結構歩いたかなぁ。
右も左も、前も後ろも砂だらけ。
「んー、ここいらで一旦引き返すかなぁ」
杉の木を目印代わりに、ここまで五本植えて来た。
また眩暈に襲われるといけないから、その都度、木の根元で少し休憩してきたけど。
ここに六本目を植えて、来た道を引き返す。
しばらく歩くと、遠くにぼんやりと杉の木が見え始めて……同時に砂煙が舞い上がった。
「はひ?」
舞い上がった砂煙から飛び出してきたのは、きょ、恐竜!?
まっ。えっ?
ええぇぇぇーっ!?
『グオオォォォオオオォォォッ』
「なっ、ここは……ここは、モンスター〇ンターの世界かよ!?」
ティラノサウルスというより、スピノサウルスみたいな形だ。
背中に大きな背びれのようなものが――って、呑気に観察している場合か!?
に、逃げろっ。
ここは恐竜の世界なのか?
でも地球の恐竜とは違う。スピノに角はないし、尾も二本じゃない。
ならあれは……モンスター?
「やあぁぁぁーっ」
え?
女の子の声がして、それが頭の上から。
見上げた時には誰もいなかったけれど、代わりにスピノの足元にいた。
薄桃色の長い髪の女の子が。
「あんた、邪魔よっ」
更に後ろから――いや、俺が逃げようとしていた方向から別の女の子の声がした。
ほんのり青みがかった銀髪の女の子だ。
「ぼうっと突っ立ってないで、武器を取りなさいよっ」
「ぶ、武器?」
「まさか武器も持たずに出歩いてたっていうの!?」
いや、そもそも持ってないんだけど。持たせても貰えなかったし。
こっちの子はやや大きめの弓を持ち、桃色の髪の子は身の丈もあるような大剣を構えて恐竜と対峙している。
どっからどうみてもモン〇ンだ。
「死にたいの、あんた!?」
「いや、あの、これには訳が……」
「シェリル、ちゃん……もう、持たない、ですぅ」
「ルーシェ!」
大剣の子の悲痛な声が聞こえた。
あんな小さな体で恐竜の相手をするなんて、無理過ぎるだろう。
ヒュンっと風を切る音がして矢が飛んでいく。
よく見ると、この二人結構ボロボロだ。
ボロボロなのに、まさか俺を助けようと駆け付けてくれたのか?
どうしよう。
俺のせいで二人が怪我でもしたら――いや、怪我で済めば御の字だろう。
くっそ。
こんな時、戦闘系スキルだったらよかったのに。
でもそしたら俺、砂漠になんかいなかったか。
「に、逃げた方がよくないか?」
「逃げられると思ってんの?」
その間も二人は必死に戦っている。
大剣の子は疲れ切った様子で、攻撃を受け止めるので必死だ。
弓の攻撃は、硬い皮膚相手にはあまり効果がなさそうに見える。
逃げることも出来ない。
倒すことも出来ない。
そんなの、負けに決まってるじゃないか。
農業系チートスキルでも、何か出来ないか?
植物で足止め……そのためにいったい何本必要になるんだ。
なにか他に、他にないかっ。
「インベントリ・オープン」
樫の木――調味料の木――果物の木――小麦の木――竹――巨豆――。
竹――大量に生やせれば足止めは出来そうだ。
だけどあっさり迂回されて終わりな気もする。
完全な足止めをするには、蔓系植物で――
豆!?
わざわざ巨豆って書いてあるんだ、恐竜の足ぐらい絡みとったりとか……。
「あぁっ。何もやらないよりはマシだ!」
巨豆の種――というより豆そのものを掴みだす。
うわっ、本当にデカい。子供の握り拳ぐらいあるんじゃないか?
「"成長促進"!」
大きな芽が出る。
あいつの傍で成長させないと意味がない。
「少しだけ、少しだけでいいから、そいつの気を逸らしてくれっ」
「なんですって!?」
「す、少しだけですのぉ」
怖い……でも彼女たちだって命がけなんだ。
俺だけ何もしない訳にはいかないだろ!
砂に足を取られながらも走って、奴の背後に回り込む。
急いで砂に豆を植え、もう一度成長させた。
奴の尾っぽに巻き付け!
――と考え、いや、祈りながらスキルを使う。
お、おおぉ。
砂がもこっと盛り上がる。
「うひぃ!?」
わっ、わっ、わっ。予想以上にデカい!
これなら恐竜の尾っぽも、よし、よしいけ!
『ンギュオオオォォォォ』
「もう一本は無理かっ」
さすがに一株じゃ足りなかった。
急いで豆をもう一粒取り出して――
「"成長――"」
促進。
そう唱える直前に、巨豆に巻き付かれた尾っぽの先っぽが俺の手に触れ豆が落ちた。
「"――促進"。ああぁぁっ」
『グギョッ』
豆じゃなく、恐竜を成長させてしまったぁぁ……あれ?
「あ、あんた何したのよ!? スピュラウスが大きくなってるじゃないっ」
「お、大きく? あっ」
そうだ。全ての生命の成長――あの時、荒木はそう言った。
そのあとでたとえば野菜をというから、てっきり植物限定だと思い込んでいたけど。
だけど全ての生命だ。生命と言えば当然、生き物だって含まれるだろう。
そう。
こいつも成長させられる。
成長させられるなら――
「寿命を迎えるまで成長しろ! "成長促進"!!」
びちびちしている尾の先にちょこんと触れ、スキルを使った。
ミイラのように干からびるまで成長しろと、自分でも意味の分からないことを考えながら。
するとどうだ!
本当に恐竜が見る見る間に干からびて、まさにミイラみたいになったじゃないか。
皮膚は灰色に変色し、ひび割れ、その下の肉はどこにいったのか分からないほど痩せこけている。
『ア、ガ……』
どうっと砂を巻き上げ恐竜が倒れた。
そのまま血泡を吹いて、動かなくなってしまった……。
マジ、か。
農業系チートスキルだったはずなのに、普通にチートスキルじゃないかこれ。
「あらあら、どうしましょう」
「ん?」
「あ、あんた……いったい何をしたのよ!」
「え?」
ミイラと化した恐竜の隣で、桃色の髪の子は困ったように見下ろしている。
銀髪の子は何故か怒ったように俺を睨んでいた。
「これじゃ肉も素材も取れないでしょっ!」
この世界は……
やっぱり、
モンスター〇ンターかもしれない。
右も左も、前も後ろも砂だらけ。
「んー、ここいらで一旦引き返すかなぁ」
杉の木を目印代わりに、ここまで五本植えて来た。
また眩暈に襲われるといけないから、その都度、木の根元で少し休憩してきたけど。
ここに六本目を植えて、来た道を引き返す。
しばらく歩くと、遠くにぼんやりと杉の木が見え始めて……同時に砂煙が舞い上がった。
「はひ?」
舞い上がった砂煙から飛び出してきたのは、きょ、恐竜!?
まっ。えっ?
ええぇぇぇーっ!?
『グオオォォォオオオォォォッ』
「なっ、ここは……ここは、モンスター〇ンターの世界かよ!?」
ティラノサウルスというより、スピノサウルスみたいな形だ。
背中に大きな背びれのようなものが――って、呑気に観察している場合か!?
に、逃げろっ。
ここは恐竜の世界なのか?
でも地球の恐竜とは違う。スピノに角はないし、尾も二本じゃない。
ならあれは……モンスター?
「やあぁぁぁーっ」
え?
女の子の声がして、それが頭の上から。
見上げた時には誰もいなかったけれど、代わりにスピノの足元にいた。
薄桃色の長い髪の女の子が。
「あんた、邪魔よっ」
更に後ろから――いや、俺が逃げようとしていた方向から別の女の子の声がした。
ほんのり青みがかった銀髪の女の子だ。
「ぼうっと突っ立ってないで、武器を取りなさいよっ」
「ぶ、武器?」
「まさか武器も持たずに出歩いてたっていうの!?」
いや、そもそも持ってないんだけど。持たせても貰えなかったし。
こっちの子はやや大きめの弓を持ち、桃色の髪の子は身の丈もあるような大剣を構えて恐竜と対峙している。
どっからどうみてもモン〇ンだ。
「死にたいの、あんた!?」
「いや、あの、これには訳が……」
「シェリル、ちゃん……もう、持たない、ですぅ」
「ルーシェ!」
大剣の子の悲痛な声が聞こえた。
あんな小さな体で恐竜の相手をするなんて、無理過ぎるだろう。
ヒュンっと風を切る音がして矢が飛んでいく。
よく見ると、この二人結構ボロボロだ。
ボロボロなのに、まさか俺を助けようと駆け付けてくれたのか?
どうしよう。
俺のせいで二人が怪我でもしたら――いや、怪我で済めば御の字だろう。
くっそ。
こんな時、戦闘系スキルだったらよかったのに。
でもそしたら俺、砂漠になんかいなかったか。
「に、逃げた方がよくないか?」
「逃げられると思ってんの?」
その間も二人は必死に戦っている。
大剣の子は疲れ切った様子で、攻撃を受け止めるので必死だ。
弓の攻撃は、硬い皮膚相手にはあまり効果がなさそうに見える。
逃げることも出来ない。
倒すことも出来ない。
そんなの、負けに決まってるじゃないか。
農業系チートスキルでも、何か出来ないか?
植物で足止め……そのためにいったい何本必要になるんだ。
なにか他に、他にないかっ。
「インベントリ・オープン」
樫の木――調味料の木――果物の木――小麦の木――竹――巨豆――。
竹――大量に生やせれば足止めは出来そうだ。
だけどあっさり迂回されて終わりな気もする。
完全な足止めをするには、蔓系植物で――
豆!?
わざわざ巨豆って書いてあるんだ、恐竜の足ぐらい絡みとったりとか……。
「あぁっ。何もやらないよりはマシだ!」
巨豆の種――というより豆そのものを掴みだす。
うわっ、本当にデカい。子供の握り拳ぐらいあるんじゃないか?
「"成長促進"!」
大きな芽が出る。
あいつの傍で成長させないと意味がない。
「少しだけ、少しだけでいいから、そいつの気を逸らしてくれっ」
「なんですって!?」
「す、少しだけですのぉ」
怖い……でも彼女たちだって命がけなんだ。
俺だけ何もしない訳にはいかないだろ!
砂に足を取られながらも走って、奴の背後に回り込む。
急いで砂に豆を植え、もう一度成長させた。
奴の尾っぽに巻き付け!
――と考え、いや、祈りながらスキルを使う。
お、おおぉ。
砂がもこっと盛り上がる。
「うひぃ!?」
わっ、わっ、わっ。予想以上にデカい!
これなら恐竜の尾っぽも、よし、よしいけ!
『ンギュオオオォォォォ』
「もう一本は無理かっ」
さすがに一株じゃ足りなかった。
急いで豆をもう一粒取り出して――
「"成長――"」
促進。
そう唱える直前に、巨豆に巻き付かれた尾っぽの先っぽが俺の手に触れ豆が落ちた。
「"――促進"。ああぁぁっ」
『グギョッ』
豆じゃなく、恐竜を成長させてしまったぁぁ……あれ?
「あ、あんた何したのよ!? スピュラウスが大きくなってるじゃないっ」
「お、大きく? あっ」
そうだ。全ての生命の成長――あの時、荒木はそう言った。
そのあとでたとえば野菜をというから、てっきり植物限定だと思い込んでいたけど。
だけど全ての生命だ。生命と言えば当然、生き物だって含まれるだろう。
そう。
こいつも成長させられる。
成長させられるなら――
「寿命を迎えるまで成長しろ! "成長促進"!!」
びちびちしている尾の先にちょこんと触れ、スキルを使った。
ミイラのように干からびるまで成長しろと、自分でも意味の分からないことを考えながら。
するとどうだ!
本当に恐竜が見る見る間に干からびて、まさにミイラみたいになったじゃないか。
皮膚は灰色に変色し、ひび割れ、その下の肉はどこにいったのか分からないほど痩せこけている。
『ア、ガ……』
どうっと砂を巻き上げ恐竜が倒れた。
そのまま血泡を吹いて、動かなくなってしまった……。
マジ、か。
農業系チートスキルだったはずなのに、普通にチートスキルじゃないかこれ。
「あらあら、どうしましょう」
「ん?」
「あ、あんた……いったい何をしたのよ!」
「え?」
ミイラと化した恐竜の隣で、桃色の髪の子は困ったように見下ろしている。
銀髪の子は何故か怒ったように俺を睨んでいた。
「これじゃ肉も素材も取れないでしょっ!」
この世界は……
やっぱり、
モンスター〇ンターかもしれない。