モグラを担いで斜面を登っていく。
決して緩やかではない斜面を、ルーシェとシェリルの二人は難なく登って行った。
「くぅ。早いなぁ二人とも」
運動神経は決して悪い方だとは思っていない。
でもこっちの世界の人と比べると、なんか自信失くす。
成長促進……あらゆるものの成長だっけ?
だったらさ、肉体的な部分じゃなく、目に見えない部分の成長だって促進してくれないのかね。
筋肉を成長させるきおとは出来そうだけど、ヘタにやってそこだけムキムキになっても嫌だしなぁ。
「あぁ、見た目はこのままで、脚力だけ成長とか出来ないのかよ。成長促進さんよぉ」
そう愚痴を漏らした瞬間、足が……軽くなった。
え?
斜面を蹴る力が違う。
なんか弾むようにな感じで、一気に駆け上がれた。
まさか……マジで?
足を見てもムキムキにはなってない。
確かめたい。
でもそんな余裕のない状況だった。
登った先にはエビのような――いや、シャコか?
それに似たモンスターが五体いた。
今度こそモンスターでいいよな?
シャコに似た亜人なんてことはないよな?
にしても――
「ここは海じゃねえんだぞ!」
とツッコミたくなる。
あ、でも大昔は海だったんだっけ。
「ユタカさんっ。シャッコーマですっ。モンスターです!」
「皮膚が硬いから、私の弓じゃダメージを与えられないの。やっちゃって!」
「任されたっ」
言いつつ、ふと脳裏に過った。
シャコ、美味いよな。
「う、うぅん……」
お、気づいたみたいだな。
シャコに襲われていたモグラを担いで斜面を折り、子供と一緒にテントで寝かせていた。
シャコはもちろん、解体してインベントリに入っている。
最初に目を覚ましたのは、たぶん親父の方。
服以外の見た目じゃ、性別は分からないけどね。
「ト、トミー!?」
「しーっ。隣で寝てるだろう」
「とな……おぉ、トミー。それにミファ……無事だったモグな」
モグ!?
モグラだけあって、語尾がモグ!
「わしらを助けてくださったのは、あなたモグか?」
「まぁ俺というか、俺たち? ほら、彼女たちと協力して、シャコを……シャッコーマだっけ? あいつらを倒したんだ」
二人は昼飯の準備をしてくれている。
今日は焼きシャコだ。
「そうモグか。命の恩人モグ。ありがとうございます。うっ」
「傷が痛むか? ごめんな。傷薬とかなくてさ。君らの荷物も見せて貰ったんだけど、それらしいのなかったし」
「あぁ、持っていないモグよ。でも近くに薬草、あったモグ。近く、すぐ近くモグよ」
近く近くと連呼されると、なんか余計に「近くない」気がしてならない。
「ほんっとうに近いんだな?」
「近いちかい」
「はぁ……ルーシェ、シェリル。この人が近くに薬草があるって言うんだ。だから採りに行ってくるよ」
「ひとりで大丈夫ですの?」
「こっちの二人はまだ寝てるし、置いていくわけにはいかないだろ」
ってことで、モグラの親父さんを背負って指さす方角へと進んだ。
あー、うん。斜面の上だよな。
シャコがいた場所まで戻ってくると、親父さんが岩陰を指さした。
「あのちっさい花?」
「モグ」
モグっていうのは「YES」って意味だろうか。
「太い根が傷薬になるモグ。一本しかないモグから、息子か、妻に使ってやって欲しいモグ」
「あー、それは心配しなくていいよ。こいつ、種付けるよな?」
「そりゃあ」
「なら。"成長促進"」
種が実るまで――お、なんかタンポポの綿毛みたいなのが実ったな。
それをわしっと全部掴んでインベントリへ。
「モグ!? ど、どうなっているモグ? 何故急に成長を。種はどこにいったモグか」
「気にしない気にしない。さ、戻ろう」
親父さんをまた背負って、斜面を下りていく。
やっぱり……脚力、ついてるよな。
テントに戻ってから種を成長させる。
「根っこが傷薬だっていうけど、種を付けた後でもいいのか?」
「い、いいモグ。いいモグが……」
興味津々な様子で成長する花を見ている。まぁ直ぐに綿毛になるんだけどな。
綿毛を収穫したら掘り起こす。
太い根っこって言ったって、元々小さいからなぁ。
「あ、その根っこ見たことあります。ね、シェリルちゃん」
「ん? あ、父さんが狩りに行ったとき、時々持って帰って来てた塗り薬になるやつね」
「使えるように出来る?」
「はい。簡単なので大丈夫ですよ」
「摺りつぶして少量の水と混ぜるだけだものね」
そっちは二人に任せて、花の量を増やす。
一年草だな。おかげで五、六十本ほど余裕で成長させられる。
途中で面倒になって、地面に撒いた綿毛に手を押し当ててスキルを使った。
薬の準備が出来たら、まずは――
「二人はまだ寝てるし、親父さん、まずはあんたから」
見つけた時、親父さんは奥さんを庇うように覆いかぶさっていた。
背中は傷だらけだ。
彼の服を捲ると……。
「あぁっと、その、体毛がふさふさなんだけどさ、この上から塗っていい?」
「モグ」
YESか。
なんか塗りにくいけど……ん?
塗ってる傍から、傷が塞がっていくんだけどどういうことだ!?
「な、なんか凄い速度で傷が塞がっていくんだけど」
俺、成長促進使ってないよ?
「よく効く薬モグ」
「こ、これが普通?」
「モグ」
異世界の薬草、マジすげぇ。
決して緩やかではない斜面を、ルーシェとシェリルの二人は難なく登って行った。
「くぅ。早いなぁ二人とも」
運動神経は決して悪い方だとは思っていない。
でもこっちの世界の人と比べると、なんか自信失くす。
成長促進……あらゆるものの成長だっけ?
だったらさ、肉体的な部分じゃなく、目に見えない部分の成長だって促進してくれないのかね。
筋肉を成長させるきおとは出来そうだけど、ヘタにやってそこだけムキムキになっても嫌だしなぁ。
「あぁ、見た目はこのままで、脚力だけ成長とか出来ないのかよ。成長促進さんよぉ」
そう愚痴を漏らした瞬間、足が……軽くなった。
え?
斜面を蹴る力が違う。
なんか弾むようにな感じで、一気に駆け上がれた。
まさか……マジで?
足を見てもムキムキにはなってない。
確かめたい。
でもそんな余裕のない状況だった。
登った先にはエビのような――いや、シャコか?
それに似たモンスターが五体いた。
今度こそモンスターでいいよな?
シャコに似た亜人なんてことはないよな?
にしても――
「ここは海じゃねえんだぞ!」
とツッコミたくなる。
あ、でも大昔は海だったんだっけ。
「ユタカさんっ。シャッコーマですっ。モンスターです!」
「皮膚が硬いから、私の弓じゃダメージを与えられないの。やっちゃって!」
「任されたっ」
言いつつ、ふと脳裏に過った。
シャコ、美味いよな。
「う、うぅん……」
お、気づいたみたいだな。
シャコに襲われていたモグラを担いで斜面を折り、子供と一緒にテントで寝かせていた。
シャコはもちろん、解体してインベントリに入っている。
最初に目を覚ましたのは、たぶん親父の方。
服以外の見た目じゃ、性別は分からないけどね。
「ト、トミー!?」
「しーっ。隣で寝てるだろう」
「とな……おぉ、トミー。それにミファ……無事だったモグな」
モグ!?
モグラだけあって、語尾がモグ!
「わしらを助けてくださったのは、あなたモグか?」
「まぁ俺というか、俺たち? ほら、彼女たちと協力して、シャコを……シャッコーマだっけ? あいつらを倒したんだ」
二人は昼飯の準備をしてくれている。
今日は焼きシャコだ。
「そうモグか。命の恩人モグ。ありがとうございます。うっ」
「傷が痛むか? ごめんな。傷薬とかなくてさ。君らの荷物も見せて貰ったんだけど、それらしいのなかったし」
「あぁ、持っていないモグよ。でも近くに薬草、あったモグ。近く、すぐ近くモグよ」
近く近くと連呼されると、なんか余計に「近くない」気がしてならない。
「ほんっとうに近いんだな?」
「近いちかい」
「はぁ……ルーシェ、シェリル。この人が近くに薬草があるって言うんだ。だから採りに行ってくるよ」
「ひとりで大丈夫ですの?」
「こっちの二人はまだ寝てるし、置いていくわけにはいかないだろ」
ってことで、モグラの親父さんを背負って指さす方角へと進んだ。
あー、うん。斜面の上だよな。
シャコがいた場所まで戻ってくると、親父さんが岩陰を指さした。
「あのちっさい花?」
「モグ」
モグっていうのは「YES」って意味だろうか。
「太い根が傷薬になるモグ。一本しかないモグから、息子か、妻に使ってやって欲しいモグ」
「あー、それは心配しなくていいよ。こいつ、種付けるよな?」
「そりゃあ」
「なら。"成長促進"」
種が実るまで――お、なんかタンポポの綿毛みたいなのが実ったな。
それをわしっと全部掴んでインベントリへ。
「モグ!? ど、どうなっているモグ? 何故急に成長を。種はどこにいったモグか」
「気にしない気にしない。さ、戻ろう」
親父さんをまた背負って、斜面を下りていく。
やっぱり……脚力、ついてるよな。
テントに戻ってから種を成長させる。
「根っこが傷薬だっていうけど、種を付けた後でもいいのか?」
「い、いいモグ。いいモグが……」
興味津々な様子で成長する花を見ている。まぁ直ぐに綿毛になるんだけどな。
綿毛を収穫したら掘り起こす。
太い根っこって言ったって、元々小さいからなぁ。
「あ、その根っこ見たことあります。ね、シェリルちゃん」
「ん? あ、父さんが狩りに行ったとき、時々持って帰って来てた塗り薬になるやつね」
「使えるように出来る?」
「はい。簡単なので大丈夫ですよ」
「摺りつぶして少量の水と混ぜるだけだものね」
そっちは二人に任せて、花の量を増やす。
一年草だな。おかげで五、六十本ほど余裕で成長させられる。
途中で面倒になって、地面に撒いた綿毛に手を押し当ててスキルを使った。
薬の準備が出来たら、まずは――
「二人はまだ寝てるし、親父さん、まずはあんたから」
見つけた時、親父さんは奥さんを庇うように覆いかぶさっていた。
背中は傷だらけだ。
彼の服を捲ると……。
「あぁっと、その、体毛がふさふさなんだけどさ、この上から塗っていい?」
「モグ」
YESか。
なんか塗りにくいけど……ん?
塗ってる傍から、傷が塞がっていくんだけどどういうことだ!?
「な、なんか凄い速度で傷が塞がっていくんだけど」
俺、成長促進使ってないよ?
「よく効く薬モグ」
「こ、これが普通?」
「モグ」
異世界の薬草、マジすげぇ。