分ぐらいかかったな。

「ふぅ~、気持ちいいなぁ。どれどれ。リンスを使ってみるか」

 みんなが艶出し石鹸と言っているものは液体で、小さな瓢箪に入れられていた。
 この世界じゃ髪も体も同じ固形石鹸で洗う。使い分けはされていないが、地球にいたころに使っていた石鹸と比べてパリパリとはしない。

 まずは全身を固形石鹸で洗って、洗い流したら瓢箪の中の艶出し石鹸を髪に馴染ませる。
 しばらく椅子に座ってぼぉっとしてから、しっかり流す。
 しっかり、しっか……

「なにこの艶々ぁぁぁ」

 え……俺の猫っ毛な髪が……サラサラになる?
 普段はふわっとした前髪もぺったんこ。
 目に掛るギリギリラインだったせいで、今は完全に隠れてしまってるな。
 視界が遮られて邪魔。
 
 風呂から上がってツリーハウスに向かうと、家の前にいたアスが俺を見て首を傾げていた。

『ダァレ?』

 艶石鹸使うの、やめようと決めた瞬間だった。