「え、じゃあ今までモンスターの卵を食べたこともなかったのか」
「はい。そもそも卵を見つけるのが大変ですので」
「巣を守ってる奴らは、凄く敏感だから近づけないのよ」
「普段の狩りより危険度が増しますから、巣を見つけたらむしろ遠ざかるぐらいです」
だからここの人たちは、卵料理を知らないんだな。
鶏から貰った四つの卵をインベントリに入れて下の層に持ち帰ってから、どう分配するかみんなで話し合った。
だがここの人たちは卵料理を知らない。
仕方ないので俺が作って見せることになった。
なったのはいいけど――
「こっちが目玉焼き。それでこれがスクランブルエッグだ」
「おぉ。いい香りだ」
「柔らかくて、子供たちも食べやすそうね」
「これなら誰でも簡単に作れそうモグな」
ふっ。俺が作れる卵料理なんて、こんなもんさ。
卵焼きとかオムレツは無理。
作り方を知っていることと、作れることとはまた別物だからな!
「大きな鉄板を買っておいてよかった。普通のフライパンじゃ、こいつの目玉焼きは無理だったからなぁ」
「溢れちゃいますね」
みんなで食事をすることもある。その時用にって、BBQで使うような大きな鉄板を三枚ほど町で購入していた。普通のフライパンじゃ、ルーシェが言うように白身が溢れ出ていただろうな。
目玉焼きはピザのようにカットし、黄身の部分はソースのように垂らす。これで十二人前になった。
スクランブルエッグは十人前ぐらい。
「卵は大きいけど、こうして料理してみると全員には行き届かないな」
「交代で食べればいいじゃないですか」
「もしくは、みんなが一度に食べられる個数になってからってのはどう?」
「そうだな。今だいたい、六十人ぐらいだよな。卵一個で約十人前としたら、六個あればいいわけだ。三日のうち二日は卵料理が食べられる」
「これまでゼロだったんです。二日も食べられるなんて、凄いですよ!」
確かに凄いことだ。
でももっといい方法を思いついた。
足りないのなら、育てればいい。
「有精卵って、どの時期に産むとか決まっているのか?」
『コッコココ』
「発情期だと」
そりゃそうだ。
「そ、その発情期って……いつ……かな」
「なぁに照れてんだ。まぁ人間と違って、動物系のモンスターってのは四六時中発情してるわけじゃねえ。時期ってのがあるがな」
四六時中発情なんかしてないよ!
『コココココ。コッケー』
「発情期は春だと」
「春……。ごめん。ここだといつが春なのかわからない」
「まぁそうだな。ずっと夏みてぇな暑さだもんな。あぁっと、んーっと……そうだ。今は五月だ」
五月!?
俺がこの世界に召喚されてから、どのくらい経ったっけ?
二、三カ月?
いや、もっとか。
あれ?
五月ってことは……。
「もしかして有精卵はもう産み終わった!?」
悲鳴にも似た声をあげると、雌鶏二羽は首を左右に振る。
え、まだ産んでない?
『コッコココ』
「雄がいねぇと産めねぇからな」
「雄ならいるじゃん」
と二羽の雄鶏に視線を向けると、なぜかもじもじしだす。
「あいつら、まぁだ雌を落としてねぇのか」
『ココココココ』
「お前らも大変だなぁ」
「お、おじさん、何の話?」
「あぁ。あいつらが奥手すぎて、全然口説いてきやしねぇんだと」
……草食系男子!!
男子二羽を呼び、そこで告白大作戦会議を行った。
女性の意見も聞こうと、ルーシェとシェリルにも来てもらっている。
「素直な気持ちを伝えるだけでいいと思いますが」
「そうね。好きって言って貰えるだけで、幸せになれるもの」
「はい。とても幸せです」
と二人は、頬を染めてうっとりした表情を浮かべる。
……はっ!?
俺か! 俺が言ったんだ!
「なんでぇ、いちゃつきやがって。作戦会議だろうが」
「そ、そうでした。すみません」
「ごめんなさいっ。で、でも告白がなかなかできないから困ってるのよね。うーんと、うぅんっと」
「そ、そうです! プレゼントというのはどうですか?」
「あ、いいわね。アクセサリー……はしないだろうし、じゃ、お花とかどう?」
そのプレゼント作戦も俺ですね!
でも悪くないと思う。
言葉で伝えられなくても、プレゼントを贈ることで好意はあるって分かってくれるだろうし。
花を贈るという提案に、二羽は首を傾げた。
『コココ』
「花はあんまり美味くねぇんだと」
「食べるためじゃなーいっ」
『ココッコ』
「食べないならどうするんだと」
……どうしよう?
じゃあ鶏が貰って嬉しいものは何か聞いてみると、
『コッケ』
「美味い飯、だとさ」
花より団子か。
トウモロコシは昨日のうちに成長させて収穫までしてあるけど、乾燥がまだなんだよなぁ。
他に鶏が食べそうなものって……豆っぽいやつだよな。
大豆とか麦とか。
大豆はある。麦もある。ただ麦の方は……。
いくら鶏《あいつら》が大きいとはいえ、この麦を食えるか?
俺の掌サイズの麦を。
「はい。そもそも卵を見つけるのが大変ですので」
「巣を守ってる奴らは、凄く敏感だから近づけないのよ」
「普段の狩りより危険度が増しますから、巣を見つけたらむしろ遠ざかるぐらいです」
だからここの人たちは、卵料理を知らないんだな。
鶏から貰った四つの卵をインベントリに入れて下の層に持ち帰ってから、どう分配するかみんなで話し合った。
だがここの人たちは卵料理を知らない。
仕方ないので俺が作って見せることになった。
なったのはいいけど――
「こっちが目玉焼き。それでこれがスクランブルエッグだ」
「おぉ。いい香りだ」
「柔らかくて、子供たちも食べやすそうね」
「これなら誰でも簡単に作れそうモグな」
ふっ。俺が作れる卵料理なんて、こんなもんさ。
卵焼きとかオムレツは無理。
作り方を知っていることと、作れることとはまた別物だからな!
「大きな鉄板を買っておいてよかった。普通のフライパンじゃ、こいつの目玉焼きは無理だったからなぁ」
「溢れちゃいますね」
みんなで食事をすることもある。その時用にって、BBQで使うような大きな鉄板を三枚ほど町で購入していた。普通のフライパンじゃ、ルーシェが言うように白身が溢れ出ていただろうな。
目玉焼きはピザのようにカットし、黄身の部分はソースのように垂らす。これで十二人前になった。
スクランブルエッグは十人前ぐらい。
「卵は大きいけど、こうして料理してみると全員には行き届かないな」
「交代で食べればいいじゃないですか」
「もしくは、みんなが一度に食べられる個数になってからってのはどう?」
「そうだな。今だいたい、六十人ぐらいだよな。卵一個で約十人前としたら、六個あればいいわけだ。三日のうち二日は卵料理が食べられる」
「これまでゼロだったんです。二日も食べられるなんて、凄いですよ!」
確かに凄いことだ。
でももっといい方法を思いついた。
足りないのなら、育てればいい。
「有精卵って、どの時期に産むとか決まっているのか?」
『コッコココ』
「発情期だと」
そりゃそうだ。
「そ、その発情期って……いつ……かな」
「なぁに照れてんだ。まぁ人間と違って、動物系のモンスターってのは四六時中発情してるわけじゃねえ。時期ってのがあるがな」
四六時中発情なんかしてないよ!
『コココココ。コッケー』
「発情期は春だと」
「春……。ごめん。ここだといつが春なのかわからない」
「まぁそうだな。ずっと夏みてぇな暑さだもんな。あぁっと、んーっと……そうだ。今は五月だ」
五月!?
俺がこの世界に召喚されてから、どのくらい経ったっけ?
二、三カ月?
いや、もっとか。
あれ?
五月ってことは……。
「もしかして有精卵はもう産み終わった!?」
悲鳴にも似た声をあげると、雌鶏二羽は首を左右に振る。
え、まだ産んでない?
『コッコココ』
「雄がいねぇと産めねぇからな」
「雄ならいるじゃん」
と二羽の雄鶏に視線を向けると、なぜかもじもじしだす。
「あいつら、まぁだ雌を落としてねぇのか」
『ココココココ』
「お前らも大変だなぁ」
「お、おじさん、何の話?」
「あぁ。あいつらが奥手すぎて、全然口説いてきやしねぇんだと」
……草食系男子!!
男子二羽を呼び、そこで告白大作戦会議を行った。
女性の意見も聞こうと、ルーシェとシェリルにも来てもらっている。
「素直な気持ちを伝えるだけでいいと思いますが」
「そうね。好きって言って貰えるだけで、幸せになれるもの」
「はい。とても幸せです」
と二人は、頬を染めてうっとりした表情を浮かべる。
……はっ!?
俺か! 俺が言ったんだ!
「なんでぇ、いちゃつきやがって。作戦会議だろうが」
「そ、そうでした。すみません」
「ごめんなさいっ。で、でも告白がなかなかできないから困ってるのよね。うーんと、うぅんっと」
「そ、そうです! プレゼントというのはどうですか?」
「あ、いいわね。アクセサリー……はしないだろうし、じゃ、お花とかどう?」
そのプレゼント作戦も俺ですね!
でも悪くないと思う。
言葉で伝えられなくても、プレゼントを贈ることで好意はあるって分かってくれるだろうし。
花を贈るという提案に、二羽は首を傾げた。
『コココ』
「花はあんまり美味くねぇんだと」
「食べるためじゃなーいっ」
『ココッコ』
「食べないならどうするんだと」
……どうしよう?
じゃあ鶏が貰って嬉しいものは何か聞いてみると、
『コッケ』
「美味い飯、だとさ」
花より団子か。
トウモロコシは昨日のうちに成長させて収穫までしてあるけど、乾燥がまだなんだよなぁ。
他に鶏が食べそうなものって……豆っぽいやつだよな。
大豆とか麦とか。
大豆はある。麦もある。ただ麦の方は……。
いくら鶏《あいつら》が大きいとはいえ、この麦を食えるか?
俺の掌サイズの麦を。