「母方の実家からの手紙の内容ですが、ぜひ内陸との取引の仲介をさせてほしいとのことでした!」
夕食のあと、受け取った手紙についてマリウスから話を聞いた。
「そっか。じゃ今後、採掘した岩塩はそっちに売ることになるな。えぇっと、どうやるの?」
「あ、はい。従兄が砂漠の町に駐在するそうです」
「え!? 岩塩のために引っ越すっての?」
「ユタカさま、塩っていうのはそれだけ価値あるものなんですよ」
そうなのか……。
「あとついでと言ってななんですが、ニードルサボテンの美容エキスやシャンプー、リンスの貿易なんかもいかがかと思いまして」
「あぁ、あれって内陸の貴族に人気があるんだっけか」
「はいっ。他にも砂漠特有の名産があれば、それらも取引できればいいなぁって僕自身は考えているのですが。同時に、内陸のものを仕入れるというのもアリだと思います」
内陸産か。
俺の種コレクションにない、涼しい地方で育つ作物の種が手に入るだろう。
でも種は一つあれば、あとは俺のスキルでいくらでも増やせるんだよなぁ。
お金だって今は全然必要ないし。
だからって取引したくないわけじゃない。
他になにか……。
「こっちが提供できるものがあっても、提供してほしいものがなぁ」
「ここにはない作物の種だって、いくらでもありますよ! 特に涼しい地方のものなんかは、砂漠だと貴重なものですし」
「確かにそうか。砂漠で全野菜、全果物制覇も可能なのか」
「そうです!」
野菜や果物の種類は、十分にある。
ただ細かいことを言うなら、レタスはあるけどサニーレタスはない。
肉を撒いて食べると美味い、サンチュもない。カイワレ大根やセロリ、キノコ類はシイタケ以外全部ない。
なくても困らないんだけど、あるといいな~ってやつはほとんどないんだよな。
果物にも同じことが言える。
ブドウは巨砲しかなくって、シャインマスカットやデラ……なんとかって小粒のやつとかないし。
ビワとかイチジク、まぁなくていいんだけど、ドリアンとかないんだよな。
ぜーんぶが砂漠で揃うとなったら、それって凄くない?
「ちょっと待って二人ともっ」
「「え?」」
夢が広がリングしているのに、シェリルにストップを掛けられた。
「なんでもかんでもこっちで栽培してたら、人手が全然足りないわよっ。今だってみんな頑張って働いてやっとなのにっ」
「あ……」
「そ、そうでした……。北の集落から来られた方々を入れても、畑の拡張作業で手一杯でしたしね」
そうだった。人手不足の解消に来たの集落の人たちに来て貰ったのに、ここでまた栽培する作物の種類を増やせば畑も増やさなきゃならなくなる。
実際、北からの移住者で畑に出れるのは十人ぐらいだ。小さな子たちを働かせるわけにはいかない。
いっそ労働者を雇えればなぁ。
……それ、いいんじゃないか?
内陸の方から出稼ぎに来てもらうとかさ。
明日、みんなに相談してみよう。
「それ僕んのだぞっ」
「いいじゃんか、くれたって!」
「ダメ! それも、あれもぜーんぶ僕たちの!」
朝から子供たちが喧嘩をしている。
まぁ子供が増えれば、こうなるのも仕方ないか。
「オモチャを取り合って喧嘩してるみたい。昨日、私たちが帰って来て直ぐの時も喧嘩してる子たちを見たわ」
「オモチャの数を増やすかなぁ」
「たぶんそれじゃ解決しないわよ」
「え、そうなの?」
子供たちの喧嘩を見ていると、確かにオモチャの取り合いみたいだった。
でもよく見ていると、ひとつのオモチャを巡って喧嘩しているんじゃない。
全部のオモチャをどっちが使うかで喧嘩しているんだ。
『どっち』というのは、元々この集落にいた子――ここにはバジリスクに襲われた集落からの子たちも含まれていて、それと北の集落から来たばかりの子たち。
そしてドリュー族の子たちは、二つの勢力がバチバチしているのとあわわあわわと見ている。
「おいエディ、仲良くしなきゃダメじゃないか」
「あ、ユタカ兄ちゃんっ。な、仲良くったって、こいつらが僕らのオモチャを勝手に使うんだよ!」
「勝手にじゃないだろ。オモチャは子供たちみんなのものだぞ」
「そうだそうだっ」
「ユ、ユタカ兄ちゃん!? なんでよそ者の味方なんてするんだよっ」
よそ者ってお前……。
「ほら見ろ。オモチャは平等で使っていいんだぞ。よこせ!」
「あっ」
おぉ、あっちはあっちでガキ大将みたいな子がいるなぁ。
体格もいいし、なんか太々しい。
かして――とか、一緒に遊ぼ――とかじゃなくよこせだから、エディたちもムッとするんだろうな。
「はぁ……」
「あ、トロン、お疲れさん。なんか子供たちの仲がよくないな。やっぱりあの子かい?」
十六歳を迎えたトロンは、大人たちと一緒に畑仕事をしている。
同時に小さな子たちの面倒も見てくれる、頼もしいお兄ちゃんだ。
ってか俺と二つしか違わないんだよな。まぁ今だと一つだし。
「あの大きい子さ、ダンダっていうんだけど、エディと同じ歳なんだ」
「うぇ……大きいな」
身長だけで言えば、トロンとそう変わらない。横幅にいたっては倍はある。
よく砂漠で太れたなぁ。
「でね、初対面でダンダはエディのことを『チビ』って言ったんだ」
「ぶふぉっ。そ、それは……」
エディが十二歳のわりに小さいのかそうじゃないのか、正直分からない。
自分が十二歳の時のことなんて覚えてないし。
でもチビって言われれば、誰だってカチーンっとくるだろうし。
しかも相手が新参者なら――
そうか。新しく人が増えるってことは、こういう問題も起こるのか。
子供同士だから喧嘩で済むけど、大人なら……。
まして素性のわからない連中ならなおのこと。
労働者の受け入れは無理そうだなぁ。
夕食のあと、受け取った手紙についてマリウスから話を聞いた。
「そっか。じゃ今後、採掘した岩塩はそっちに売ることになるな。えぇっと、どうやるの?」
「あ、はい。従兄が砂漠の町に駐在するそうです」
「え!? 岩塩のために引っ越すっての?」
「ユタカさま、塩っていうのはそれだけ価値あるものなんですよ」
そうなのか……。
「あとついでと言ってななんですが、ニードルサボテンの美容エキスやシャンプー、リンスの貿易なんかもいかがかと思いまして」
「あぁ、あれって内陸の貴族に人気があるんだっけか」
「はいっ。他にも砂漠特有の名産があれば、それらも取引できればいいなぁって僕自身は考えているのですが。同時に、内陸のものを仕入れるというのもアリだと思います」
内陸産か。
俺の種コレクションにない、涼しい地方で育つ作物の種が手に入るだろう。
でも種は一つあれば、あとは俺のスキルでいくらでも増やせるんだよなぁ。
お金だって今は全然必要ないし。
だからって取引したくないわけじゃない。
他になにか……。
「こっちが提供できるものがあっても、提供してほしいものがなぁ」
「ここにはない作物の種だって、いくらでもありますよ! 特に涼しい地方のものなんかは、砂漠だと貴重なものですし」
「確かにそうか。砂漠で全野菜、全果物制覇も可能なのか」
「そうです!」
野菜や果物の種類は、十分にある。
ただ細かいことを言うなら、レタスはあるけどサニーレタスはない。
肉を撒いて食べると美味い、サンチュもない。カイワレ大根やセロリ、キノコ類はシイタケ以外全部ない。
なくても困らないんだけど、あるといいな~ってやつはほとんどないんだよな。
果物にも同じことが言える。
ブドウは巨砲しかなくって、シャインマスカットやデラ……なんとかって小粒のやつとかないし。
ビワとかイチジク、まぁなくていいんだけど、ドリアンとかないんだよな。
ぜーんぶが砂漠で揃うとなったら、それって凄くない?
「ちょっと待って二人ともっ」
「「え?」」
夢が広がリングしているのに、シェリルにストップを掛けられた。
「なんでもかんでもこっちで栽培してたら、人手が全然足りないわよっ。今だってみんな頑張って働いてやっとなのにっ」
「あ……」
「そ、そうでした……。北の集落から来られた方々を入れても、畑の拡張作業で手一杯でしたしね」
そうだった。人手不足の解消に来たの集落の人たちに来て貰ったのに、ここでまた栽培する作物の種類を増やせば畑も増やさなきゃならなくなる。
実際、北からの移住者で畑に出れるのは十人ぐらいだ。小さな子たちを働かせるわけにはいかない。
いっそ労働者を雇えればなぁ。
……それ、いいんじゃないか?
内陸の方から出稼ぎに来てもらうとかさ。
明日、みんなに相談してみよう。
「それ僕んのだぞっ」
「いいじゃんか、くれたって!」
「ダメ! それも、あれもぜーんぶ僕たちの!」
朝から子供たちが喧嘩をしている。
まぁ子供が増えれば、こうなるのも仕方ないか。
「オモチャを取り合って喧嘩してるみたい。昨日、私たちが帰って来て直ぐの時も喧嘩してる子たちを見たわ」
「オモチャの数を増やすかなぁ」
「たぶんそれじゃ解決しないわよ」
「え、そうなの?」
子供たちの喧嘩を見ていると、確かにオモチャの取り合いみたいだった。
でもよく見ていると、ひとつのオモチャを巡って喧嘩しているんじゃない。
全部のオモチャをどっちが使うかで喧嘩しているんだ。
『どっち』というのは、元々この集落にいた子――ここにはバジリスクに襲われた集落からの子たちも含まれていて、それと北の集落から来たばかりの子たち。
そしてドリュー族の子たちは、二つの勢力がバチバチしているのとあわわあわわと見ている。
「おいエディ、仲良くしなきゃダメじゃないか」
「あ、ユタカ兄ちゃんっ。な、仲良くったって、こいつらが僕らのオモチャを勝手に使うんだよ!」
「勝手にじゃないだろ。オモチャは子供たちみんなのものだぞ」
「そうだそうだっ」
「ユ、ユタカ兄ちゃん!? なんでよそ者の味方なんてするんだよっ」
よそ者ってお前……。
「ほら見ろ。オモチャは平等で使っていいんだぞ。よこせ!」
「あっ」
おぉ、あっちはあっちでガキ大将みたいな子がいるなぁ。
体格もいいし、なんか太々しい。
かして――とか、一緒に遊ぼ――とかじゃなくよこせだから、エディたちもムッとするんだろうな。
「はぁ……」
「あ、トロン、お疲れさん。なんか子供たちの仲がよくないな。やっぱりあの子かい?」
十六歳を迎えたトロンは、大人たちと一緒に畑仕事をしている。
同時に小さな子たちの面倒も見てくれる、頼もしいお兄ちゃんだ。
ってか俺と二つしか違わないんだよな。まぁ今だと一つだし。
「あの大きい子さ、ダンダっていうんだけど、エディと同じ歳なんだ」
「うぇ……大きいな」
身長だけで言えば、トロンとそう変わらない。横幅にいたっては倍はある。
よく砂漠で太れたなぁ。
「でね、初対面でダンダはエディのことを『チビ』って言ったんだ」
「ぶふぉっ。そ、それは……」
エディが十二歳のわりに小さいのかそうじゃないのか、正直分からない。
自分が十二歳の時のことなんて覚えてないし。
でもチビって言われれば、誰だってカチーンっとくるだろうし。
しかも相手が新参者なら――
そうか。新しく人が増えるってことは、こういう問題も起こるのか。
子供同士だから喧嘩で済むけど、大人なら……。
まして素性のわからない連中ならなおのこと。
労働者の受け入れは無理そうだなぁ。