砂船をゲット出来て喜んでもいられない。
集落に戻ってすぐ、会議を開いた。
「アスを狙っていた商人が、王国と手を組んだ。それで砂船を十五隻ほど用意するらしい」
「一隻で何人乗れるんだい?」
「五〇人ぐらいだ。代わりに荷物は積みこめないようだけどな」
七五〇人が一度に、しかも素早く攻めてくることになる。
さっきの砂船の連中は偵察隊。
集落の位置は残念ながら、商人の口から聞いたそうだ。
商人が嘘を言っていないかの確認と、こちらの戦力を偵察に来たと奴らは話していた。
「砂船だと南からここまで、片道二日半だったとあいつら言ってたな」
「そうですね。あの方々が戻らなければ、きっと攻めてくるはず」
「帰りに二日半、偵察のことも考えたら、三日は待ってるはず。それから攻めてくるとなると――」
大人数が動くとなれば、スムーズにはいかないだろう。
それでも、少なく見積もっても五日後、もしくは六日後には攻めてくるかもしれない。
その時は七〇〇人以上だ。
「しばらくは見張りを立てて、襲撃に備えないとな。準備もしておこう」
「分かった」
「わしらも準備をするモグ」
「モグモグ」
俺もせっせと成長《・・》させないとな。
まずは水の木から瓢箪を全部収穫し、中身は――
『わーい。お水だぁ』
微々たる量だけど、砂漠側に流した。
砂漠といっても、ユユたちがせっせと砂を土壌改良してくれているおかげで、若干土っぽくなり始めている部分だ。
「ユユたちは水が好きなのか?」
『んー、お水だけのところは溺れそうで怖いよ。でも湿った土は好き』
「ワームって溺れるのか……」
『うん。ボクの体の長さより深い所だとね。ボクら体全体で呼吸してるけど、自ら少しでも出てたら大丈夫』
ふぅーん。
まぁあの地底湖でもない限り、ワームの体より深い水場なんてないだろう。
『前に仲間が山の上の方で溺れて死んだって聞いたんだ。怖いよねぇ』
『お水怖い?』
『深いお水には近づいちゃダメだけど、この辺りは浅いからいいよぉ』
お、ちゃんと子供にも教えてやってるんだな。
教育マ……ママ? パパ? まぁどっちでもいいや、とにかくえら――ん?
「ユユっ。山の上の方で仲間が溺れたって、どこだ!?」
『え、ずっと上の方』
「それはその……洞窟の中か?」
『違うよ。おっきな水たまりがあるの。んっとね――』
ユユは砂漠の上を這い、大きな円を描いた。
集落がすっぽり入るほどの、運動場ほどの大きさだ。
『これのねぇ、十倍ぐらーい』
大きい……アスがいた地底湖だって、運動場半分より少し小さかったんだぞ。
それが運動場の十倍って……そんな水、本当にあるのか!?
その日の夜。
俺はルーシェとシェリルに、自分のことを全部話した。
証人としてマリウスにも同席して貰ってだ。
「ユタカさんが……別の世界から来た方……なのですか?」
「そうなんだ……黙っててゴメン。どう話せばいいか分からなかったし、話さない方がいいのかもと思って」
「今になって教えてくれたのは、その、連れ戻そうとしている王女様のことがあるから?」
「うん、それもある。まぁ話がややこしくなる前に伝えとこうと思ってさ」
「マリウスさんもご存じだったってことですよね?」
「はい、まぁ。僕が直接、その召喚儀式には参加していませんが、宮廷魔術師である師は召喚儀式にいましたので」
宮廷魔術師の弟子ってことは、マリウスって意外と有能な魔術師だったのか?
「ユタカさん……お辛かったでしょう?」
「え?」
「元の世界に家族は?」
「あー、前に話した事故で家族は亡くなったってのは、本当なんだ。だから戻った所で、おかえりと言ってくれる人は誰もいない」
「そう、だったのですか……じゃ……私たちがいつでも、おかえりって言います。ね、シェリルちゃん」
「ゔん」
「ちょ、何泣いてんだよシェリルっ。両親亡くしたの、俺だけじゃなくってそっちもだろ」
「そうだけどぉ」
まったく……俺まで貰い泣きしそうじゃな……。
「なんでマリウスが泣いてんだよ」
「らって、らって……うえぇーん」
「いい年した大人が泣くなよ!」
「大人だって悲しいときや感動した時は、泣くんですよおぉぉ」
なんか貰い泣きしそうだったけど、一瞬で引っ込んだよ。
ま、いっか。
泣いてる三人の背中をぽんぽんしてやって、落ち着いた所でお茶を入れて一息ついた。
「ふぅ……にしても許せないわ!」
「は、はい?」
「ですです!」
「勝手に召喚しておいて、必要ないスキルだったから砂漠に強制転送したんでしょ?」
「一歩間違えば命を落としていたかもしれないんですよ。許せません!」
さっきまで泣いてたのに、今度は怒ってる。
「作物が不作だからユタカが必要? だから無理やり連れ戻そうだなんて」
「自業自得です! ユタカさんは絶対、ユタカさんを連れて行かせたりしませんっ」
「「私たちが守ってあげる」」
「あ、うん……あ、ありがとう」
俺が二人を守れるようになるのは、いつのことになるのだろうか。
「僕もお守りしますっ」
「いや、マリウスはいいから」
「そんなぁ」
男にまで守られたくないよ!
集落に戻ってすぐ、会議を開いた。
「アスを狙っていた商人が、王国と手を組んだ。それで砂船を十五隻ほど用意するらしい」
「一隻で何人乗れるんだい?」
「五〇人ぐらいだ。代わりに荷物は積みこめないようだけどな」
七五〇人が一度に、しかも素早く攻めてくることになる。
さっきの砂船の連中は偵察隊。
集落の位置は残念ながら、商人の口から聞いたそうだ。
商人が嘘を言っていないかの確認と、こちらの戦力を偵察に来たと奴らは話していた。
「砂船だと南からここまで、片道二日半だったとあいつら言ってたな」
「そうですね。あの方々が戻らなければ、きっと攻めてくるはず」
「帰りに二日半、偵察のことも考えたら、三日は待ってるはず。それから攻めてくるとなると――」
大人数が動くとなれば、スムーズにはいかないだろう。
それでも、少なく見積もっても五日後、もしくは六日後には攻めてくるかもしれない。
その時は七〇〇人以上だ。
「しばらくは見張りを立てて、襲撃に備えないとな。準備もしておこう」
「分かった」
「わしらも準備をするモグ」
「モグモグ」
俺もせっせと成長《・・》させないとな。
まずは水の木から瓢箪を全部収穫し、中身は――
『わーい。お水だぁ』
微々たる量だけど、砂漠側に流した。
砂漠といっても、ユユたちがせっせと砂を土壌改良してくれているおかげで、若干土っぽくなり始めている部分だ。
「ユユたちは水が好きなのか?」
『んー、お水だけのところは溺れそうで怖いよ。でも湿った土は好き』
「ワームって溺れるのか……」
『うん。ボクの体の長さより深い所だとね。ボクら体全体で呼吸してるけど、自ら少しでも出てたら大丈夫』
ふぅーん。
まぁあの地底湖でもない限り、ワームの体より深い水場なんてないだろう。
『前に仲間が山の上の方で溺れて死んだって聞いたんだ。怖いよねぇ』
『お水怖い?』
『深いお水には近づいちゃダメだけど、この辺りは浅いからいいよぉ』
お、ちゃんと子供にも教えてやってるんだな。
教育マ……ママ? パパ? まぁどっちでもいいや、とにかくえら――ん?
「ユユっ。山の上の方で仲間が溺れたって、どこだ!?」
『え、ずっと上の方』
「それはその……洞窟の中か?」
『違うよ。おっきな水たまりがあるの。んっとね――』
ユユは砂漠の上を這い、大きな円を描いた。
集落がすっぽり入るほどの、運動場ほどの大きさだ。
『これのねぇ、十倍ぐらーい』
大きい……アスがいた地底湖だって、運動場半分より少し小さかったんだぞ。
それが運動場の十倍って……そんな水、本当にあるのか!?
その日の夜。
俺はルーシェとシェリルに、自分のことを全部話した。
証人としてマリウスにも同席して貰ってだ。
「ユタカさんが……別の世界から来た方……なのですか?」
「そうなんだ……黙っててゴメン。どう話せばいいか分からなかったし、話さない方がいいのかもと思って」
「今になって教えてくれたのは、その、連れ戻そうとしている王女様のことがあるから?」
「うん、それもある。まぁ話がややこしくなる前に伝えとこうと思ってさ」
「マリウスさんもご存じだったってことですよね?」
「はい、まぁ。僕が直接、その召喚儀式には参加していませんが、宮廷魔術師である師は召喚儀式にいましたので」
宮廷魔術師の弟子ってことは、マリウスって意外と有能な魔術師だったのか?
「ユタカさん……お辛かったでしょう?」
「え?」
「元の世界に家族は?」
「あー、前に話した事故で家族は亡くなったってのは、本当なんだ。だから戻った所で、おかえりと言ってくれる人は誰もいない」
「そう、だったのですか……じゃ……私たちがいつでも、おかえりって言います。ね、シェリルちゃん」
「ゔん」
「ちょ、何泣いてんだよシェリルっ。両親亡くしたの、俺だけじゃなくってそっちもだろ」
「そうだけどぉ」
まったく……俺まで貰い泣きしそうじゃな……。
「なんでマリウスが泣いてんだよ」
「らって、らって……うえぇーん」
「いい年した大人が泣くなよ!」
「大人だって悲しいときや感動した時は、泣くんですよおぉぉ」
なんか貰い泣きしそうだったけど、一瞬で引っ込んだよ。
ま、いっか。
泣いてる三人の背中をぽんぽんしてやって、落ち着いた所でお茶を入れて一息ついた。
「ふぅ……にしても許せないわ!」
「は、はい?」
「ですです!」
「勝手に召喚しておいて、必要ないスキルだったから砂漠に強制転送したんでしょ?」
「一歩間違えば命を落としていたかもしれないんですよ。許せません!」
さっきまで泣いてたのに、今度は怒ってる。
「作物が不作だからユタカが必要? だから無理やり連れ戻そうだなんて」
「自業自得です! ユタカさんは絶対、ユタカさんを連れて行かせたりしませんっ」
「「私たちが守ってあげる」」
「あ、うん……あ、ありがとう」
俺が二人を守れるようになるのは、いつのことになるのだろうか。
「僕もお守りしますっ」
「いや、マリウスはいいから」
「そんなぁ」
男にまで守られたくないよ!