クラブ活動を終えて教室に戻ってきたはずなのに、何故か洞窟にいた。
足元は石畳だから、人工的な洞窟か。
俺以外にもクラスの奴がいるな。一、二、三……俺を入れて十三人。
「おい大地。君もこっちでスキル鑑定して貰いなよ」
「スキル次第では俺たちのグループに入れてやってもいいぜ」
荒木と伊勢崎がそう言って手招きをする。
いや待て。
あいつら今、スキル鑑定って言った?
スキルって、ゲーム的なアレ?
「どうぞ、こちらへ。怯えなくても大丈夫ですわ」
と、荒木たちの横に見慣れない女子が笑みを浮かべて立っていた。
見事な金髪に目を奪われるけれど、それ以上に着ている服が普通じゃない。
令嬢物のラノベに出て来そうな、そんな服だ。
他にも灰色のローブを着た連中がいるが、フードで顔は見えない。
怪しさ満点だな。
「おい大地っ」
「……分かったよ。で、なにをしろって?」
「これに触りたまえ。それだけでいい」
荒木はそう言って、隣の台座に置かれた珠を指さした。
怪しすぎるだろ、これ。
だけど逆らえばこの二人に何をされるか分かったもんじゃない。
普段は善良な生徒のフリをしているけれど、実際は真逆な奴らだからな。
はぁっとため息を吐いて珠に触れる。
すると珠が光り、そこに文字が浮かんだ。
見慣れない文字。
なのになぜか読める。
「成長……促進?」
「全ての生命のあらゆるものの成長を操ることが出来る。たとえば野菜を一瞬にして成長させ、収穫が……でき……ぷはっ」
「大地ぃ~、さすが園芸クラブだなぁ」
「大地豊だものな、君は。いや、いいスキルではないか。農業系チートスキルだろ」
「農業チート! おい皇帝《しいざあ》、上手いこと言うなって」
農業系……チート……。
大地 豊。
別にうちは農家でもないし、実家がそうというわけでもない。
だけどこの名前は、ちょいちょい弄られる要因になっている。
クラブだって、この名前のせいで無理やりあいつらから園芸クラブに入れられたし。
まぁ野菜や果物を貰えるから、悪いことばかりじゃなかったけど。
「っち。最悪だわ」
令嬢コスプレをしている女子の態度が一変した。
蔑むような視線を向け、なじるように言う。
「十三人も召喚したというのに、まともな戦闘系スキルを持っていたのはたったの七人。それでも残り五人は補助系スキルだったからよかったものを……この男は使えないわ」
つ、使えない?
「我が国の農業生産量は多く、農業チートなんて必要ないのよ! お前たち、この男を捨ててちょうだいっ」
「え、捨てる? ちょっと待ってくれ。何がどうなっているのかも分からないんだ。まず状況説明をっ」
「大地、君はいらないってことだ。それだけ分かっていればいいんじゃないかなぁ?」
「お前は必要ない。それだけさ。あぁ、お前の荷物、これも持っていけよ。少しは何かの足しになるだろう?」
両脇から男たちに羽交い絞めにされた俺の首に、伊勢崎が鞄をぶら下げる。
少し離れた場所へ引きずられ、足元には魔法陣があった。
「ま、待ってくれっ。捨てるぐらいなら、学校に帰してくれよっ」
「それは出来ませんわ。逆召喚魔法はありませんもの。あ、そうね。どうせなら砂漠に捨ててちょうだい。まぁそんなはずはないでしょうけど、スキルを役立てて緑の大地になるかもしれませんわ。おーっほっほっほっほ」
砂漠って――
「ふざけるな!」
叫んだ時には、既にそこは砂漠だった。
夢でも見ているんだろうか。
いや、そうであって欲しい。
学校――どっかの洞窟――そして砂漠。
一〇分足らずのうちに、なんで俺はこんな所に来たんだ。
召喚とか言ってたな。
まさか異世界人が魔法で俺を――俺たちを自分の世界に召喚したってことか。
とにかく今は町を探そう。
いつまでも砂漠になんていたら、本気で死ぬかもしれない。
・
・
・
なのに、ぜんっぜん……
「町はおろか、人影もない、じゃ、ないか……はぁ、はぁ」
まずい。もう何時間彷徨ってるんだ?
鞄の中に入ってたペットボトルのジュースは飲み切った。
あれがなかったらとっくに脱水症状でぶっ倒れてただろうな。
けど……それももう……関係ない。
今、ここで、倒れるん、だから……。
『スキルの使用方法をお伝えします』
あ、はい。
『成長させたい対象に触れ、「成長促進」と唱えます。それだけです』
『その際、どのくらい成長させたいのか考えてください』
あ、はい。
『植物の場合、一度芽吹かせて土に植えてから再び成長させるとよいでしょう』
はい。
『あなたのスキルに役立つ物をインベントリに入れております』
『ご活用ください』
『インベントリは「インベントリ・オープン」と唱えることで開きます』
『初期の容量は五〇種類までとなっておりますので、ご注意ください』
『それでは、異世界での暮らしをどうぞお楽しみください』
あ、どうも。
「って……な、に。ゆ、め?」
変な声が聞こえた気がした。
声だけだ。
その声が……
「イン、ベントリ、オープ、ン」
って言ってたっけ――えぇ!?
ほ、本当に出た。
霞む目に映ったのは、ゲームのインベントリ画面そのもの。
横五マス、縦は一〇マス。合計五〇だ。
役立つ物を入れてるって言ってたけど、これは……種?
なんだこの種。
野菜の木……調味料の木……ツリーハウス!?
そ、それに。
「み、みず、の木……」
思わず伸ばした手はインベントリ画面に触れ、そして吸い込まれるように入った。
何かに触れ、掴んで引き抜く。
種。インベントリ画面に映っている種とそっくりだ。
成長――たしか
「"成長……促進"」
途端、種が……芽吹いた!?
足元は石畳だから、人工的な洞窟か。
俺以外にもクラスの奴がいるな。一、二、三……俺を入れて十三人。
「おい大地。君もこっちでスキル鑑定して貰いなよ」
「スキル次第では俺たちのグループに入れてやってもいいぜ」
荒木と伊勢崎がそう言って手招きをする。
いや待て。
あいつら今、スキル鑑定って言った?
スキルって、ゲーム的なアレ?
「どうぞ、こちらへ。怯えなくても大丈夫ですわ」
と、荒木たちの横に見慣れない女子が笑みを浮かべて立っていた。
見事な金髪に目を奪われるけれど、それ以上に着ている服が普通じゃない。
令嬢物のラノベに出て来そうな、そんな服だ。
他にも灰色のローブを着た連中がいるが、フードで顔は見えない。
怪しさ満点だな。
「おい大地っ」
「……分かったよ。で、なにをしろって?」
「これに触りたまえ。それだけでいい」
荒木はそう言って、隣の台座に置かれた珠を指さした。
怪しすぎるだろ、これ。
だけど逆らえばこの二人に何をされるか分かったもんじゃない。
普段は善良な生徒のフリをしているけれど、実際は真逆な奴らだからな。
はぁっとため息を吐いて珠に触れる。
すると珠が光り、そこに文字が浮かんだ。
見慣れない文字。
なのになぜか読める。
「成長……促進?」
「全ての生命のあらゆるものの成長を操ることが出来る。たとえば野菜を一瞬にして成長させ、収穫が……でき……ぷはっ」
「大地ぃ~、さすが園芸クラブだなぁ」
「大地豊だものな、君は。いや、いいスキルではないか。農業系チートスキルだろ」
「農業チート! おい皇帝《しいざあ》、上手いこと言うなって」
農業系……チート……。
大地 豊。
別にうちは農家でもないし、実家がそうというわけでもない。
だけどこの名前は、ちょいちょい弄られる要因になっている。
クラブだって、この名前のせいで無理やりあいつらから園芸クラブに入れられたし。
まぁ野菜や果物を貰えるから、悪いことばかりじゃなかったけど。
「っち。最悪だわ」
令嬢コスプレをしている女子の態度が一変した。
蔑むような視線を向け、なじるように言う。
「十三人も召喚したというのに、まともな戦闘系スキルを持っていたのはたったの七人。それでも残り五人は補助系スキルだったからよかったものを……この男は使えないわ」
つ、使えない?
「我が国の農業生産量は多く、農業チートなんて必要ないのよ! お前たち、この男を捨ててちょうだいっ」
「え、捨てる? ちょっと待ってくれ。何がどうなっているのかも分からないんだ。まず状況説明をっ」
「大地、君はいらないってことだ。それだけ分かっていればいいんじゃないかなぁ?」
「お前は必要ない。それだけさ。あぁ、お前の荷物、これも持っていけよ。少しは何かの足しになるだろう?」
両脇から男たちに羽交い絞めにされた俺の首に、伊勢崎が鞄をぶら下げる。
少し離れた場所へ引きずられ、足元には魔法陣があった。
「ま、待ってくれっ。捨てるぐらいなら、学校に帰してくれよっ」
「それは出来ませんわ。逆召喚魔法はありませんもの。あ、そうね。どうせなら砂漠に捨ててちょうだい。まぁそんなはずはないでしょうけど、スキルを役立てて緑の大地になるかもしれませんわ。おーっほっほっほっほ」
砂漠って――
「ふざけるな!」
叫んだ時には、既にそこは砂漠だった。
夢でも見ているんだろうか。
いや、そうであって欲しい。
学校――どっかの洞窟――そして砂漠。
一〇分足らずのうちに、なんで俺はこんな所に来たんだ。
召喚とか言ってたな。
まさか異世界人が魔法で俺を――俺たちを自分の世界に召喚したってことか。
とにかく今は町を探そう。
いつまでも砂漠になんていたら、本気で死ぬかもしれない。
・
・
・
なのに、ぜんっぜん……
「町はおろか、人影もない、じゃ、ないか……はぁ、はぁ」
まずい。もう何時間彷徨ってるんだ?
鞄の中に入ってたペットボトルのジュースは飲み切った。
あれがなかったらとっくに脱水症状でぶっ倒れてただろうな。
けど……それももう……関係ない。
今、ここで、倒れるん、だから……。
『スキルの使用方法をお伝えします』
あ、はい。
『成長させたい対象に触れ、「成長促進」と唱えます。それだけです』
『その際、どのくらい成長させたいのか考えてください』
あ、はい。
『植物の場合、一度芽吹かせて土に植えてから再び成長させるとよいでしょう』
はい。
『あなたのスキルに役立つ物をインベントリに入れております』
『ご活用ください』
『インベントリは「インベントリ・オープン」と唱えることで開きます』
『初期の容量は五〇種類までとなっておりますので、ご注意ください』
『それでは、異世界での暮らしをどうぞお楽しみください』
あ、どうも。
「って……な、に。ゆ、め?」
変な声が聞こえた気がした。
声だけだ。
その声が……
「イン、ベントリ、オープ、ン」
って言ってたっけ――えぇ!?
ほ、本当に出た。
霞む目に映ったのは、ゲームのインベントリ画面そのもの。
横五マス、縦は一〇マス。合計五〇だ。
役立つ物を入れてるって言ってたけど、これは……種?
なんだこの種。
野菜の木……調味料の木……ツリーハウス!?
そ、それに。
「み、みず、の木……」
思わず伸ばした手はインベントリ画面に触れ、そして吸い込まれるように入った。
何かに触れ、掴んで引き抜く。
種。インベントリ画面に映っている種とそっくりだ。
成長――たしか
「"成長……促進"」
途端、種が……芽吹いた!?