「じゃ、七日後に迎えに来るよ」
「モグ。それまでに荷造りも終わってるモグから、よろしく頼むモグな」
ドリュー族の里でトレバーが話をすると、七家族が移住を申し出た。
この里でも水不足は解消されつつある。でも食料の方はまったく解決していない。
そこで小麦の木や、ここにはない野菜、調味料を成長させた。
真新しい食材を使った料理を、ミファさんが里の奥様方に伝授する。
さすがに一日じゃ無理だから、それもあって一週間後に迎えにくるってことにして俺とルーシェは渓谷の村に戻った。
トレバーとトミーも里に残る。
「渓谷に戻ったら、新しいドリュー族の家をどこに作ってもらうか決めないとね」
「あぁ。オースティンたちに決めてもらおう」
渓谷の村に帰って来ると、さっそくドリュー族のオースティンたち大人を呼んで、里から七家族引っ越してくると伝えた。
「住居はどこにする?」
「そうモグな。あっちに二軒、向こうに十軒ぐらいの住居は掘れるモグ」
二軒の方が渓谷の奥側の方。十軒は砂漠に近い崖の方だ。
つまり横一列でずらーっと住居を作れるってことになる。
子供たちが成長して独立したら、ちょっと足りないかもな。
その時には、
「なぁに、その時には渓谷の奥に通路となる道を掘って、そこに住居を構えるモグ」
「もしくは畑の方モグな」
「モククモクク」
なら、将来の方も大丈夫だな。
将来と言えば――
「ね、ねぇユタカ」
「ん?」
「あ、あのね……ドリュー族の子供たちは解決したけど、その……こ、子供……私たちのっ」
「お、俺たちの!?」
「あ! ち、違うの。私とユタカのっていう意味じゃないのよ。エディやオリエ、トロンとか、ここの子供たちのことよ! うん、そう」
「あ、そ、そうか。今いる子供たちのことか」
び、びっくりした。
子供が欲しいとか言うのかと思った。
エディたちのことだよな。うん。
確かに、いつかあの子たちも大人になって、結婚して、そしたら今の親元を離れて新しい家族と新しい家に住むことになるだろう。
うぅん……どこに家を建てるかだなぁ。
まだ多少余裕はあるものの、孫世代まで考えるときつそうだ。
「二、三十年先になれば、外の砂漠地帯の土が固まってるといいんだけどなぁ」
「渓谷の外に村を移すの?」
「いや、移さなくてもいいけど、外にも広げられたらなぁって」
「そうね。水にも食料にも困らなくなれば、人口だって増えるかもしれないもの」
うん。これまでは増やさない、絶やさないって意味で、子供は二人までってしてきたようだ。
でも暗黙のルールはもう必要ない。
しかし水や食料事情だけでなく、土地事情も考慮しなきゃいけなかったとは、今になってようやくわかったよ。
「ンベェー」
「ん? ってなんだよバフォおじさん」
「よぉ、ドリュー族の方はどうだった?」
「あぁ、七家族が引っ越してくることになったよ」
「んあ? どこにいんだ、その家族ってのは」
荷造りと、ミファさんが料理レシプを伝授する期間が必要だから、七日後にまた迎えに行くと説明。
「なるほどなぁ。ますます賑やかになるだろうな」
「うん」
「女房の乳が足りなくなるんじゃねえか?」
……わああぁぁぁぁっ。
足りない。絶対足りない!
「むしろすでに足りてねぇけどな」
「あああぁぁぁぁぁっ。どうしようっ。おじさん、ヤギの知り合いいないのか?」
「まぁいるっちゃあいるが。普通のヤギだし、別の群れだからなぁ。縄張りってのも必要だしよぉ」
アニメではたくさんのヤギを山まで連れていく、ヤギ飼いの少年とかいたけど。
みんな仲良くしてたように見えたが、野生だとそういうわけにもいかないのか。
「あ、ところでフレイは?」
「あー……ダンナかぁ。ダンナはなぁ」
アスの母ちゃんが眠る墓所の方を見上げ、おじさんがため息を吐く。
なんとなく予想できる。
アスからお声がかからず、いじけているのだろう。
おじさんにそう尋ねると、髭を揺らして頷いた。
「あそこの親子も、なかなか大変ねぇ」
「まったくだぜシェリルの嬢ちゃん。親子っていやぁ、お前ら子供はまだなのか?」
「ぶふっ」
「こほっこほっ」
「あ? 二人して風邪か?」
こんの親父、タイムリーなネタを振るんじゃない!
それから五日後、ようやくアスから連絡があった。
ルンルンなフレイがここまで来て『さぁ行くぞ』『今すぐ行くぞ』と急かされて砂漠の村へ。
「おぉ、見違えるように立派な村になってるじゃないか。っていうか、もしかしてこれ、全部の家を建て直ししてないか!?」
「はい。新しい家を何軒か建て直すと、他のみなさんが羨ましそうに見ていらっしゃったので」
『子供タチガネ、新シイオ家ジャナイトヤッッテイウノ』
「実は……」
ルーシェが小声で「新参者が新しいお家に住めて、自分たちは古いままなんておかしいって揉めてしまって」と教えてくれた。
その時、ハクトがやって来て溜息を吐いた。
「悪いなユタカ。村のもんが我儘言って、そのせいでルーシェたちを長いこと引き留めてしまったんだ」
「聞いたよ。やっぱりいきなり移住者が増えると、問題も出るみたいだな。こっちは子供同士で喧嘩してるよ」
家に関しては問題ない。
ツリーハウスを新しくしてくれと頼む一家はいないからな。
「まぁこれまで使われていた家も、結構風化してる部分とかあったし、この先のこと考えると今のうちに新築にしておくのは、悪いことじゃないと思うし」
「そうですね。実際、何軒か、使えそうな石を抜き取ろうとしたら崩れてしまいましたし」
「え、そうなの? それって危なかったんじゃない?」
「はい。雨が降るようになったことで、石の亀裂に水分がしみ込んでモロくなってしまっていたようなんです」
気づかないうちに崩れたりしないでよかったよ。
それで全世帯に新築を建て、予定していたより時間がかかったようだ。
ここでも小麦粉の木や夏野菜、果物を成長させて、当面の食料不足にならないよう手を打っておいた。
一晩かけて料理レシピを教え、帰宅したのは翌日のこと。
「モグ。それまでに荷造りも終わってるモグから、よろしく頼むモグな」
ドリュー族の里でトレバーが話をすると、七家族が移住を申し出た。
この里でも水不足は解消されつつある。でも食料の方はまったく解決していない。
そこで小麦の木や、ここにはない野菜、調味料を成長させた。
真新しい食材を使った料理を、ミファさんが里の奥様方に伝授する。
さすがに一日じゃ無理だから、それもあって一週間後に迎えにくるってことにして俺とルーシェは渓谷の村に戻った。
トレバーとトミーも里に残る。
「渓谷に戻ったら、新しいドリュー族の家をどこに作ってもらうか決めないとね」
「あぁ。オースティンたちに決めてもらおう」
渓谷の村に帰って来ると、さっそくドリュー族のオースティンたち大人を呼んで、里から七家族引っ越してくると伝えた。
「住居はどこにする?」
「そうモグな。あっちに二軒、向こうに十軒ぐらいの住居は掘れるモグ」
二軒の方が渓谷の奥側の方。十軒は砂漠に近い崖の方だ。
つまり横一列でずらーっと住居を作れるってことになる。
子供たちが成長して独立したら、ちょっと足りないかもな。
その時には、
「なぁに、その時には渓谷の奥に通路となる道を掘って、そこに住居を構えるモグ」
「もしくは畑の方モグな」
「モククモクク」
なら、将来の方も大丈夫だな。
将来と言えば――
「ね、ねぇユタカ」
「ん?」
「あ、あのね……ドリュー族の子供たちは解決したけど、その……こ、子供……私たちのっ」
「お、俺たちの!?」
「あ! ち、違うの。私とユタカのっていう意味じゃないのよ。エディやオリエ、トロンとか、ここの子供たちのことよ! うん、そう」
「あ、そ、そうか。今いる子供たちのことか」
び、びっくりした。
子供が欲しいとか言うのかと思った。
エディたちのことだよな。うん。
確かに、いつかあの子たちも大人になって、結婚して、そしたら今の親元を離れて新しい家族と新しい家に住むことになるだろう。
うぅん……どこに家を建てるかだなぁ。
まだ多少余裕はあるものの、孫世代まで考えるときつそうだ。
「二、三十年先になれば、外の砂漠地帯の土が固まってるといいんだけどなぁ」
「渓谷の外に村を移すの?」
「いや、移さなくてもいいけど、外にも広げられたらなぁって」
「そうね。水にも食料にも困らなくなれば、人口だって増えるかもしれないもの」
うん。これまでは増やさない、絶やさないって意味で、子供は二人までってしてきたようだ。
でも暗黙のルールはもう必要ない。
しかし水や食料事情だけでなく、土地事情も考慮しなきゃいけなかったとは、今になってようやくわかったよ。
「ンベェー」
「ん? ってなんだよバフォおじさん」
「よぉ、ドリュー族の方はどうだった?」
「あぁ、七家族が引っ越してくることになったよ」
「んあ? どこにいんだ、その家族ってのは」
荷造りと、ミファさんが料理レシプを伝授する期間が必要だから、七日後にまた迎えに行くと説明。
「なるほどなぁ。ますます賑やかになるだろうな」
「うん」
「女房の乳が足りなくなるんじゃねえか?」
……わああぁぁぁぁっ。
足りない。絶対足りない!
「むしろすでに足りてねぇけどな」
「あああぁぁぁぁぁっ。どうしようっ。おじさん、ヤギの知り合いいないのか?」
「まぁいるっちゃあいるが。普通のヤギだし、別の群れだからなぁ。縄張りってのも必要だしよぉ」
アニメではたくさんのヤギを山まで連れていく、ヤギ飼いの少年とかいたけど。
みんな仲良くしてたように見えたが、野生だとそういうわけにもいかないのか。
「あ、ところでフレイは?」
「あー……ダンナかぁ。ダンナはなぁ」
アスの母ちゃんが眠る墓所の方を見上げ、おじさんがため息を吐く。
なんとなく予想できる。
アスからお声がかからず、いじけているのだろう。
おじさんにそう尋ねると、髭を揺らして頷いた。
「あそこの親子も、なかなか大変ねぇ」
「まったくだぜシェリルの嬢ちゃん。親子っていやぁ、お前ら子供はまだなのか?」
「ぶふっ」
「こほっこほっ」
「あ? 二人して風邪か?」
こんの親父、タイムリーなネタを振るんじゃない!
それから五日後、ようやくアスから連絡があった。
ルンルンなフレイがここまで来て『さぁ行くぞ』『今すぐ行くぞ』と急かされて砂漠の村へ。
「おぉ、見違えるように立派な村になってるじゃないか。っていうか、もしかしてこれ、全部の家を建て直ししてないか!?」
「はい。新しい家を何軒か建て直すと、他のみなさんが羨ましそうに見ていらっしゃったので」
『子供タチガネ、新シイオ家ジャナイトヤッッテイウノ』
「実は……」
ルーシェが小声で「新参者が新しいお家に住めて、自分たちは古いままなんておかしいって揉めてしまって」と教えてくれた。
その時、ハクトがやって来て溜息を吐いた。
「悪いなユタカ。村のもんが我儘言って、そのせいでルーシェたちを長いこと引き留めてしまったんだ」
「聞いたよ。やっぱりいきなり移住者が増えると、問題も出るみたいだな。こっちは子供同士で喧嘩してるよ」
家に関しては問題ない。
ツリーハウスを新しくしてくれと頼む一家はいないからな。
「まぁこれまで使われていた家も、結構風化してる部分とかあったし、この先のこと考えると今のうちに新築にしておくのは、悪いことじゃないと思うし」
「そうですね。実際、何軒か、使えそうな石を抜き取ろうとしたら崩れてしまいましたし」
「え、そうなの? それって危なかったんじゃない?」
「はい。雨が降るようになったことで、石の亀裂に水分がしみ込んでモロくなってしまっていたようなんです」
気づかないうちに崩れたりしないでよかったよ。
それで全世帯に新築を建て、予定していたより時間がかかったようだ。
ここでも小麦粉の木や夏野菜、果物を成長させて、当面の食料不足にならないよう手を打っておいた。
一晩かけて料理レシピを教え、帰宅したのは翌日のこと。