みーちゃんはシュークリームがぱんぱんに詰まった箱をひらいた。甘い匂いがぱあっと広がる。
 好きなものはたくさん、嫌いなものは無理して食べないでいいよ。みーちゃんにそう言われ、お皿に三つシュークリームをのせた。指先に白い粉がつく。舐めるとほんのりと淡く、甘かった。
「みーちゃんはひとつだけ?」
「ひとつでじゅうぶんだよ。食べられるなら、残りもあーちゃんが食べて」
「でも……あ、じゃあこの苺のやつ半分こしよう。半分なら食べられるよね?」
 やさしく頷くみーちゃん。その笑顔からはシュークリームの匂いがした。今夜はこわい音は聞こえない。猫たちもこの夜を穏やかに過ごせていればいいなと思いながら、シュークリームを頬張った。
「あーちゃん、クリームこぼれてる」
「えっ、どこどこ?」
「ほら、ここ。あーっ、落ちちゃう落ちちゃう!」
 みーちゃんはよく笑った。Tシャツにぽとんとこぼれ落ちたクリームは、うすい染みになっていくら洗っても落ちてくれなかった。