「そう。なら、よかった。ごめんね。うちのポスト、そんなお知らせ入ってなかったんだけどな」
 みーちゃんはにっこりほほ笑んだ。
「そうなんだ。困っちゃうね、そういうの」
「うん。ほんとうにね。ほんとうに困っちゃうよね」
 ぐさり。ピンクの箸は、かき揚げをひと突きにした。
 カリカリに揚げられたちいさな海老が、ぱらりとテーブルに落ちる。あ、と思っていると、細長い人差し指はぐしゃりと海老を押しつぶした。
 右に、左に。左に、右に。みーちゃんの深爪になった赤い指先で捻りつぶされる海老の死骸。
「今日もね、シュークリーム買ってきたんだ。あとで食べよう。夏季限定のレアチーズ味だって。あーちゃんが気に入るといいな」
 みーちゃんはやっぱり笑顔のまま言って、ティッシュで人差し指を何度も拭った。脂で濡れたテーブルがぬらりとひかる。
「どうしたの、あーちゃん。もしかしてシュークリーム、飽きちゃった?」
「そんなことないよ。レアチーズ、おいしそうだね」
「うん。楽しみだね。食べきれなかったら、また半分こしよう」