「ぶえっくしゅんっ」
「はあぁっくしょい」
「へぐ、へぐ、へ……へくちょい」
……変なくしゃみ。
再び町へやってきた俺たちは、帰国するレイナルド王子へ挨拶をしにきた。
荒木たちも当然一緒だ。
「レイナルド王子、本当にこいつらの面倒を見て貰っていいんですか?」
「わたしは面倒を見るつもりはないよ。国に虚偽の情報を伝え、不利益を与えたのだ。しかもわたしの私財で豪遊までしたのだからね。罪を償ってもらうだけさ」
「ほんっと、俺の同郷がご迷惑おかけしました」
何をしたのか聞いたけど、ほんっと情けないし恥ずかしい。
日本人があんなのと同じだとは、絶対思われたくないな。
「君が謝る必要はない。それにね、放っておくわけにもいかないだろう? 野放しにすれば、どこでまたホラを吹くか分からないのだし」
「それは、まぁ、そうですね」
「あと、勝手に召喚された君にこう言っては酷だと思うが、君たちは戦争の火種になりかねない存在なんだ」
「……はい。異世界人の召喚は、戦争に勝つために行われるってやつですよね。バ――火竜から聞きました」
バフォおじさんからも聞いたけど、悪魔のことは面倒になるから伏せておこう。
「そ、そうか。さすが上位種のドラゴン殿だ」
「じゃあ、王子があいつらを手元に置くのって、逆にマズくないですか?」
「その辺りはちゃんと、他国にも伝えるつもりだ。そもそも召喚したのは我が国ではないからね、責任はゲルドシュタル王国にあるが、あちらも王女が独断で行ったようだし、どうなることか」
「全ての元凶は王女か……国外追放になったんでしたっけ?」
「うん。一年のほとんどを雪に覆われた、こことは真逆の気候の場所だね」
雪かぁ。懐かしいなぁ。
東の山で見た時は「さむっ」って思ったけど、今だと雪原にダイブしたい気分だ。
「ぶえっ……ぶえっくしょん。大地、ぶえっく、ぶえっ、よくもこのぼぶえっくしょん」
「荒木、大変だな」
王子の部下である司祭様の話だと、鼻の毛もなくなったせいで、こまかーい砂が入ってくしゃみが止まらないんだとか。
ほんっとごめんなぁ。頭の毛だけのつもりだったのに。
ちょっとイケメン面だったのに、眉毛もまつ毛もなくなってさ。
くしゃみだけじゃなく、涙まで出ているのは汗が目に入ってしみるかららしい。
眉毛とまつ毛って、偉大だったんだな。
「王子、出発までまだ時間はありますか?」
「ん? まだ大丈夫だが」
「ルーシェ、シェリル。ちょっと頼まれてくれないか?」
「「はい?」」
急いである物を作ってもらうことにした。
二人は渋々だけど引き受けてくれて、直ぐに町へと繰り出す。
材料を買って、手早くソレを作る。
「こんな感じですか?」
「お、いいね。シェリルのほうは?」
「んっふっふ。どう?」
「ぶふぉっ。そ、それは!?」
ルーシェに作ってもらったのは、マスクだ。
これで砂を防げるだろう。
そしてシェリルに作ってもらっていたのは、着け眉毛。
まつ毛は無理だからな。でも眉毛っぽいものなら出来るだろうと思って。
綿生地に黒い毛皮を貼り付けて、毛を短くカットしたものだけど……左右の眉毛が繋がった形になってる。
こ、こういう眉毛の漫画キャラいたよな……。
「立派な眉毛でしょ? これなら流れてくる汗も、しっかり堰き止めてくれるわ」
「そ、そうだけど……ま、いいか。荒木、伊勢崎、諸星。これ、使ってくれ」
にっこり笑って、三人に人工眉毛をくっつけた。
糊は作業場から持ってきた、建設にも使われる強力なヤツだ。
「大丈夫! 自然素材しか使ってない糊だからさ」
「や、やめろっ。やめ……ぶえっくしょん」
「そんなもの着けんなぁぁぁっくしょい」
「顔はボクたの命なんだぞ。それなのに……へくちょい」
眉もまつ毛もない禿げのイケメンとか、もういろいろ手遅れだから。
王国騎士たちも手伝ってくれて、悲鳴を上げる三人に眉毛を着けてやった。
そして王子一行は砂漠の町を出て、ゾフトスの港町へ向かう。
「早く港が完成するのことを願うよ。わざわざあの距離を歩かなくて済むからね」
「フレイで王国までお送りできればよかったんですけど」
「い、いや、その気持ちだけ受け取っておこう。はは、あははははは」
フレイが嫌だーっていうから、仕方なくここで見送りするしかない。
「王子、残りのクラスメイトの件、よろしくお願いします」
「うん。何かわかったら手紙を送ろう。冒険者ギルド当てでよかったのだね?」
「はい。町に来たついでに、ギルドには顔をだしてますので」
ギルド、ほんと便利だよなぁ。
「では王子。参りましょうか」
「うむ。ではダイチ殿、ルーシェ殿、シェリル殿。縁があれば、また」
「はい。お気をつけて。港が完成したら、ぜひまた来てください」
「あぁ、もちろんだとも」
まぁ一国の王子が、そう気軽に国外には出れないだろうけどね。
王子一行を見送った後、町長やギルマス、それから港の方にも顔を出して挨拶をしたら村に帰還。
ソードレイからも大工が来るって言うし、しかも造船技師も。
予定より早く、他国との交易が始められるかもな。
「はあぁっくしょい」
「へぐ、へぐ、へ……へくちょい」
……変なくしゃみ。
再び町へやってきた俺たちは、帰国するレイナルド王子へ挨拶をしにきた。
荒木たちも当然一緒だ。
「レイナルド王子、本当にこいつらの面倒を見て貰っていいんですか?」
「わたしは面倒を見るつもりはないよ。国に虚偽の情報を伝え、不利益を与えたのだ。しかもわたしの私財で豪遊までしたのだからね。罪を償ってもらうだけさ」
「ほんっと、俺の同郷がご迷惑おかけしました」
何をしたのか聞いたけど、ほんっと情けないし恥ずかしい。
日本人があんなのと同じだとは、絶対思われたくないな。
「君が謝る必要はない。それにね、放っておくわけにもいかないだろう? 野放しにすれば、どこでまたホラを吹くか分からないのだし」
「それは、まぁ、そうですね」
「あと、勝手に召喚された君にこう言っては酷だと思うが、君たちは戦争の火種になりかねない存在なんだ」
「……はい。異世界人の召喚は、戦争に勝つために行われるってやつですよね。バ――火竜から聞きました」
バフォおじさんからも聞いたけど、悪魔のことは面倒になるから伏せておこう。
「そ、そうか。さすが上位種のドラゴン殿だ」
「じゃあ、王子があいつらを手元に置くのって、逆にマズくないですか?」
「その辺りはちゃんと、他国にも伝えるつもりだ。そもそも召喚したのは我が国ではないからね、責任はゲルドシュタル王国にあるが、あちらも王女が独断で行ったようだし、どうなることか」
「全ての元凶は王女か……国外追放になったんでしたっけ?」
「うん。一年のほとんどを雪に覆われた、こことは真逆の気候の場所だね」
雪かぁ。懐かしいなぁ。
東の山で見た時は「さむっ」って思ったけど、今だと雪原にダイブしたい気分だ。
「ぶえっ……ぶえっくしょん。大地、ぶえっく、ぶえっ、よくもこのぼぶえっくしょん」
「荒木、大変だな」
王子の部下である司祭様の話だと、鼻の毛もなくなったせいで、こまかーい砂が入ってくしゃみが止まらないんだとか。
ほんっとごめんなぁ。頭の毛だけのつもりだったのに。
ちょっとイケメン面だったのに、眉毛もまつ毛もなくなってさ。
くしゃみだけじゃなく、涙まで出ているのは汗が目に入ってしみるかららしい。
眉毛とまつ毛って、偉大だったんだな。
「王子、出発までまだ時間はありますか?」
「ん? まだ大丈夫だが」
「ルーシェ、シェリル。ちょっと頼まれてくれないか?」
「「はい?」」
急いである物を作ってもらうことにした。
二人は渋々だけど引き受けてくれて、直ぐに町へと繰り出す。
材料を買って、手早くソレを作る。
「こんな感じですか?」
「お、いいね。シェリルのほうは?」
「んっふっふ。どう?」
「ぶふぉっ。そ、それは!?」
ルーシェに作ってもらったのは、マスクだ。
これで砂を防げるだろう。
そしてシェリルに作ってもらっていたのは、着け眉毛。
まつ毛は無理だからな。でも眉毛っぽいものなら出来るだろうと思って。
綿生地に黒い毛皮を貼り付けて、毛を短くカットしたものだけど……左右の眉毛が繋がった形になってる。
こ、こういう眉毛の漫画キャラいたよな……。
「立派な眉毛でしょ? これなら流れてくる汗も、しっかり堰き止めてくれるわ」
「そ、そうだけど……ま、いいか。荒木、伊勢崎、諸星。これ、使ってくれ」
にっこり笑って、三人に人工眉毛をくっつけた。
糊は作業場から持ってきた、建設にも使われる強力なヤツだ。
「大丈夫! 自然素材しか使ってない糊だからさ」
「や、やめろっ。やめ……ぶえっくしょん」
「そんなもの着けんなぁぁぁっくしょい」
「顔はボクたの命なんだぞ。それなのに……へくちょい」
眉もまつ毛もない禿げのイケメンとか、もういろいろ手遅れだから。
王国騎士たちも手伝ってくれて、悲鳴を上げる三人に眉毛を着けてやった。
そして王子一行は砂漠の町を出て、ゾフトスの港町へ向かう。
「早く港が完成するのことを願うよ。わざわざあの距離を歩かなくて済むからね」
「フレイで王国までお送りできればよかったんですけど」
「い、いや、その気持ちだけ受け取っておこう。はは、あははははは」
フレイが嫌だーっていうから、仕方なくここで見送りするしかない。
「王子、残りのクラスメイトの件、よろしくお願いします」
「うん。何かわかったら手紙を送ろう。冒険者ギルド当てでよかったのだね?」
「はい。町に来たついでに、ギルドには顔をだしてますので」
ギルド、ほんと便利だよなぁ。
「では王子。参りましょうか」
「うむ。ではダイチ殿、ルーシェ殿、シェリル殿。縁があれば、また」
「はい。お気をつけて。港が完成したら、ぜひまた来てください」
「あぁ、もちろんだとも」
まぁ一国の王子が、そう気軽に国外には出れないだろうけどね。
王子一行を見送った後、町長やギルマス、それから港の方にも顔を出して挨拶をしたら村に帰還。
ソードレイからも大工が来るって言うし、しかも造船技師も。
予定より早く、他国との交易が始められるかもな。



