「おいしいモググ」
「ほんと。シャッコーマがこんなに美味しかったなんて、知らなかったモクわぁ」
小さい方はモググ。おふくろさんはモクか。
傷薬を塗ってやると、間もなく二人も目を覚ました。
そして焼きシャコをみんなで食べている。
シャコ、もしくはエビ風の味なのかと思ったらとんでもない!
蟹だカニ!
なんて贅沢なんだ。
山の中で焼き蟹なんて、贅沢すぎる。
うめぇ。
「ドリュー族、だっけ? なんで集団移住を?」
「モグ。わしらの里では人が増えたせいで、食料不足が深刻化したモグ。それで二〇人ほどを別の土地に移すことになったモグ」
「その道中でモンスターの群れに襲われて……あぁ、みんな無事だといいのだけれモク」
食料不足、か。
種族が違えど、どこも似たような状況なんだな。
「それで……三人はどうする? 仲間と合流、したいよね?」
「それはもちろんモグっ。いや、でも……」
親父さんは俺たちを見て、それから息子のトミーを見た。
もう怖い目に合せたくないんだろう。
探しに行くとなれば、またどこでモンスターに襲われるか分かったもんじゃないし。
「ルーシェ、シェリル。この三人を集落に連れていけないかな」
「え?」
「それは受け入れるってことですか?」
「ひとまずゆっくり休ませないと。他のドリュー族を探すにしても、子供は連れていけないだろ?」
「モググ?」
それに燃える石を集落に届けなきゃいけない。
俺が来たせいで食べ物が充実し、その分、料理で使う石の量が増えたんだ。
で、今わりとピンチだったりする。
「わ、わしらドリュー族は、地面や崖に穴を掘って暮らす種族モグ。穴を掘るのは得意モグが、人間と比べるとこのように小さく、かわいいしか取り柄のない種族モグよ」
「今、自分でかわいいって……」
「モンスターと戦ったりは出来ないモグ。だから、隣人がいてくれると、安心して暮らせるモグっ」
「なんでもお手伝いしますモク。土に関することなら、なんだって得意モクですからっ」
「せめてトミーだけでも……お願いするモグ」
夫婦は必死だ。
自分たちが――というより、大事なひとり息子に安心して暮らせる土地を探してやりたいっていう気持ちのほうが強いんだろう。
「息子だけなんて、ダメに決まってる」
「そんなっ」
「親がいなくなるって、寂しいんだぜ。凄く」
「そ、それは……モク」
「だから三人一緒に行こう」
そういうと、ドリュー族の親子は抱き合って喜んだ。
双子に視線を向けると、笑みを浮かべて笑っていた。
いいってことだよな。
「はやっ!」
お昼にシャコを食べてから、三人のドリュー族が団子作りを手伝ってくれた。
なんで一回捏ねる間に、団子が五個出来てんだよ。
子供のトミーですら、二つ同時に丸めてるじゃん。
ドリュー族は小柄だが、その手は俺たち人間よりデカい。
だからってどうやったら複数同時に丸められるんだ。
「たった数時間で、私たちの四日分の団子を越えちゃったわね」
「凄く助かりますぅ」
「いやいや、お役に立てて良かったモグ」
「燃える石は私たちドリュー族でも使うモク、ですから丸めるのに慣れているんですよモク」
「そっか。じゃあいくつかはドリュー族用に取っておかないとな」
しばらく泥団子作りはいらなさそうだな。
明け方、俺が見張りに立つと親父さんも起きて来た。
「親父さん、何してんの?」
「仲間に居場所を知らせるために、目印を付けているモグよ」
爪で岩に矢印を付けていた。
硬い岩じゃ、なかなか書きづらいだろうに。
そうだ。
「おやじさん、この木に印を付けたらどうだ?」
「いいモグか? 木は貴重な資源モグよ」
「いいよ。この木はこのままここに置いていくし。そうだ。斜面の向こう側にもあった方がよくないか? それに木なんて珍しいし、目を引くだろ?」
親父さんを担いで斜面を登り、そこにも木を――どうせなら目立つように桜の木を植えた。
もちろん、花を咲かせた状態で。
「二分咲きぐらいがいいな」
「おぉ、なんて愛らしい木モグか。まるでドリュー族のようモグ」
……自分たちはかわいい種族だって思っているのか。
まぁ……かわいいけど。
桜の木にも印をつけ、テントへ戻る。
みんなで朝飯を食って、集落へ向け出発した。
道中にも桜の木を転々と植え、目印に。
そうして翌日の昼前には、集落へと到着した。
「わあぁぁぁぁぁっ」
「わあーーーーー」
さっそく子供たちが集まって来て、見慣れないドリュー族に驚いてる。
怖がってる様子はない。面白い物見つけたという感じだ。
「こんにちは、モグ」
「わっ。喋った!」
「しゃべったぁ」
トミーはおっかなビックリで、お袋さんの後ろに隠れてしまってるな。
そのうち大人たちが来て、こちらもやっぱり驚いていた。
「これは驚いた。ドリュー族、ですよね?」
「オーリさん、知ってるのか?」
「あぁ。まだ村で暮らしていた時にね、一度だけ見たことがあるよ。もうずいぶん昔だけど」
「時には人間の里で、取引をすることもあったモグから。その時でしょう」
知っている人がいて良かった。
みんなに事情を説明し、出来ればこの近くにドリュー族を住まわせてやりたいとお願いする。
そのことに関して誰も反対せず、あっさりと承諾を貰えた。
「東の崖上にある、岩塩が採れる洞窟のところとかどうかなって思っているんだ」
「そうだなぁ」
「が、岩塩モグか? いや、塩は……」
「ん?」
夫婦は申し訳なさそうに、
「肌がかさかさになるモグ(モク)ので」
――と。
あ、塩だけに皮膚の水分がとられる……とか?
「あっはっは。なるほどなるほど。なら逆の西側はどうだ?」
「あぁ、いいんじゃないか。西側の、ほらあそこだ。あの辺りも平らな土地があるんだよ」
数十メートルの断崖絶壁。その上は開けた平らな土地があって、また断崖絶壁に。
この辺りはそんな風景が広がる。
岩塩の洞窟がある位置より、もう少し上のほうだな。
「向こう側には何もないんだ。だから使ってない」
「ただ朝日がよく当たるだろうから、気温が高くなる時間も早くなるだろう」
「それはご心配なく。わしらは穴を掘って暮らすモグから」
「でも直ぐに家を掘れる訳じゃないだろ? しばらくはこいつを借り住まいにしなよ」
インベントリからツリーハウスの種を取り出した。
さっそくサルノコシカケを成長させながら西側の崖を登っていく。
ドリュー族に合せて、階段の幅も狭くしておかないとな。
ようやく上までたどり着いて、次はツリーハウスだ。
もしかするとドリュー族がこれから集まるかもしれない。
彼らの体が小さいが、それでも十歳のオリエと同じぐらいの身長はある。
一本のツリーハウスで大勢は寝れるように、少し長めに成長させよう。
今までは二階建てだとか、こんな部屋が欲しいとか考えながら成長させてみたけど……。
今回は十年ずつ成長させてみるかな。
「"成長促進"」
んー……普通の木のサイズだな。扉もない。
追加で十年。
お、幹が太くなり始めた。でもまだ扉はない。
更に二十年の成長で、ようやく扉が出現。
「四〇年で最初に俺が砂漠で成長させたツリーハウスのサイズか」
「建築に四〇年もかかるって考えたら、すっごく長いんでしょうけどね」
「ふふ、でも木だと考えると、意外と早いですよねぇ」
「だな。さて、もっと成長させないと、このままじゃ狭すぎるな」
十年、また十年……追加で三〇年ほど成長させると、ロフト付き二階建てサイズになった。
もう少し……
「わっ、あそこ見てっ」
「ん?」
「わぁ、コブが出来てますぅ」
一階部分にコブが出来た。しかもデカい。
もしかしてと中に入ると――
「部屋が出来てる!?」
「わぁ、いいなぁ」
「兄ちゃん、オレん家にもコブ作ってよぉ」
いつの間にか集落の子供たちも集まり、コブコブコールが起きる。
それだけじゃない。
「お花っ。お家にお花が咲いてるよぉ」
女の子のオリエが気づいて、枝に白い花を見つけた。
花ってことは――
「種が出来る!?」
さっそく種が出来るまでと追加成長させると、インベントリにある種とまったく同じ物がひとつだけ実った。
それから追加で二十年成長させてみたけど、コブがもう一つ増えただけ。
「一生に一つしか種が出来ないのか」
「でもそれなら、今まで植えたツリーハウスからも種が採れますね」
「無くなる心配もないってことじゃない」
はは、確かにそうだ。
これで残りを気にすることなく、家を植えられるぞ!
「ほんと。シャッコーマがこんなに美味しかったなんて、知らなかったモクわぁ」
小さい方はモググ。おふくろさんはモクか。
傷薬を塗ってやると、間もなく二人も目を覚ました。
そして焼きシャコをみんなで食べている。
シャコ、もしくはエビ風の味なのかと思ったらとんでもない!
蟹だカニ!
なんて贅沢なんだ。
山の中で焼き蟹なんて、贅沢すぎる。
うめぇ。
「ドリュー族、だっけ? なんで集団移住を?」
「モグ。わしらの里では人が増えたせいで、食料不足が深刻化したモグ。それで二〇人ほどを別の土地に移すことになったモグ」
「その道中でモンスターの群れに襲われて……あぁ、みんな無事だといいのだけれモク」
食料不足、か。
種族が違えど、どこも似たような状況なんだな。
「それで……三人はどうする? 仲間と合流、したいよね?」
「それはもちろんモグっ。いや、でも……」
親父さんは俺たちを見て、それから息子のトミーを見た。
もう怖い目に合せたくないんだろう。
探しに行くとなれば、またどこでモンスターに襲われるか分かったもんじゃないし。
「ルーシェ、シェリル。この三人を集落に連れていけないかな」
「え?」
「それは受け入れるってことですか?」
「ひとまずゆっくり休ませないと。他のドリュー族を探すにしても、子供は連れていけないだろ?」
「モググ?」
それに燃える石を集落に届けなきゃいけない。
俺が来たせいで食べ物が充実し、その分、料理で使う石の量が増えたんだ。
で、今わりとピンチだったりする。
「わ、わしらドリュー族は、地面や崖に穴を掘って暮らす種族モグ。穴を掘るのは得意モグが、人間と比べるとこのように小さく、かわいいしか取り柄のない種族モグよ」
「今、自分でかわいいって……」
「モンスターと戦ったりは出来ないモグ。だから、隣人がいてくれると、安心して暮らせるモグっ」
「なんでもお手伝いしますモク。土に関することなら、なんだって得意モクですからっ」
「せめてトミーだけでも……お願いするモグ」
夫婦は必死だ。
自分たちが――というより、大事なひとり息子に安心して暮らせる土地を探してやりたいっていう気持ちのほうが強いんだろう。
「息子だけなんて、ダメに決まってる」
「そんなっ」
「親がいなくなるって、寂しいんだぜ。凄く」
「そ、それは……モク」
「だから三人一緒に行こう」
そういうと、ドリュー族の親子は抱き合って喜んだ。
双子に視線を向けると、笑みを浮かべて笑っていた。
いいってことだよな。
「はやっ!」
お昼にシャコを食べてから、三人のドリュー族が団子作りを手伝ってくれた。
なんで一回捏ねる間に、団子が五個出来てんだよ。
子供のトミーですら、二つ同時に丸めてるじゃん。
ドリュー族は小柄だが、その手は俺たち人間よりデカい。
だからってどうやったら複数同時に丸められるんだ。
「たった数時間で、私たちの四日分の団子を越えちゃったわね」
「凄く助かりますぅ」
「いやいや、お役に立てて良かったモグ」
「燃える石は私たちドリュー族でも使うモク、ですから丸めるのに慣れているんですよモク」
「そっか。じゃあいくつかはドリュー族用に取っておかないとな」
しばらく泥団子作りはいらなさそうだな。
明け方、俺が見張りに立つと親父さんも起きて来た。
「親父さん、何してんの?」
「仲間に居場所を知らせるために、目印を付けているモグよ」
爪で岩に矢印を付けていた。
硬い岩じゃ、なかなか書きづらいだろうに。
そうだ。
「おやじさん、この木に印を付けたらどうだ?」
「いいモグか? 木は貴重な資源モグよ」
「いいよ。この木はこのままここに置いていくし。そうだ。斜面の向こう側にもあった方がよくないか? それに木なんて珍しいし、目を引くだろ?」
親父さんを担いで斜面を登り、そこにも木を――どうせなら目立つように桜の木を植えた。
もちろん、花を咲かせた状態で。
「二分咲きぐらいがいいな」
「おぉ、なんて愛らしい木モグか。まるでドリュー族のようモグ」
……自分たちはかわいい種族だって思っているのか。
まぁ……かわいいけど。
桜の木にも印をつけ、テントへ戻る。
みんなで朝飯を食って、集落へ向け出発した。
道中にも桜の木を転々と植え、目印に。
そうして翌日の昼前には、集落へと到着した。
「わあぁぁぁぁぁっ」
「わあーーーーー」
さっそく子供たちが集まって来て、見慣れないドリュー族に驚いてる。
怖がってる様子はない。面白い物見つけたという感じだ。
「こんにちは、モグ」
「わっ。喋った!」
「しゃべったぁ」
トミーはおっかなビックリで、お袋さんの後ろに隠れてしまってるな。
そのうち大人たちが来て、こちらもやっぱり驚いていた。
「これは驚いた。ドリュー族、ですよね?」
「オーリさん、知ってるのか?」
「あぁ。まだ村で暮らしていた時にね、一度だけ見たことがあるよ。もうずいぶん昔だけど」
「時には人間の里で、取引をすることもあったモグから。その時でしょう」
知っている人がいて良かった。
みんなに事情を説明し、出来ればこの近くにドリュー族を住まわせてやりたいとお願いする。
そのことに関して誰も反対せず、あっさりと承諾を貰えた。
「東の崖上にある、岩塩が採れる洞窟のところとかどうかなって思っているんだ」
「そうだなぁ」
「が、岩塩モグか? いや、塩は……」
「ん?」
夫婦は申し訳なさそうに、
「肌がかさかさになるモグ(モク)ので」
――と。
あ、塩だけに皮膚の水分がとられる……とか?
「あっはっは。なるほどなるほど。なら逆の西側はどうだ?」
「あぁ、いいんじゃないか。西側の、ほらあそこだ。あの辺りも平らな土地があるんだよ」
数十メートルの断崖絶壁。その上は開けた平らな土地があって、また断崖絶壁に。
この辺りはそんな風景が広がる。
岩塩の洞窟がある位置より、もう少し上のほうだな。
「向こう側には何もないんだ。だから使ってない」
「ただ朝日がよく当たるだろうから、気温が高くなる時間も早くなるだろう」
「それはご心配なく。わしらは穴を掘って暮らすモグから」
「でも直ぐに家を掘れる訳じゃないだろ? しばらくはこいつを借り住まいにしなよ」
インベントリからツリーハウスの種を取り出した。
さっそくサルノコシカケを成長させながら西側の崖を登っていく。
ドリュー族に合せて、階段の幅も狭くしておかないとな。
ようやく上までたどり着いて、次はツリーハウスだ。
もしかするとドリュー族がこれから集まるかもしれない。
彼らの体が小さいが、それでも十歳のオリエと同じぐらいの身長はある。
一本のツリーハウスで大勢は寝れるように、少し長めに成長させよう。
今までは二階建てだとか、こんな部屋が欲しいとか考えながら成長させてみたけど……。
今回は十年ずつ成長させてみるかな。
「"成長促進"」
んー……普通の木のサイズだな。扉もない。
追加で十年。
お、幹が太くなり始めた。でもまだ扉はない。
更に二十年の成長で、ようやく扉が出現。
「四〇年で最初に俺が砂漠で成長させたツリーハウスのサイズか」
「建築に四〇年もかかるって考えたら、すっごく長いんでしょうけどね」
「ふふ、でも木だと考えると、意外と早いですよねぇ」
「だな。さて、もっと成長させないと、このままじゃ狭すぎるな」
十年、また十年……追加で三〇年ほど成長させると、ロフト付き二階建てサイズになった。
もう少し……
「わっ、あそこ見てっ」
「ん?」
「わぁ、コブが出来てますぅ」
一階部分にコブが出来た。しかもデカい。
もしかしてと中に入ると――
「部屋が出来てる!?」
「わぁ、いいなぁ」
「兄ちゃん、オレん家にもコブ作ってよぉ」
いつの間にか集落の子供たちも集まり、コブコブコールが起きる。
それだけじゃない。
「お花っ。お家にお花が咲いてるよぉ」
女の子のオリエが気づいて、枝に白い花を見つけた。
花ってことは――
「種が出来る!?」
さっそく種が出来るまでと追加成長させると、インベントリにある種とまったく同じ物がひとつだけ実った。
それから追加で二十年成長させてみたけど、コブがもう一つ増えただけ。
「一生に一つしか種が出来ないのか」
「でもそれなら、今まで植えたツリーハウスからも種が採れますね」
「無くなる心配もないってことじゃない」
はは、確かにそうだ。
これで残りを気にすることなく、家を植えられるぞ!