「ドリュー族を?」
「モグ」
新しく開墾した畑の畝は、全部作り終えた。
ドリュー族の土捌きであっという間だったんだけど、休んでいる間にもうちょっと人手不足が解消できればなぁって言ってたらドリュー族の話題になった。
「そっか。トレバーたちはドリュー族の水や食料不足を少しでも解消させるために、里を出たんだったな」
「モグ。あっちでも雨が降っているモグだろうから、水不足は解消されたはずモグ。食料に関しても、徐々によくなるモグよ」
「でもさ、何家族かこっちに来てもらったら、向こうの人手が足りなくなったりはしないか?」
「心配ないモグ。わしら畑仕事は得意モグから、むしろ人手が余っていたから里を出たモグよ。実はもとから、移住先が見つかって安定した暮らしができるようになったら、もう何組か合流することになってたモグ。だけど――」
ここには人間たちも暮らしている。
大勢で押し掛けるのは迷惑がかかるだろうと思って、今まで話せないでいたらしい。
「我々は別にいいと思うよ。ドリュー族の住居は穴の中だし、ツリーハウス用の平らな土地も必要ないだろう?」
「うんうん。贅沢を言えば、ドリュー族がくるなら畑をもう少し拡張したいなぁ」
「けどそうなると、ベヒモスくん様にまた土地をならしてもらわなきゃならんだろう」
他のみんなの意見でも、ドリュー族受け入れは歓迎のようだ。
今ある畑の面積なら、とりあえず毎日十分食べられる作物を育てられる。
ただ種類を豊富にしたいなら、畝を細かくわけるかしなきゃならない。
当初、新しく平地になった部分を全部畑にしようと考えていた。
で、途中で気づいたんだ。
果物はどこで育てるんだ!?
って。
で、畑予定地の半分を果物農園に変更。
まぁそれもあって畝の完成も、予定より早く終わったんだけどさ。
たださ。畑ってやっぱり時々は土を休ませてやらなきゃいけないんだよ。
そういうの考えると、予備の土地は欲しい。
「それについてもいい土地を見つけたモグ」
「いい土地?」
「モグ。ここから東にいくと、ここよりは少し狭い渓谷があるモグ」
「おぉ、そうだった! そっちは水場がないから暮らすのに不向きで、行くこともなかったし、すっかり忘れていたよ」
「なるほど。畑を作るには十分な広さはあるな」
オーリたちがそんな話をしている。
んー、確かにどっかでそんな話聞いたような。
「だがトレバーさん。あそこまで行くのに、崖を登ったり下りたりしなきゃならないし、畑仕事のためだけに行くには大変じゃないのか?」
「それなら安心するモグ。あっちの渓谷まで、トンネルを掘るモグよ。真っすぐ掘れるモグから、三十分もあれば着くモグよ」
「なるほど。それなら崖の上り下りもないし、危険もなくなるな」
久々にキノコ階段の出番かなと思ったけど、必要なさそうだ。
すると足元でぽんっと、ウリ坊が姿を現した。
『トンネル掘るの? 優しいボクが手伝ってあげろうか?』
おぉ! ベヒモスがやってくれるなら、一瞬だな。
あ、でも……なんとなくトレバーの顔がしゅんっとしている気がする。
他のドリュー族もだ。
自分たちの仕事をとられたくないのか、役立ちたいのか、そんなところだろうな。
「ベヒモス、くん、ありがとう。でも俺たちの問題だし、今回はドリュー族にお願いするよ」
「モグ! わしらが言い出したことモグから、責任もって仕事をするモグよ」
「だってさ」
ウリ坊はきょとんとした顔で俺たちを見上げていたが、やがてニコっと笑って尻尾をぶんぶん振った。
『そっか。いい心がけだと思うよ。じゃ、ボクはお手伝いしないかわりに、いいこと教えてあげる。ついて来て』
「ん? どこにいくんだ、ベヒモス、くん」
『ねぇー、いつになったら普通に「ベヒモスくん」って言ってくれるのぉ?』
いつだろうなぁ。
連れていかれたのは、果樹園の端にある崖だ。
『ここね』
「ここねって、どういうこと?」
「お、おぉ! そうモグか!!」
「え、なんかわかったの?」
トレバーはニッコリ笑って頷く。
「ベヒモスさま」
『ベヒモスくんだってば』
「ベヒモスくんさま、ここを真っすぐ掘れば、東側の渓谷モグな!」
『さまはいらないのに、まぁいっか。その通り。まーっすぐ掘れば渓谷だよ。途中に硬い岩なんかもないし、掘りやすいはずだからぁ』
なるほど。確かに『いいこと』だ。
さっそく今日から掘り掘りを始めるらしい。
そしてドリュー族の里へも行くことになった。
「一度、山の北側に行くモグ」
「北の集落の方かな」
「そうそうモグ。わしは行ったことないモグが、里の者の中には人間の集落に行ったことなる者もいたモグよ」
へぇ、そうなんだ。
あとで聞いたら、あっちから来た人たちはドリュー族を知っていた。
「ここ三年ほどは来ていなかったけどね。それ以前は年に一、二度来ていたよ。物々交換をしにね」
「ドリュー族の里は、私たちが暮らしていたあそこからもっと山に入ったとこにあるわ。往復で三日かかるって言ってたかしら、ねぇアナタ」
「あぁ、そうだな。まぁドリュー族は俺たち人間より小柄だから、歩く速度も少し遅いだろう。片道一日ってところじゃないか?」
ま、フレイに頼めば一瞬だけどね。
・
・
『ダメだ』
「え、なんで!?」
『向こうの村で頑張っておる童の仕事が、いつ終わるかわからぬのだ。我はここで童が呼ぶのを待たねばならぬ』
キリッという擬音が聞こえそうな顔しやがって。
じゃあ砂船で行くしかないか。
ってことを村に戻ってトレバーに話すと、
「その方がいいモグ。いきなり火竜様が現れたら、気絶する者が大勢出るモグから」
「それもそうか」
ってことで、トレバーとトミー、向こうに姉がいるという奥さんのミファさんが一緒にドリュー族の里へ行くことになった。
「モグ」
新しく開墾した畑の畝は、全部作り終えた。
ドリュー族の土捌きであっという間だったんだけど、休んでいる間にもうちょっと人手不足が解消できればなぁって言ってたらドリュー族の話題になった。
「そっか。トレバーたちはドリュー族の水や食料不足を少しでも解消させるために、里を出たんだったな」
「モグ。あっちでも雨が降っているモグだろうから、水不足は解消されたはずモグ。食料に関しても、徐々によくなるモグよ」
「でもさ、何家族かこっちに来てもらったら、向こうの人手が足りなくなったりはしないか?」
「心配ないモグ。わしら畑仕事は得意モグから、むしろ人手が余っていたから里を出たモグよ。実はもとから、移住先が見つかって安定した暮らしができるようになったら、もう何組か合流することになってたモグ。だけど――」
ここには人間たちも暮らしている。
大勢で押し掛けるのは迷惑がかかるだろうと思って、今まで話せないでいたらしい。
「我々は別にいいと思うよ。ドリュー族の住居は穴の中だし、ツリーハウス用の平らな土地も必要ないだろう?」
「うんうん。贅沢を言えば、ドリュー族がくるなら畑をもう少し拡張したいなぁ」
「けどそうなると、ベヒモスくん様にまた土地をならしてもらわなきゃならんだろう」
他のみんなの意見でも、ドリュー族受け入れは歓迎のようだ。
今ある畑の面積なら、とりあえず毎日十分食べられる作物を育てられる。
ただ種類を豊富にしたいなら、畝を細かくわけるかしなきゃならない。
当初、新しく平地になった部分を全部畑にしようと考えていた。
で、途中で気づいたんだ。
果物はどこで育てるんだ!?
って。
で、畑予定地の半分を果物農園に変更。
まぁそれもあって畝の完成も、予定より早く終わったんだけどさ。
たださ。畑ってやっぱり時々は土を休ませてやらなきゃいけないんだよ。
そういうの考えると、予備の土地は欲しい。
「それについてもいい土地を見つけたモグ」
「いい土地?」
「モグ。ここから東にいくと、ここよりは少し狭い渓谷があるモグ」
「おぉ、そうだった! そっちは水場がないから暮らすのに不向きで、行くこともなかったし、すっかり忘れていたよ」
「なるほど。畑を作るには十分な広さはあるな」
オーリたちがそんな話をしている。
んー、確かにどっかでそんな話聞いたような。
「だがトレバーさん。あそこまで行くのに、崖を登ったり下りたりしなきゃならないし、畑仕事のためだけに行くには大変じゃないのか?」
「それなら安心するモグ。あっちの渓谷まで、トンネルを掘るモグよ。真っすぐ掘れるモグから、三十分もあれば着くモグよ」
「なるほど。それなら崖の上り下りもないし、危険もなくなるな」
久々にキノコ階段の出番かなと思ったけど、必要なさそうだ。
すると足元でぽんっと、ウリ坊が姿を現した。
『トンネル掘るの? 優しいボクが手伝ってあげろうか?』
おぉ! ベヒモスがやってくれるなら、一瞬だな。
あ、でも……なんとなくトレバーの顔がしゅんっとしている気がする。
他のドリュー族もだ。
自分たちの仕事をとられたくないのか、役立ちたいのか、そんなところだろうな。
「ベヒモス、くん、ありがとう。でも俺たちの問題だし、今回はドリュー族にお願いするよ」
「モグ! わしらが言い出したことモグから、責任もって仕事をするモグよ」
「だってさ」
ウリ坊はきょとんとした顔で俺たちを見上げていたが、やがてニコっと笑って尻尾をぶんぶん振った。
『そっか。いい心がけだと思うよ。じゃ、ボクはお手伝いしないかわりに、いいこと教えてあげる。ついて来て』
「ん? どこにいくんだ、ベヒモス、くん」
『ねぇー、いつになったら普通に「ベヒモスくん」って言ってくれるのぉ?』
いつだろうなぁ。
連れていかれたのは、果樹園の端にある崖だ。
『ここね』
「ここねって、どういうこと?」
「お、おぉ! そうモグか!!」
「え、なんかわかったの?」
トレバーはニッコリ笑って頷く。
「ベヒモスさま」
『ベヒモスくんだってば』
「ベヒモスくんさま、ここを真っすぐ掘れば、東側の渓谷モグな!」
『さまはいらないのに、まぁいっか。その通り。まーっすぐ掘れば渓谷だよ。途中に硬い岩なんかもないし、掘りやすいはずだからぁ』
なるほど。確かに『いいこと』だ。
さっそく今日から掘り掘りを始めるらしい。
そしてドリュー族の里へも行くことになった。
「一度、山の北側に行くモグ」
「北の集落の方かな」
「そうそうモグ。わしは行ったことないモグが、里の者の中には人間の集落に行ったことなる者もいたモグよ」
へぇ、そうなんだ。
あとで聞いたら、あっちから来た人たちはドリュー族を知っていた。
「ここ三年ほどは来ていなかったけどね。それ以前は年に一、二度来ていたよ。物々交換をしにね」
「ドリュー族の里は、私たちが暮らしていたあそこからもっと山に入ったとこにあるわ。往復で三日かかるって言ってたかしら、ねぇアナタ」
「あぁ、そうだな。まぁドリュー族は俺たち人間より小柄だから、歩く速度も少し遅いだろう。片道一日ってところじゃないか?」
ま、フレイに頼めば一瞬だけどね。
・
・
『ダメだ』
「え、なんで!?」
『向こうの村で頑張っておる童の仕事が、いつ終わるかわからぬのだ。我はここで童が呼ぶのを待たねばならぬ』
キリッという擬音が聞こえそうな顔しやがって。
じゃあ砂船で行くしかないか。
ってことを村に戻ってトレバーに話すと、
「その方がいいモグ。いきなり火竜様が現れたら、気絶する者が大勢出るモグから」
「それもそうか」
ってことで、トレバーとトミー、向こうに姉がいるという奥さんのミファさんが一緒にドリュー族の里へ行くことになった。