春……涼しくなった!
町で気温計を買ったんだけど、なんと三十℃!
涼しくなったと思っても、まだ三十℃なんだよなぁ。
そして残念なことに、これから夏に向かう季節なんだよ。
「なぁ、なんでゆる~く下げていくんだ? お前と契約したときって冬だったじゃん。サクっと二十℃ぐらい下げてくれればよかったのに」
『お前、バカだろ。そんなことしてみろ。気温差に体が慣れなくて体調不良起こす生き物が続出するぞ』
……正論だ。
「でも確実に涼しいって思う様になったじゃない」
「これからはまた、少しずつ暑くなるんですよね?」
『そうだな。まぁもう一カ月ぐらいは、今のままだな。六の月を過ぎたら、夏らしく少し気温が上がるはずだぜ。まぁ以前ほどクソ暑くはならないはずだ』
「それを聞くだけで元気になれそうです」
暑いことに変わりはない。だけど以前の暑さに比べたら全然違う。
日陰ならかなり涼しく感じるし、ジンが滝の水しぶきで冷やした風を送ってくれるから快適に過ごせるようになった。
この気温なら日中の畑作業もある程度行える。
数カ月辛抱すれば、三十℃を下回るのも夢じゃない。
『ユタカお兄ちゃ~ん。レタスちょーだぁーい』
「お、来たなアス」
アスはフレイと一緒に暮らすようになった。今は大地の木と桜があるあの丘で過ごしている。
あとここ最近、少しカタコトくさかった喋り方もうまくなった。
ま、食べ物は相変わらずレタスが主食だけど。
「なぁアス」
『なぁーに?』
「フレイってさ、普段は何食べてるんだ?」
『お父さん? んー……滅多に食べないヨ。ボクがあっちに行ってね、何か食べたのは二回グライ』
「ってことは、月に一回ぐらいなのか」
その時には狩りに出かけて、中型モンスターを一頭、丸焼きにして食べているらしい。
サイズ的には牛二頭分ぐらいか。
アスも肉を食べられるが、レタス巻きじゃなきゃ食べ辛いそうだ。
でも魚はそれ単体でも食べられるという。
川に魚が住んでくれたらなぁ。
「だったらよぉ、フレイの旦那がいた東の山に連れて行って貰って、卵を抱えた魚を捕まえてくりゃいいんじゃねえか?」
「おぉ、バフォおじさん。それ採用!」
『うちの湖にも魚、いるわよ?』
「そうなの!? え、何がいるんだ? 食べられる?」
『まず考えるとこはそこなのね』
食べられるかどうかは、最重要だろ?
山の上の湖にいって湖に潜ってみると……もちろん水中呼吸の魔法をアクアディーネに頼んで。
「おぉ! なんか食べられそうな魚じゃん」
「美味しいの?」
「たぶん!」
「たぶんなんですね」
ニジマス? たぶんそういう感じの魚がいる。
「だったら、食べてみればいいのよね」
「その通り。よし、釣るか」
さっそく釣り竿に適した細い竹を用意して、針に餌団子を点けて投げる!
・ ・ ・ ・ ・ ・ 。
「釣れない」
「釣れませんねぇ」
「釣りは忍耐力が必要なんだ」
・ ・ ・ ・ ・ ・ 。
「釣れないわねぇ」
「まだ釣れませんねぇ」
「くっ……」
・ ・ ・ ・ ・ ・ 。
「つれ――「アクアディーネさん! よろしくお願いしますっ」」
『最初からあたしに頼めばよかったのよ。よいしょっ。はい、どうぞ』
とぷんっと湖の水面から魚が浮き上がる。
やーめーてーっと言っているようで、ビチビチしていた。
「立派なサイズですねぇ。シンプルに塩焼きにしますか?」
「あぁ。内臓だけ取ったら、皮の上からたっぷり塩を振って焼けばいいと思うよ」
「じゃあ、そうしますね」
ルーシェが内蔵処理をしてくれている間に、俺とシェリルで焚き火と食器類の用意。
竹を成長させて、魚を乗せられるサイズにカットしたら縦に割る。同じものをもう一組用意して、一つはお皿に、もう一つは細く裂いて串にする。
処理し終えた魚を串に刺して焚き火でしっかり焼いたら……。
「んまっ。皮がパリパリで最高に美味い」
「ん~。海の魚とはまた違った味。さっぱりしてるのはこっちかしら?」
「そうですね。でも塩で焼くだけで美味しくなるのは、同じです」
「新鮮だから美味いんだろうなぁ。これをもっと気軽に食べられるようになればいいんだけど」
ここまで来るのに、フレイに乗せてもらえば一瞬だ。
でももっと近場に欲しい。
アスと出会った地底湖から村まで、ずーっと地面の下を水が流れてるからなぁ。
『じゃあ、ボクが少し地面をずらしてあげようか?』
「ベヒモスくん!? え、いいのか?」
『うん。というかね、雨量が増えてくるとあの地下水道じゃ流れきれなくて、危ないかもしれないんだ』
地下水が流れる空洞も狭い箇所がある。その空洞のキャパをオーバーして雨水が流れてくるかもしれないって。
そうなると内側から崩落して、また水が止まってしまうかもしれない。
どうずらすからベヒモスにお任せして、村に帰った俺たちはみんなにそのことを話した。
ベヒモスが「やるよ~」と言ってからしばらくして、地面が揺れた。
しかもこの揺れ、遠くから段々近づいてくるような揺れ方だ。
ついに地面が――いや、岩壁が割れた。
水が流れ落ちていた滝を中心に、壁がパカっと左右に割れたのだ。
なんと三十メートルぐらいの幅だろうか。
『よし。アクアちゃんの湖から繋げたよ』
「は?」
『湖の水位も、最近増えて来てたのよねぇ。これで水の入れ替えも出来るし、よかったわぁ』
あの湖と繋がったのか!?
『もう水路じゃなくって、完全に川だよ。ちゃんとお魚釣りができるように、岸も作ってあげたからね』
「最高じゃん! これで新鮮な魚も捕れ放題だ」
――とはならなかった。
山の上の湖からここまで、かなり距離があるもんなぁ。
川を下るのにどのくらいかかるか。
やっぱり近くで養殖するべきか。
町で気温計を買ったんだけど、なんと三十℃!
涼しくなったと思っても、まだ三十℃なんだよなぁ。
そして残念なことに、これから夏に向かう季節なんだよ。
「なぁ、なんでゆる~く下げていくんだ? お前と契約したときって冬だったじゃん。サクっと二十℃ぐらい下げてくれればよかったのに」
『お前、バカだろ。そんなことしてみろ。気温差に体が慣れなくて体調不良起こす生き物が続出するぞ』
……正論だ。
「でも確実に涼しいって思う様になったじゃない」
「これからはまた、少しずつ暑くなるんですよね?」
『そうだな。まぁもう一カ月ぐらいは、今のままだな。六の月を過ぎたら、夏らしく少し気温が上がるはずだぜ。まぁ以前ほどクソ暑くはならないはずだ』
「それを聞くだけで元気になれそうです」
暑いことに変わりはない。だけど以前の暑さに比べたら全然違う。
日陰ならかなり涼しく感じるし、ジンが滝の水しぶきで冷やした風を送ってくれるから快適に過ごせるようになった。
この気温なら日中の畑作業もある程度行える。
数カ月辛抱すれば、三十℃を下回るのも夢じゃない。
『ユタカお兄ちゃ~ん。レタスちょーだぁーい』
「お、来たなアス」
アスはフレイと一緒に暮らすようになった。今は大地の木と桜があるあの丘で過ごしている。
あとここ最近、少しカタコトくさかった喋り方もうまくなった。
ま、食べ物は相変わらずレタスが主食だけど。
「なぁアス」
『なぁーに?』
「フレイってさ、普段は何食べてるんだ?」
『お父さん? んー……滅多に食べないヨ。ボクがあっちに行ってね、何か食べたのは二回グライ』
「ってことは、月に一回ぐらいなのか」
その時には狩りに出かけて、中型モンスターを一頭、丸焼きにして食べているらしい。
サイズ的には牛二頭分ぐらいか。
アスも肉を食べられるが、レタス巻きじゃなきゃ食べ辛いそうだ。
でも魚はそれ単体でも食べられるという。
川に魚が住んでくれたらなぁ。
「だったらよぉ、フレイの旦那がいた東の山に連れて行って貰って、卵を抱えた魚を捕まえてくりゃいいんじゃねえか?」
「おぉ、バフォおじさん。それ採用!」
『うちの湖にも魚、いるわよ?』
「そうなの!? え、何がいるんだ? 食べられる?」
『まず考えるとこはそこなのね』
食べられるかどうかは、最重要だろ?
山の上の湖にいって湖に潜ってみると……もちろん水中呼吸の魔法をアクアディーネに頼んで。
「おぉ! なんか食べられそうな魚じゃん」
「美味しいの?」
「たぶん!」
「たぶんなんですね」
ニジマス? たぶんそういう感じの魚がいる。
「だったら、食べてみればいいのよね」
「その通り。よし、釣るか」
さっそく釣り竿に適した細い竹を用意して、針に餌団子を点けて投げる!
・ ・ ・ ・ ・ ・ 。
「釣れない」
「釣れませんねぇ」
「釣りは忍耐力が必要なんだ」
・ ・ ・ ・ ・ ・ 。
「釣れないわねぇ」
「まだ釣れませんねぇ」
「くっ……」
・ ・ ・ ・ ・ ・ 。
「つれ――「アクアディーネさん! よろしくお願いしますっ」」
『最初からあたしに頼めばよかったのよ。よいしょっ。はい、どうぞ』
とぷんっと湖の水面から魚が浮き上がる。
やーめーてーっと言っているようで、ビチビチしていた。
「立派なサイズですねぇ。シンプルに塩焼きにしますか?」
「あぁ。内臓だけ取ったら、皮の上からたっぷり塩を振って焼けばいいと思うよ」
「じゃあ、そうしますね」
ルーシェが内蔵処理をしてくれている間に、俺とシェリルで焚き火と食器類の用意。
竹を成長させて、魚を乗せられるサイズにカットしたら縦に割る。同じものをもう一組用意して、一つはお皿に、もう一つは細く裂いて串にする。
処理し終えた魚を串に刺して焚き火でしっかり焼いたら……。
「んまっ。皮がパリパリで最高に美味い」
「ん~。海の魚とはまた違った味。さっぱりしてるのはこっちかしら?」
「そうですね。でも塩で焼くだけで美味しくなるのは、同じです」
「新鮮だから美味いんだろうなぁ。これをもっと気軽に食べられるようになればいいんだけど」
ここまで来るのに、フレイに乗せてもらえば一瞬だ。
でももっと近場に欲しい。
アスと出会った地底湖から村まで、ずーっと地面の下を水が流れてるからなぁ。
『じゃあ、ボクが少し地面をずらしてあげようか?』
「ベヒモスくん!? え、いいのか?」
『うん。というかね、雨量が増えてくるとあの地下水道じゃ流れきれなくて、危ないかもしれないんだ』
地下水が流れる空洞も狭い箇所がある。その空洞のキャパをオーバーして雨水が流れてくるかもしれないって。
そうなると内側から崩落して、また水が止まってしまうかもしれない。
どうずらすからベヒモスにお任せして、村に帰った俺たちはみんなにそのことを話した。
ベヒモスが「やるよ~」と言ってからしばらくして、地面が揺れた。
しかもこの揺れ、遠くから段々近づいてくるような揺れ方だ。
ついに地面が――いや、岩壁が割れた。
水が流れ落ちていた滝を中心に、壁がパカっと左右に割れたのだ。
なんと三十メートルぐらいの幅だろうか。
『よし。アクアちゃんの湖から繋げたよ』
「は?」
『湖の水位も、最近増えて来てたのよねぇ。これで水の入れ替えも出来るし、よかったわぁ』
あの湖と繋がったのか!?
『もう水路じゃなくって、完全に川だよ。ちゃんとお魚釣りができるように、岸も作ってあげたからね』
「最高じゃん! これで新鮮な魚も捕れ放題だ」
――とはならなかった。
山の上の湖からここまで、かなり距離があるもんなぁ。
川を下るのにどのくらいかかるか。
やっぱり近くで養殖するべきか。


