銀騎皓矢のラボでは日中夜関係なくパソコンを叩く音と機械音が聞こえ続けている。
画面と睨めっこを続ける皓矢の傍で、青い鳥がうだうだと転がっていた。
「あー……ひまだわー」
チラッ。
「……」
皓矢の返答はない。
「あーあ、ひまですわー」
チラチラッ。
「……」
まだ皓矢の返答がない。
「ちょっとこーや!」
「わあ!」
辛抱たまらずルリカは皓矢の顔の横でバッサバッサ羽ばたいた。
「あたちがひまだって言ってるでしょーが!」
「どうしたんだい、ルリカ。ご機嫌ナナメだね」
呑気な主人の言葉はルリカの苛立ちを煽った。
「ご機嫌はナナメどころか直角なんだよ!刺すよ!刺さるよ!」
怒ったルリカは嘴で皓矢を攻撃する。得意の嘴ビームである。ビームと言っても何か波動が出る訳ではなく、ただつっつくだけだ。ビームの様に鋭くがモットーだ。
「い、痛い痛い!勘弁してくれよ」
「こーや、最近また研究ばっかりであたちを使ってくれないじゃん!」
「ああ、そうだねえ。一応彼らとは和解しちゃったからねえ」
のほほんとしている皓矢に、ルリカはペッと唾を吐く真似をした。
「仲良しごっことかまぢキモいわ!あいつらは鵺なんだよ!?」
「まあ……悪かったのはこちらだからねえ」
「あたちはそんなの関係ないもん!」
「そんなこと言わずに……」
宥めようとする皓矢の言葉はルリカの耳には入らない。思い出すのはあの日、鵺と対峙した時の高揚感。
「ああ、また鵺と戦いたい!この前のあたちを見たでしょ?かっこいくこーやを助けるとこ!」
「うん、そうだね。かっこよかったよ……」
また視線をパソコン画面に移した皓矢に、ルリカは今度こそぶち切れた。
「ながらで返事してんじゃないよ!刺すよ!」
「痛い!ごめんなさい!」
嘴ビームからちょっと波動が出た。
「こーやがそんなんだからさあ、見てよあたちの体。こんなに太っちゃってさ」
ルリカはずんぐりむっくりの体でぐるぐる回って嘆く。
「丸くて可愛いよ」
「そうじゃないでしょ!あたちはあの鵺と戦った時のスマートなあたちでいたいのっ!」
「うーん、困ったな。僕は急いでやらないといけないことが山積みで……」
「こーやは陰陽師と研究のどっちが大事なの!」
鳥がこんなに面倒くさいのは前代未聞だろう。だが皓矢にとってはいつものこと。ヘラヘラ笑って最悪な答えを言う。
「いやあ、それは両方だよ」
「ああん!?フタマタ男はちね!」
ルリカのキンキン声に目を細めながら、皓矢はなんとかわかってもらおうと状況説明した。
「極論だなあ。とにかくね、今はこの鏃を分析しないといけないんだ。その後萱獅子刀のレプリカをアレして──」
「やじりなんてどこにあんのよ?」
皓矢が「この」と指差した先には何もなかった。
「え?おかしいな、この辺りに置いておいたんだけど……」
とっ散らかった机の上をかき分けて見ても、鏃などは出てこなかった。
「おかしいな……」
皓矢が首を捻っていると、ルリカは急にニヤっと笑った。
「もしかして盗まれたんじゃない?」
「まさかあ。この部屋には僕と君しか入っていないんだよ」
冗談だと取り合わない皓矢に、ルリカはまた繰り返した。
「でもないってことは盗まれたんじゃない?」
「いやあ、ちゃんと探せば出てくると──」
皓矢の見解は関係ない。ルリカは鳥のくせに口角を上げてにんまり笑った。
「あたちの出番じゃない!?」
「え?」
「こーや、あたちの本来の役目忘れてるでしょ!鵺の妖気探索特化型式神なんだよ!」
そう。ルリカは銀騎家伝来の高性能式神・瑠璃烏。その役目は鵺の妖気を探すことだ。件の鏃には鵺の妖気がたっぷりとついている。
「ああ、そうか」
「ほんとに忘れてるんじゃないよ!刺すよ!」
「痛いって……」
困っている皓矢をほっといて、ルリカは鳩でもないのに鳩胸を張った。
「むっふっふー。あたちの本領を発揮する時がきたね!」
「名探偵ルリカの出番なんだよ!」
画面と睨めっこを続ける皓矢の傍で、青い鳥がうだうだと転がっていた。
「あー……ひまだわー」
チラッ。
「……」
皓矢の返答はない。
「あーあ、ひまですわー」
チラチラッ。
「……」
まだ皓矢の返答がない。
「ちょっとこーや!」
「わあ!」
辛抱たまらずルリカは皓矢の顔の横でバッサバッサ羽ばたいた。
「あたちがひまだって言ってるでしょーが!」
「どうしたんだい、ルリカ。ご機嫌ナナメだね」
呑気な主人の言葉はルリカの苛立ちを煽った。
「ご機嫌はナナメどころか直角なんだよ!刺すよ!刺さるよ!」
怒ったルリカは嘴で皓矢を攻撃する。得意の嘴ビームである。ビームと言っても何か波動が出る訳ではなく、ただつっつくだけだ。ビームの様に鋭くがモットーだ。
「い、痛い痛い!勘弁してくれよ」
「こーや、最近また研究ばっかりであたちを使ってくれないじゃん!」
「ああ、そうだねえ。一応彼らとは和解しちゃったからねえ」
のほほんとしている皓矢に、ルリカはペッと唾を吐く真似をした。
「仲良しごっことかまぢキモいわ!あいつらは鵺なんだよ!?」
「まあ……悪かったのはこちらだからねえ」
「あたちはそんなの関係ないもん!」
「そんなこと言わずに……」
宥めようとする皓矢の言葉はルリカの耳には入らない。思い出すのはあの日、鵺と対峙した時の高揚感。
「ああ、また鵺と戦いたい!この前のあたちを見たでしょ?かっこいくこーやを助けるとこ!」
「うん、そうだね。かっこよかったよ……」
また視線をパソコン画面に移した皓矢に、ルリカは今度こそぶち切れた。
「ながらで返事してんじゃないよ!刺すよ!」
「痛い!ごめんなさい!」
嘴ビームからちょっと波動が出た。
「こーやがそんなんだからさあ、見てよあたちの体。こんなに太っちゃってさ」
ルリカはずんぐりむっくりの体でぐるぐる回って嘆く。
「丸くて可愛いよ」
「そうじゃないでしょ!あたちはあの鵺と戦った時のスマートなあたちでいたいのっ!」
「うーん、困ったな。僕は急いでやらないといけないことが山積みで……」
「こーやは陰陽師と研究のどっちが大事なの!」
鳥がこんなに面倒くさいのは前代未聞だろう。だが皓矢にとってはいつものこと。ヘラヘラ笑って最悪な答えを言う。
「いやあ、それは両方だよ」
「ああん!?フタマタ男はちね!」
ルリカのキンキン声に目を細めながら、皓矢はなんとかわかってもらおうと状況説明した。
「極論だなあ。とにかくね、今はこの鏃を分析しないといけないんだ。その後萱獅子刀のレプリカをアレして──」
「やじりなんてどこにあんのよ?」
皓矢が「この」と指差した先には何もなかった。
「え?おかしいな、この辺りに置いておいたんだけど……」
とっ散らかった机の上をかき分けて見ても、鏃などは出てこなかった。
「おかしいな……」
皓矢が首を捻っていると、ルリカは急にニヤっと笑った。
「もしかして盗まれたんじゃない?」
「まさかあ。この部屋には僕と君しか入っていないんだよ」
冗談だと取り合わない皓矢に、ルリカはまた繰り返した。
「でもないってことは盗まれたんじゃない?」
「いやあ、ちゃんと探せば出てくると──」
皓矢の見解は関係ない。ルリカは鳥のくせに口角を上げてにんまり笑った。
「あたちの出番じゃない!?」
「え?」
「こーや、あたちの本来の役目忘れてるでしょ!鵺の妖気探索特化型式神なんだよ!」
そう。ルリカは銀騎家伝来の高性能式神・瑠璃烏。その役目は鵺の妖気を探すことだ。件の鏃には鵺の妖気がたっぷりとついている。
「ああ、そうか」
「ほんとに忘れてるんじゃないよ!刺すよ!」
「痛いって……」
困っている皓矢をほっといて、ルリカは鳩でもないのに鳩胸を張った。
「むっふっふー。あたちの本領を発揮する時がきたね!」
「名探偵ルリカの出番なんだよ!」