「寂しい」と感じたことのない人などいるのだろうか。それでも、人は寂しさと上手く付き合っていくものらしい。
 

 私以外は。


【頻発性哀愁症候群】ーーー度々、「寂しい」という感情に襲われる病。「寂しさ」の度合いは人それぞれだが、酷いと日常生活にまで支障を起こす。十万人に一人ほどの割合で発症する稀な病である。先天性の場合もあれば、後天性の場合もある。明確な治療方法はまだ無い。


 私は、小さい頃から寂しがり屋だった。それでも、先天性で頻発性哀愁症候群だったわけではない。
 ある日、急に「寂しさ」を感じて眠れなくなったのだ。それから、常に「寂しさ」という感情が私に付き纏っている。私を壊すほどに。
 その日から高校一年生になった今も大きなぬいぐるみを買って、ぬいぐるみの手を握って眠るようになった。酷い日は、母に手を繋いで貰わなければ眠ることも出来なくなった。
 日中もバックにぬいぐるみを隠し、バッグの中に手を入れて、周りに隠れてぬいぐるみを握りしめた。お昼休みは、家族に電話することが殆どだった。
 
 そう、この病は「ただ寂しくて堪らない」のだ。

 人によっては、友達や家族に執着をしてストーカー化する人もいるらしい。そして、明確な治療方法がない今、その病を抱えた人たちはただただ「寂しさ」を自分なりに埋めるために何か方法を考え続けている。


 「自分」と「周りの人」を壊さないために。