「イヤだイヤだイヤだイヤだ! ミノタウロスの野郎どもは鼻息は荒れぇし、ドスドス五月蠅ぇし、汗臭ぇし、オレぁぜーったいイヤだぜ」
村に帰ってバフォおじーさ……おじさんに、ミノタウロスを家畜にするから、牧場とかどう作ればいいかアドバイスして貰おうと思ったらこれだ。
「ちょ、待ってくださいユタカ様! どうしてミノタウロスなんです!?」
「え? 牛と交換するんだろう?」
「そうです! 牛ですよ!!」
「だからミノタウロスなんじゃ」
「どうしてそうなるんです!」
「お前ぇの世界じゃミノタウロスが家畜だったのか?」
え?
俺の世界……いや、牛だけど。
「牛」
「こっちの世界だって牛ですよ!」
「お前ぇ、まともな動物を見てねぇから、この世界じゃモンスターが動物だって勘違いしてねぇか? いっとくがオレんちの家族は普通《・・》のヤギだぜ? わかるか?」
動物……どうぶ……あ。
うわぁぁ、そうだよ。なんでわざわざモンスターに脳内変換させてんだ。
そうだよ。普通の動物だっているじゃん。
「やっと理解したか」
「はぁ……ミノタウロスを家畜になんて、聞いたことありませんよ」
「あいつら筋肉質で、食っても美味かねぇと思うぜ」
ぅ……ま、まぁ確かに、冷静になって考えたら美味しくなさそうだ。
「牛豚の牧場か。オレも詳しくねぇから、今まで見た牧場の感想しか言えねぇけどよ。とりあえず、広さが必要だよな」
「そうですね。あと牧草でしょうか。草の成長はユタカ様にお願いするとして、種も一緒に購入しましょう」
「あ、あぁ、そうだな。けどマリウス、その親戚ってのとどうやって連絡を取り合うんだ? さっきの通信魔法ってやつ?」
「いえ。貰った返事に、従兄が砂漠の町へ来ると書いてありました。八の月の後半には到着するだろうってありましたので、そろそろかなぁと」
「八の月?」
「あ、暦のことをまだご存じなかったですね。まぁここではあまり必要ないですし」
この世界でも、一年は十二ヶ月で分けられている。
地球と違うのは、毎月三十日だってこと。
そして新しい年になると、最初の五日間は『祝福の日』と言って、ここは一月ではないんだとか。
これで一年が三六五日になる。
なんで一年って、異世界でも三六五日なんだ?
「八の月ってことは、八月か。俺が召喚されたのって、向こうの世界だと十二月だったけど」
「こちらの世界でも十二の月でしたよ」
「ってことは、俺がこっちの世界に来てもう八ヶ月が過ぎたのか」
早いような、短いような。
その八カ月の間に、俺は動物=モンスターと認識するようになってしまったようだ。
いや、正確に言うと肉=モンスターか……。
「牧場ですか?」
「今度は何を育てるの? サンドフィッシュ? それとも――」
「シャッコーマ、美味しかったですよねぇ」
「いやいやいや、モンスターじゃなくって動物だって」
夕食を時間に家畜の話をすると、返って来たのはこれ。
うん。
俺の反応って、砂漠じゃ普通だったんだ。
ちょっと安心した。
けどシャッコーマはいいよなぁ。ごくり。
動物と聞いてもピンとこない二人に、豚と牛という動物を飼うことを伝えた。
「豚って、モンスターに例えるとどんなヤツ?」
「え……お、オーク」
「おーくは知らないわ」
「初めて聞く名ですね」
砂漠にオークは生息してなさそうだもんな。
「牛は?」
「ミ、ミノタウロス……」
「うぅん、そっちも知りませんねぇ」
だって砂漠には以下略。
「ま、まぁ実物を見てからのお楽しみだって」
「はいっ」
「かわいいのかしらぁ」
は!?
こ、これはまさか――
こんなかわいい豚を食べるなんて、信じられないっ。
ユタカさん、この牛さん、このまま飼ってはいけませんか?
ってなことに――
……いや、大丈夫かな。
チキンホーンの雛たちは、まだヒヨコの姿のままだ。サイズは少しずつ大きくなっているけれど。
聞けば、黄色いふわふわな時期ってのは一年ほど。
普通の鶏よりかなり長期間、雛なんだな。
母鶏はもう一カ月ほどすれば、無精卵の卵を産めるようになると言っていた。
今は追加で捕まえた二羽の雌鶏が産んでくれる卵しかないが、多い時には一日で七個の卵が手に入る。
ダチョウよりも大きな卵だ。
二日に一度、各家庭に溶き卵が配られる。どう使うかは各家庭次第。
それとは別に、余った分は俺やマリウスが知るお菓子の材料として使った。
パンケーキとか、クッキーとか、あとプリン!
いやぁ、正しい作り方とか知らないけど、なんとなくてやってみたが案外うまくいくもんだ。
卵いるだろ? 牛乳もいるよな? ヤギ乳だけど問題ない。甘いんだし、砂糖も入ってるかも?
で、蒸すんだよな?
これで完成した。
カラメルソースは……ない。
つ、作り方は知ってるぞ!
砂糖水を焦がさないようにぐつぐつ煮るんだろ?
知ってる。
んで真っ黒になって失敗した。
い、いいんだよカラメルなんて。あんなの飾りだって。
子供たちにはソースがなくても大好評だったんだ。問題ない。
「それで、牧場ってどこに作るの?」
「それなんだよ。もうそんな広いスペースはないしなぁ」
話を戻して牧場だ。
このまま砂漠のモンスターがぜーんぶ北に移動したら、100%家畜に頼ることになる。
そうなったら結構な頭数が必要になるよなぁ。
村に帰ってバフォおじーさ……おじさんに、ミノタウロスを家畜にするから、牧場とかどう作ればいいかアドバイスして貰おうと思ったらこれだ。
「ちょ、待ってくださいユタカ様! どうしてミノタウロスなんです!?」
「え? 牛と交換するんだろう?」
「そうです! 牛ですよ!!」
「だからミノタウロスなんじゃ」
「どうしてそうなるんです!」
「お前ぇの世界じゃミノタウロスが家畜だったのか?」
え?
俺の世界……いや、牛だけど。
「牛」
「こっちの世界だって牛ですよ!」
「お前ぇ、まともな動物を見てねぇから、この世界じゃモンスターが動物だって勘違いしてねぇか? いっとくがオレんちの家族は普通《・・》のヤギだぜ? わかるか?」
動物……どうぶ……あ。
うわぁぁ、そうだよ。なんでわざわざモンスターに脳内変換させてんだ。
そうだよ。普通の動物だっているじゃん。
「やっと理解したか」
「はぁ……ミノタウロスを家畜になんて、聞いたことありませんよ」
「あいつら筋肉質で、食っても美味かねぇと思うぜ」
ぅ……ま、まぁ確かに、冷静になって考えたら美味しくなさそうだ。
「牛豚の牧場か。オレも詳しくねぇから、今まで見た牧場の感想しか言えねぇけどよ。とりあえず、広さが必要だよな」
「そうですね。あと牧草でしょうか。草の成長はユタカ様にお願いするとして、種も一緒に購入しましょう」
「あ、あぁ、そうだな。けどマリウス、その親戚ってのとどうやって連絡を取り合うんだ? さっきの通信魔法ってやつ?」
「いえ。貰った返事に、従兄が砂漠の町へ来ると書いてありました。八の月の後半には到着するだろうってありましたので、そろそろかなぁと」
「八の月?」
「あ、暦のことをまだご存じなかったですね。まぁここではあまり必要ないですし」
この世界でも、一年は十二ヶ月で分けられている。
地球と違うのは、毎月三十日だってこと。
そして新しい年になると、最初の五日間は『祝福の日』と言って、ここは一月ではないんだとか。
これで一年が三六五日になる。
なんで一年って、異世界でも三六五日なんだ?
「八の月ってことは、八月か。俺が召喚されたのって、向こうの世界だと十二月だったけど」
「こちらの世界でも十二の月でしたよ」
「ってことは、俺がこっちの世界に来てもう八ヶ月が過ぎたのか」
早いような、短いような。
その八カ月の間に、俺は動物=モンスターと認識するようになってしまったようだ。
いや、正確に言うと肉=モンスターか……。
「牧場ですか?」
「今度は何を育てるの? サンドフィッシュ? それとも――」
「シャッコーマ、美味しかったですよねぇ」
「いやいやいや、モンスターじゃなくって動物だって」
夕食を時間に家畜の話をすると、返って来たのはこれ。
うん。
俺の反応って、砂漠じゃ普通だったんだ。
ちょっと安心した。
けどシャッコーマはいいよなぁ。ごくり。
動物と聞いてもピンとこない二人に、豚と牛という動物を飼うことを伝えた。
「豚って、モンスターに例えるとどんなヤツ?」
「え……お、オーク」
「おーくは知らないわ」
「初めて聞く名ですね」
砂漠にオークは生息してなさそうだもんな。
「牛は?」
「ミ、ミノタウロス……」
「うぅん、そっちも知りませんねぇ」
だって砂漠には以下略。
「ま、まぁ実物を見てからのお楽しみだって」
「はいっ」
「かわいいのかしらぁ」
は!?
こ、これはまさか――
こんなかわいい豚を食べるなんて、信じられないっ。
ユタカさん、この牛さん、このまま飼ってはいけませんか?
ってなことに――
……いや、大丈夫かな。
チキンホーンの雛たちは、まだヒヨコの姿のままだ。サイズは少しずつ大きくなっているけれど。
聞けば、黄色いふわふわな時期ってのは一年ほど。
普通の鶏よりかなり長期間、雛なんだな。
母鶏はもう一カ月ほどすれば、無精卵の卵を産めるようになると言っていた。
今は追加で捕まえた二羽の雌鶏が産んでくれる卵しかないが、多い時には一日で七個の卵が手に入る。
ダチョウよりも大きな卵だ。
二日に一度、各家庭に溶き卵が配られる。どう使うかは各家庭次第。
それとは別に、余った分は俺やマリウスが知るお菓子の材料として使った。
パンケーキとか、クッキーとか、あとプリン!
いやぁ、正しい作り方とか知らないけど、なんとなくてやってみたが案外うまくいくもんだ。
卵いるだろ? 牛乳もいるよな? ヤギ乳だけど問題ない。甘いんだし、砂糖も入ってるかも?
で、蒸すんだよな?
これで完成した。
カラメルソースは……ない。
つ、作り方は知ってるぞ!
砂糖水を焦がさないようにぐつぐつ煮るんだろ?
知ってる。
んで真っ黒になって失敗した。
い、いいんだよカラメルなんて。あんなの飾りだって。
子供たちにはソースがなくても大好評だったんだ。問題ない。
「それで、牧場ってどこに作るの?」
「それなんだよ。もうそんな広いスペースはないしなぁ」
話を戻して牧場だ。
このまま砂漠のモンスターがぜーんぶ北に移動したら、100%家畜に頼ることになる。
そうなったら結構な頭数が必要になるよなぁ。


