「お久しぶりです、ゼブラ兄さん」
「元気……そうだね、マリウス」
砂漠の町へやってきた。
今日はマリウスの親戚が来てないか確認のため、来ていたら商談を進めるためにだ。
冒険者ギルド経由で滞在宿を知らせてくれていたので、すぐに見つかってよかったよ。
「こちらが手紙でも話した、ユタカ様です」
「はじめまして。ユタカです」
「こちらこそはじめまして。マリウスの母方の従兄で、ゼブラ・ストッカーと申します。こちらは妻のナーシャです」
「ナーシャと申します」
ゼブラ……シマウマ?
見た感じはマリウスとそう変わらなさそうな年齢だけど、結婚しているあたり勝負はゼブラ氏の勝ちだな。
なんだかマリウスを見て、驚いている様子だったな。
「ナーシャさん、砂漠の暑さは大丈夫ですか?」
「はい、マリウス様。私も元々暑い国の出身ですから」
「ならよかったです。僕は最初、耐えられませんでしたから」
炎天下の砂漠で無理して耐えていたら、それこそ死んでしまう。
耐えなくていいんだよそこは。
ストッカー夫妻が町に到着したのは三日前だという。
いいタイミングだ。
「商談の前に、いろいろ考えなおす必要があるかもしれません」
「に、兄さん、それはどういう?」
「この砂漠には国がありません。そして港町も。だから海上経由で交易をするなら、南のゾフトス王国の港町から陸路で移動するしかないのです」
「そ、そうなりますね」
「あそこも港町でかかる税関係の費用が、予想以上に高いんだ。わたしが知っていた金額より、二割増しになっていたよ」
「えぇ!?」
他の国から来た時には入国税がかかる。これは人に対しても、物に対してもそうらしい。
その料金が上がった――ってことだ。しかもつい最近。
「それだけじゃありません。ゾフトスから人が出国する際には税を払う必要はないが、それが物だと税の支払いを求められる。考えてみてくください。船から降りて人と物に税を払って、すぐに砂漠へ入る訳ですが、その時に物を国外に出すからと税を求められるんです」
それがたとえ、ゾフトス王国産のものでなくても――だ。
更に砂漠で交易をし、それを持ってゾフトスに入れば税金を取られる。
港町で船に乗れば、交易品に対して出国税が取られる。
ゾフトスで商売するわけじゃないのに、金取られすぎ。
「確かにそれだと、利益を出すために商品の単価を上げるか、こっちから買い取る金額を下げるかしないとダメだな」
「そういうことなんです……。しかし長期的な交易を見越して、ある提案をさせていただこうかと考えているのですよ」
「ある提案、ですか?」
「ゼブラ兄さん、それは?」
彼はにっこりと笑って、「造るんです、港を」と、とんでもない提案をした。
「そもそもミナトとは、どういった所なのでしょう?」
「海から来る船を受け入れる場所、かな。ほら、砂船を停泊させてた宿屋あっただろ? あれのもっと大きい番。それでいて海にあるヤツさ」
「ふぅん。ユタカが以前、海を行き来する船は大きいって言ってたわね。でもサンゴを獲ってたあいつらの船は小さかったけど」
「あれはただの小舟さ。こそこそするのに、大きな船じゃダメだろ」
港を知らないルーシェたちに説明をしながら、冒険者ギルドへと向かった。
砂漠には国がない。
とはいえ、勝手に港を作ってもいいものか……。
それを聞くために、冒険者ギルドへとやってきた。
「お前ぇら、ギルドを便利相談所かなんかだと思ってねぇか?」
「え、いや……あの……はは」
ちょっと思ってるかも。
「まぁいい。確かに港は欲しいところなんだよ。ゾルト港の領主が、関税だのなんだのと値上げしやがってよ。素材の運搬費用だけでかなりの痛手になってきたのさ」
ゾルト港ってのが、ゾフトス王国にある港のことだろう。
「なんで急に値上げしたんだろう?」
「そいつはあれだ。サンゴの密漁が出来なくなったからだろう。懐の潤いが減ったもんで、別のとこから搾り取ろうってこった」
「え、じゃあ領主も加担してたってこと?」
「じゃなきゃ、密漁者の操作に協力しない訳ねえじゃねえか」
と、シェリルの言葉にギルドマスターは答えた。
ロクな領主じゃないようだ。
「とりあえずは町長と話しをしてみるか。港を作るにしても人手がいる。そして港を誰が管理するのか、そういった話も必要だろうし。ただな……」
「ん?」
「町長も今日は立て込んでると思うぜ」
「忙しそうなのか?」
「忙しいっつうか、うるせぇのが来ててよ」
クレーマーかな。
「水の大神殿から神官どもが来ててな」
「水の……ん? 聞いたことあるような、ないような」
水の神殿……水……。
『アタシを封印して閉じ込めてたクソ野郎どものいる神殿よ』
ぽんっとご機嫌斜めなアクアディーネが出てきた。
あぁ……そうだった。
何百年もアクアディーネを閉じ込めてた場所が、水の大神殿って言ってたっけ。
しかも彼女を騙し、力を奪い続けていた。
うぅん、こりゃなにか騒ぎになりそうだ。
「元気……そうだね、マリウス」
砂漠の町へやってきた。
今日はマリウスの親戚が来てないか確認のため、来ていたら商談を進めるためにだ。
冒険者ギルド経由で滞在宿を知らせてくれていたので、すぐに見つかってよかったよ。
「こちらが手紙でも話した、ユタカ様です」
「はじめまして。ユタカです」
「こちらこそはじめまして。マリウスの母方の従兄で、ゼブラ・ストッカーと申します。こちらは妻のナーシャです」
「ナーシャと申します」
ゼブラ……シマウマ?
見た感じはマリウスとそう変わらなさそうな年齢だけど、結婚しているあたり勝負はゼブラ氏の勝ちだな。
なんだかマリウスを見て、驚いている様子だったな。
「ナーシャさん、砂漠の暑さは大丈夫ですか?」
「はい、マリウス様。私も元々暑い国の出身ですから」
「ならよかったです。僕は最初、耐えられませんでしたから」
炎天下の砂漠で無理して耐えていたら、それこそ死んでしまう。
耐えなくていいんだよそこは。
ストッカー夫妻が町に到着したのは三日前だという。
いいタイミングだ。
「商談の前に、いろいろ考えなおす必要があるかもしれません」
「に、兄さん、それはどういう?」
「この砂漠には国がありません。そして港町も。だから海上経由で交易をするなら、南のゾフトス王国の港町から陸路で移動するしかないのです」
「そ、そうなりますね」
「あそこも港町でかかる税関係の費用が、予想以上に高いんだ。わたしが知っていた金額より、二割増しになっていたよ」
「えぇ!?」
他の国から来た時には入国税がかかる。これは人に対しても、物に対してもそうらしい。
その料金が上がった――ってことだ。しかもつい最近。
「それだけじゃありません。ゾフトスから人が出国する際には税を払う必要はないが、それが物だと税の支払いを求められる。考えてみてくください。船から降りて人と物に税を払って、すぐに砂漠へ入る訳ですが、その時に物を国外に出すからと税を求められるんです」
それがたとえ、ゾフトス王国産のものでなくても――だ。
更に砂漠で交易をし、それを持ってゾフトスに入れば税金を取られる。
港町で船に乗れば、交易品に対して出国税が取られる。
ゾフトスで商売するわけじゃないのに、金取られすぎ。
「確かにそれだと、利益を出すために商品の単価を上げるか、こっちから買い取る金額を下げるかしないとダメだな」
「そういうことなんです……。しかし長期的な交易を見越して、ある提案をさせていただこうかと考えているのですよ」
「ある提案、ですか?」
「ゼブラ兄さん、それは?」
彼はにっこりと笑って、「造るんです、港を」と、とんでもない提案をした。
「そもそもミナトとは、どういった所なのでしょう?」
「海から来る船を受け入れる場所、かな。ほら、砂船を停泊させてた宿屋あっただろ? あれのもっと大きい番。それでいて海にあるヤツさ」
「ふぅん。ユタカが以前、海を行き来する船は大きいって言ってたわね。でもサンゴを獲ってたあいつらの船は小さかったけど」
「あれはただの小舟さ。こそこそするのに、大きな船じゃダメだろ」
港を知らないルーシェたちに説明をしながら、冒険者ギルドへと向かった。
砂漠には国がない。
とはいえ、勝手に港を作ってもいいものか……。
それを聞くために、冒険者ギルドへとやってきた。
「お前ぇら、ギルドを便利相談所かなんかだと思ってねぇか?」
「え、いや……あの……はは」
ちょっと思ってるかも。
「まぁいい。確かに港は欲しいところなんだよ。ゾルト港の領主が、関税だのなんだのと値上げしやがってよ。素材の運搬費用だけでかなりの痛手になってきたのさ」
ゾルト港ってのが、ゾフトス王国にある港のことだろう。
「なんで急に値上げしたんだろう?」
「そいつはあれだ。サンゴの密漁が出来なくなったからだろう。懐の潤いが減ったもんで、別のとこから搾り取ろうってこった」
「え、じゃあ領主も加担してたってこと?」
「じゃなきゃ、密漁者の操作に協力しない訳ねえじゃねえか」
と、シェリルの言葉にギルドマスターは答えた。
ロクな領主じゃないようだ。
「とりあえずは町長と話しをしてみるか。港を作るにしても人手がいる。そして港を誰が管理するのか、そういった話も必要だろうし。ただな……」
「ん?」
「町長も今日は立て込んでると思うぜ」
「忙しそうなのか?」
「忙しいっつうか、うるせぇのが来ててよ」
クレーマーかな。
「水の大神殿から神官どもが来ててな」
「水の……ん? 聞いたことあるような、ないような」
水の神殿……水……。
『アタシを封印して閉じ込めてたクソ野郎どものいる神殿よ』
ぽんっとご機嫌斜めなアクアディーネが出てきた。
あぁ……そうだった。
何百年もアクアディーネを閉じ込めてた場所が、水の大神殿って言ってたっけ。
しかも彼女を騙し、力を奪い続けていた。
うぅん、こりゃなにか騒ぎになりそうだ。



